『Webで学ぶフラメンコギター』も5回目になります。
前回から具体的な奏法の解説に入って、フラメンコ奏法マスターのためのガイドラインを示しましたが、今回からそのガイドラインの分類に沿って、まずは右手のテクニックを解説していきます。
今回の講座では『アルペジオ奏法』をやります。
アルペジオ奏法とは
アルペジオは分散和音のことで、コードを和音ではなく、1音ずつバラバラに出します。
ギターのアルペジオ奏法の基本は、コードフォームを押さえたまま、右手でパラパラと1本ずつ、異なる弦を弾いていくものです。
フォークやロックなどでは歌に伴奏を付けるとしたら、掻き鳴らし(カッティング)か、リフか、アルペジオかの3択という感じで、アルペジオは静かなところのコードバッキングという用途がほとんどです。
フラメンコの場合はもっと用途が広く、メロディー的な使い方や、親指奏法やラスゲアードに絡めてリズムプレイの修飾に使ったりします。
フラメンコのアルペジオのフォーム
フォークギターではピックガード上に右手小指で支えをとったりしますが、フラメンコではやりません。
フラメンコのアルペジオ奏法では、右手親指を低音弦や表面板の上において支えをとることもありますが、完全に宙に浮いた状態で弾く場合もあります。
フラメンコのアルペジオ奏法ではpimaの4指を使います。
クラシックやフォークの場合、アルペジオに使うタッチは、ほぼアルライレのみですが、フラメンコではアポヤンドも積極的に使うのがポイントです。
アポヤンドでのアルペジオは慣れないときつい動きに感じますが、パルマなどが鳴っている中で埋もれないよう、より強く鋭い表現が求められた結果と思います。
もう一つ特徴的なのが、親指でメロディーを弾きながらアルペジオする動きが多く、pとiが同じ弦を弾くという場面もあるため、親指と人差し指が干渉しないようなフォームが望ましいです。
ギタリストによって手の形が違うのでフォームも違うのですが、フラメンコで使う一般的なアルペジオフォームとタッチの仕方は以下の通りです。
- 弦に対してimaを『水平もしくは、45度くらい傾けた角度』の範囲で右掌を構える
- pとiの干渉を避けて指の自由度を上げるため、親指は前(ネック側)に突き出すように構える
- pを6弦上(4,5弦上や6弦上側の表面板の場合もある)に、imaを3,2,1弦上(または2,3,4弦上など、次に使用する弦)に軽く付けた状態が基本で、そこから指に付いている弦を一本ずつ外す感じで弾く。それが出来ない場合、空中から直接弦にタッチして弾く
- imaをアポヤンドで弾くときは、手首側をやや表面板に近づけて、第一関節を少し反らすようにタッチする
弦に対してimaを水平に構えたアルペジオフォーム
弦に対してimaを45度に構えたアルペジオフォーム
アポヤンドのタッチのアルペジオフォーム
アルペジオは用途ごとに弾き方が異なるので、用途ごとに解説します。
一般的なコードアルペジオ
フラメンコでもフォークなどのバッキングに使うようなコードアルペジオをやることもあります。
この場合は全部アルライレで弾くか、ベース音を強調したい場合、親指だけアポヤンドで弾きます。
親指でメロディーを出すアルペジオ
フラメンコ独特の弾きかたで、親指が主役です。
残りの指はima三本使う場合もあるし、miの2本、さらにはiだけの場合(pi奏法)もあります。
基本は親指をアポヤンド、残りの指はアルライレで弾きますが、親指が4弦より高音側の弦を弾くときは親指もアルライレにする場合が多いです。
親指が主役なので、親指のラインが強く出るように意識します。
修飾音的な速いアルペジオ
修飾音やリズムプレイの補助に使われるスピーディーなアルペジオです。
上の『親指でメロディーを出すアルペジオ』と組み合わせて使われることも多いです。
imaの瞬発力を使ってアルライレで音を詰め込むように弾きますが、場合によってはアポヤンド気味にブリブリと弾くこともあります。
imaをアポヤンドするアルペジオ
フラメンコでしかやらないアルペジオ奏法です。
imaで出すラインを際立たせたいときに使います。
親指を併用してベースラインを入れることもありますが、その場合は親指をアルライレで弾くことが多いです。
ブレリアなどで低音弦でリズミックなプレイをしたり、アルペジオの最高音にメロディーを持ってきて強調するような弾き方をする時に使います。
最高音のみを強調したい場合は、aのみをアポヤンドで弾く場合もあります。
トレモロ奏法
トレモロ奏法はクラシックギターから採り入れられた奏法で、サスティンの短いナイロン弦ギターでロングトーンのメロディーと伴奏を同時に表現できるテクニックです。
アルペジオとは別の奏法とも言えますが、テクニック的には、ほぼ同じようなフォームやタッチで弾けたりして共通項が多いので、ここで扱うことにします。
フラメンコのトレモロはpiamiという指使いで弾く5連符のものが基本ですが、クラシックと同じpamiの4連符のトレモロもよく使います。
何故5連符になったのか?は、フラメンコで良く使うテンポ帯(大体決まっている)で一番綺麗に聴こえるのが5連符だった、ということと思いますが、全般的にフラメンコは5連符の音形よく出てきますよね。
トレモロ奏法はフォームやコツ的には、上で解説したアルペジオ奏法のうち、『親指でメロディーを出すアルペジオ』『修飾音的な速いアルペジオ』と近いです。
親指で低音弦をアポヤンドで弾きながら、imaで高音弦をアルライレで弾いていきます。
imaは基本は同一弦を連打しますが、弾きたいメロディーによっては弦移動が絡むこともあります。
修飾的なトレモロ
上で解説した『修飾音的な速いアルペジオ』のトレモロバージョンです。
同一弦連打による修飾音はフラメンコ的なフレーズですが、アポヤンドで弾く場合もあります。
単音のアポヤンドで弾く場合は、テクニック的にはピカード奏法に近くなります。
次回は、音階を弾くためのピカード奏法をやります。
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