コードフォーム奏法と拡張CAGEDシステム【Webで学ぶフラメンコギター10】

前回の講座でフラメンコギターの左手のテクニックの基本について一通りの解説をしました。

そして、フラメンコギターは伴奏楽器として発展してきたため、即応性重視という点から、コードフォームをベースにした運指が多用される、ということも書きました。

今回からは、そういうフラメンコギターの左手運指の特性の一つである「コードフォームをベースにしつつ同時にメロディーも弾いていく運指」の考え方を学習します。

この考え方を自分は「コードフォーム奏法」という名称を付けましたが、正式な呼称があるのか?は謎です。

コードフォーム奏法とは?

他のジャンルのギターの奏法、例えばロックやジャズなどは、コードはコード、スケールはスケールで別々に運用するイメージで、コードバッキングとソロ、という具合に、場面によって運指法や指板の見方も明確に切り替わる場合が多いように思います。

しかし、フラメンコギターの場合はコードフォームを押さえながらスケールを弾くし、ファルセータもコードフォームをベースに作られることが多いので、フラメンコギターにおいてはコードフォームとスケールフォームというのは一体のもので、常に両方意識して演奏している感覚があります。

そういうコードフォームをベースにして色んなプレイを展開していくやりかたを、ここでは「コードフォーム奏法」と呼ぶことにします。

今回は「コード編」として、コードフォーム奏法のベースとなる基本コードフォームを学びます。

なお、コードやスケールの基礎理論は既に理解しているものとして進めます。
音楽理論の解説は「音楽理論ライブラリー」にまとめてありますので、わからないことがあったらそちらを参照してください。

音楽理論ライブラリー
音楽理論のうち演奏・アレンジ・作曲などに役立つ部分を最短で身に付けられるよう、独自に構成したものです。

基本的なコードフォーム

コードフォーム奏法で使うフォームの基本型は、1つのコードタイプ(マイナーとか7thとかディミニッシュとかのコードの種別)に対してそれぞれ5種類ずつあります。

オープンコードで弾く場合とそうでない場合で形が変わったりするので、10種類と言った方がいいかもしれません。

まずは、この5種のフォームをおぼえることが色んなポジションでコードフォーム奏法を展開する第一歩となります。

以下にメジャートライアドコードを例に、5種類のコードフォームを図示します。

◎はルート音、●はコードトーン(この場合はM3とP5)です。

Eフォーム

オープンEコードを基準にした形で、6弦をルートにして、低いほうからルート→5度という形で積み上げます。

オープンEフォーム(E)
オープンEフォーム
セーハEフォーム(1フレットセーハ、F)
セーハEフォーム

Aフォーム

オープンAメジャーコードを基準にした形で、5弦をルートにして、低いほうからルート→5度という形で積み上げます。

オープンAフォーム(A)
オープンAフォーム
セーハAフォーム(1フレットセーハ、B♭)
セーハAフォーム

Dフォーム

オープンDメジャーコードを基準にした形で、4弦をルートにして1、低いほうからルート→5度という形で積み上げます。

オープンDフォーム(D)
オープンDフォーム
セーハDフォーム(1フレット半セーハ、E♭)セーハDフォーム

Gフォーム

オープンGメジャーコードを基準にした形で、6弦をルートにして、低いほうからルート→3度という形で積み上げます。

オープンGフォーム(G)
オープンGフォーム
セーハGフォーム(1フレット半セーハ、A♭)セーハGフォーム

Cフォーム

オープンCメジャーコードを基準にした形で、5弦をルートにして、低いほうからルート→3度という形で積み上げます。

オープンCフォーム(C)
オープンCフォーム
セーハCフォーム(1フレット半セーハ、D♭)セーハCフォーム

5つの基本フォーム=CAGEDシステム

今やった5つのコードフォームは「CAGEDシステム」と呼ばれるもので、ギター学習の基本的な概念で自分が提唱する「コードフォーム奏法」の基礎にもなっています。

ここで一度まとめると、以下のようになります。

Eフォーム(6弦ルート、上方展開)
Aフォーム(5弦ルート、上方展開)
Dフォーム(4弦ルート、上方展開)
Gフォーム(6弦ルート、下方展開)
Cフォーム(5弦ルート、下方展開)

各コードフォームは以下のような順で連結されます。

(低音側)E→D→C→A→G→E→……(高音側)

この概念は「CAGEDシステム」と呼ばれていて、基礎的なギター学習法の一つです。上の図の並びをCから始めると、「CAGED」の名前の通りの並びになりますね。

(低音側)C→A→G→E→D→C→……(高音側)

