今「Webで学ぶフラメンコギター」では、フラメンコギターの右手のテクニックを中心に解説を進めています。
前回までにアルペジオ奏法、音階奏法(ピカード奏法)をやりましたが、今回は右手親指(p)を駆使した奏法の解説です。
フラメンコギターでは親指が大活躍
フラメンコギターでは、クラシックギターなどと比べてpの使用比率が高く、アルペジオ奏法や音階奏法をほとんど使わずに、親指奏法とラスゲアードのみで通すスタイルの人も珍しくありません。
親指奏法はゴルペ奏法との併用やアルサプアなど、特殊な動きをするものが多いので、フラメンコギターをマスターする上では大きなポイントとなります。
pの爪の削り方
pの爪は、手の甲側から見て左側を短く削りますが、親指スケールやアルサプアで弦が当たる角度に沿って削るのが基本です。
そうすると弦と親指の爪が当たる面積が大きくなって、しっかりした音が出せます。
爪の作り方解説記事
親指奏法の基本フォーム
親指奏法のフォームは、アルペジオやピカードの形から少しだけ手首を前に押し出して、弦に対してpを立てるような形で、力を抜いて手首のスナップと親指の第3関節(手首の中にある親指の根元関節)を使って素早く親指を上下動させて弾いていきます。
例え遅いテンポでも、ある程度の速さで親指を振るのがリズム感良く演奏するコツです。
フォームを安定させるために、1弦の上にimaを置いて支えをとりますが、高音弦を弾くときやストロークで和音を弾くときはimaは1弦から放れて宙に浮いた状態になります。
親指奏法の基本フォーム
アルサプアやストローク時のフォーム
アルサプア奏法や複数弦を一気に弾く親指ストローク奏法など、ストロークのスピードと音の強さが必要な場面では、上の基本フォームからさらに右手首を前に出してpの角度をきつくして、弦と垂直に近い角度で当たるようなフォームで弾きます。
この形で脱力して弾きますが、pがブレないように、少し親指の根元付近に力を入れておくイメージです。
アルサプアや親指ストロークのフォーム
pによる単音奏法
クラシックギターなどではpはベースライン担当で、高音弦をpで弾くことはほとんどありませんが、フラメンコギターではpでメロディーを弾くことも多く、普通に全音域をpで弾きます。
pの単音奏法は、原則的にアポヤンドのダウンストローク(ピック奏法でいうとダウンピッキング)でスケール(音階)やアルペジオ(分散和音)を弾きますが、親指のアップストローク(アルライレ)も使うこともあります。
これはピック奏法でいうところのオルタネイトピッキングの要領で、上下ストロークで交互に弾くと親指だけで細かい音符が出せます。
複数弦ストローク奏法
フラメンコギターではpのストロークで弦を何本かまとめて一気に弾く奏法を多用しますが、ダウンストロークとアップストロークの両方が使われます。
pの複数弦ストローク奏法は、①コードプレイ・リズムプレイの一環としてラスゲアード系のテクニックに絡めたり、②コード感を出すためにフレーズの頭に和音を入れたり、③pの単音スケールの途中で入ったり、④アルペジオやピカードに絡めたりと、どこでも入ってきますよね。
imaを絡めた親指奏法
親指奏法にimaの音を修飾音的に絡める弾き方についても解説しておきましょう。
pとiの2指でやるpi奏法や、親指奏法の合間にmiやamiでアルペジオ・トレモロを絡める弾き方ですが、フレーズ的・技術的に第5回のアルペジオ奏法解説の時にやった「親指でメロディーを出すアルペジオ」と近いものです。
この講座ではimaの比率が高いものをアルペジオ系奏法、pの比率が高いものを親指奏法という分け方をしていますが、pの比率が高いフレーズは上で紹介したような親指奏法のフォームで弾くことになります。
親指奏法とゴルペ奏法のコンビネーション
親指奏法をする時は、ほぼ必ずと言って良いほどの頻度でゴルペ奏法と組み合わせて弾かれます。
ゴルペ奏法とは、右手の指先や爪でゴルペ板を打撃する奏法の総称です。
親指奏法にゴルペを絡めるときは、pの単音アポヤンドやストロークと同時に、右手薬指の爪や指の腹でボディー下側のゴルペ板を叩くのが基本です。
慣れないと難しい動きに感じますが、慣れれば体が勝手に動くようになります。
ベーシックなマルカールのパターンにもp+ゴルペの動きがかなり組み込まれているので、フラメンコギターを弾くために基本的かつ重要なテクニックです。
ゴルペ奏法の使い分け
ボディの下側を叩くゴルペ奏法には主に右手薬指(a)を使いますが、爪で叩く場合と、指の腹で叩く場合があり、それぞれ得られる音質や効果が異なります。
ゴルペと他の音を同時に出す時は、原則的にaの爪でゴルペします。爪を当てると、他の音と混じってもゴルペの打撃がはっきりと伝わります。
一方、ゴルペ単体で打つ時は、原則的にaの指の腹でゴルペします。
主に間をとったり休符を表現したりする感じでゴルペのみ出す場合、指の腹で低い音を出したほうがマッチする場合が多いためです。
この音は生音ではそんなに聴こえなかったりしますが、マイクで拾うとベースドラムやカホンの低音のような効果を発揮します。
アルサプア奏法
アルサプア奏法は、いわば親指系テクニックのラスボス的なもので、親指アポヤンド、親指ダウンストローク、親指アップストローク、ハンマリング、プリング、ゴルペ、セコのラスゲアードなどを組み合わせたフラメンコ独特の奏法です。
低音弦中心に親指でブリブリやるアレですね。
基本の動きは以下のようになります。
- pダウンストローク(和音)
- pアップストローク(和音)
- pアポヤンド(単音)
これはあくまで基本中の基本なので、3.の単音アポヤンドから始まる事も多いし、左手のハンマリング・プリングが絡んだりして、色んなバリエーションがあります。
また、アルサプアは必ずと言って良いほどゴルペと併用しますが、pのダウンストロークやpのアポヤンドと同時にaの爪でゴルペを打つパターンが大多数です。
アルサプアのコツ
アルサプアは瞬発力がいるテクニックなので脱力が重要で、脱力して右手首から先の自重を利用して弾くイメージです。
pのストロークは主に手首のスナップの動きで、pのアポヤンドは主に第3関節を使って弾きます。
親指の爪の一番長い部分がちゃんと弦に当たるようにして、力みすぎないように軽やかに弾いていくのがコツですが、最初はpストローク→pアポヤンドの切り替えが難しく感じるかもしれません。
また、左手のハンマリング・プリングも、しっかり音を出すことが重要になるので、左手も鍛える必要があります。
親指奏法まとめ
今回の記事で解説した通り、フラメンコギターの親指奏法はアルペジオやゴルペなどと組み合わせたりして複合的な動きになる事が多いです。
まずは一つ一つのアクションを分解して、それぞれの基本動作を十分に練習しましょう。
そして、全てのアクションを上で紹介した親指奏法のフォームから繰り出せるように訓練していくのが親指奏法上達の道です。
次回はフラメンコ奏法の象徴であるラスゲアード奏法を解説いたします!
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