まずはこれら5つの基本フォームをおぼえることで、指板全体を使えるようになり、メロディーの音程などによって必要なコードフォームを選択できるようになります。

コードフォーム奏法では、このCAGEDシステムを基にして展開させていきますが、実際にコードフォーム奏法を展開するには、少しCAGEDシステムを拡張しておく必要性があると感じます。

拡張CAGEDシステム

CAGEDシステムをベースに、実際にコードフォームを展開して、ベース音を押さえながら弾けるスケールフォームにすることを考えたところ、この5つの基本フォームのみでは少し大雑把すぎると感じました。

実際のポジショニングを考えると、基本の5フォームのみでは実質的に以下の2択になります。

  1. Eフォーム・Aフォーム・Dフォームは、人差し指でセーハしたり、ベース音を押さえたりして、人差し指で押さえているフレットより上のポジションに展開する
  2. Gフォーム・Cフォームは、薬指または小指でベース音を押さえて、薬指・小指で押さえているフレットより下のポジションに展開する(薬指ベースの場合は小指を使って1~2フレット上方まで使用可能)

実際にプレイしていると、正直これだけだと苦しい場面も出てきます。
とくに中指でベースを押さえたい場合ですね。

そこで、中指ベースの形をカバーするために今回考案したのが「拡張CAGEDシステム」です。

これは既存のCAGEDシステムの5つの基本フォームに、中指でベースを押さえることを想定した2つの追加フォーム(拡張フォームと呼ぶことにします)を設定することにしました。それが今回学習する「CAフォーム」と「GEフォーム」です。

以下、解説とともに、例としてメジャートライアドコードのコードフォームを図示します。
◎はルート音、●はコードトーン(M3とP5)です。

CAフォーム

CAフォームは、CフォームとAフォームの間に入るフォームです。

最低ルート音(基準音)を5弦上にとる形で、中指で最低ルート音を押さえて、そこから左右に展開させます。

CAフォームのコードの例
CAフォームのメジャートライアドコード
CAフォームのメジャートライアドコード
※実際の演奏では1弦2弦3弦の音は全部押さえず、選択的に1音か2音を使用する。

GEフォーム

GEフォームは、GフォームとEフォームの間に入るフォームです。

最低ルート音(基準音)を6弦上にとる形で、中指で最低ルート音を押さえて、そこから左右に展開させます。

GEフォームのコードの例
GEフォームのメジャートライアドコード
GEフォームのメジャートライアドコード
※実際の演奏では2弦3弦4弦の音は全部押さえず、選択的に1音か2音を使用する。

拡張CAGEDシステムのまとめ

フォームが5個から7個に増えて少しややこしくなってきたので、ここで一度、拡張CAGEDシステムをまとめておきます。
下の一覧表では、下に行くにしたがってハイポジションになります。

開始するフォーム(最も低いポジション)は押えるコードやスケールのルート音によって変わります。
例えば、ルート音がEならオープンのEフォーム、B♭なら1フレットのAフォームとなります。

Cフォーム(基本フォーム)
5弦薬指・小指ベースで下方に展開

CAフォーム(拡張フォーム)
5弦中指ベースで左右に展開

Aフォーム(基本フォーム)
5弦人差し指ベースで上方に展開

Gフォーム(基本フォーム)
6弦薬指・小指ベースで下方に展開

GEフォーム(拡張フォーム)
6弦中指ベースで左右に展開

Eフォーム(基本フォーム)
6弦人差し指ベースで上方に展開

Dフォーム(基本フォーム)
4弦人差し指ベースで上方に展開

Cフォーム

……

この「拡張CAGEDシステム」では、1つのコードやスケールに対して7種(3度音や5度音をベースにした転回形を考慮するともっと増えますが、現段階では扱いません)のポジショニングの可能性を提示できます。

しかし、実際には押さえるコードやスケールの種類、さらには個人の奏法の違いになどよって弾きづらいものもあるので、実用的なものは全ての可能性のうち半分くらいと思います。

拡張CAGEDシステムはポジショニングの基本的な考えとして理解していただきたいものですが、実用上はそこまで網羅的に暗記する必要は無く、自分の弾きやすいものを選択しながら、徐々にポジショニングのバリエーションを増やしていく、という感じで学習していくと良いと思います。

次回からは、今回学んだ「拡張CAGEDシステム」を基に、実際のコードやスケールのポジショニングを学んでいきたいと思います。

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