前回までで、フラメンコギターの音の出し方の特徴や、楽器、弦、爪の作り方などについて解説してきました。
いわば準備編ですが、これから具体的な演奏技術の解説に入っていきたいと思います。
今回はギターの構え方と、右手のテクニックの基本的な解説をします。
フラメンコギターの構え方
まず、奏法の土台となるギターの構え方ですが、フラメンコギターとクラシックギターではかなり違います。
クラシックギターは左足に足台を使って左足を少し高くしておいて、左の太腿にギターを乗せ、ネックを立てて構えるのが一般的です。
または、ギターレストを使う場合もありますが、クラシックギターの場合、いずれにしても左足の側にギターを乗せて構えます。
フラメンコギターでは、原則的に右の太腿にギターを乗せて弾きます。
これは、単音弾きの精度を追及したクラシックギターに比べてコードプレイ・リズムプレイに重きをおいた結果でしょう。
フラメンコギターの演奏フォームを大別すると4種類の構え方があります。
1.伝統的な構え方
少し膝を開いて座った状態でギターを右の太腿に乗せてネックを立て、右腕の内側と太腿でギターを固定します。
メリットはハイポジションが弾きやすいことですが、右手の運動性はやや制約されます。
第2世代までのギタリストはほとんどがこの構え方でした。
2.足を組む構えかた
左の太腿の上に右足を乗せて足を組んで、右の太腿の上にギターを乗せて演奏します。
パコ・デ・ルシアがこの構え方をしていて、以後スタンダードなフォームになりました。
メリットは右腕が完全に自由になるので特にリズムプレイで有利になります。
欠点は腰を痛めやすいのと、ややハイポジションが弾きにくいことです。
3.足を組まずに猫背で弾く構え方
1.と2.の中間的な構え方で、足は組まずに右の太腿にギターを乗せて、ネックは立てずに猫背になってギターに覆い被さるような形で弾きます。
メリットは2.と同様右手が自由になることと、両足が自由になるので足でサイクルを踏みやすいこと。
デメリットはギターが安定しにくく猫背にならないと弾きにくいのと、ハイポジションが弾きにくいことです。
4.右足に足台を使った構え方
右足に足台を使って、少し高くした右太腿にギターを乗せて構えます。
マノロ・サンルーカルなどはこの構え方でした。
※足台を持っていないので、ティッシュケースを足台にしてますw
2.だと腰に負担がかかるし、3.だと猫背にならないとギターが安定しない、というのを足台で解消しようという構え方ですね。
しかし、足台は荷物が増えるのと、見た目的に『足台使用はフラメンコぽくない』という理由からなのか、あまり見かけません。
まぁ、右太腿が高くなっていれば良いので、椅子に右足をかけたり、3.のフォームから右足だけつま先立ちでになって弾く人もいます。
右手のテクニックの基本
では、これから具体的な演奏テクニックの解説に入っていきますが、フラメンコギターで特殊な奏法が多くて習得が難しいのが右手のテクニックです。
個別に解説する前に、まずは右手のテクニックを総論的に整理・分類しておきます。
指使いの表記について
右手のテクニックを解説するに当たって、略号を使います。
p→右手親指
i→右手人差し指
m→右手中指
a→右手薬指
アポヤンドとアルライレ
クラシックギターと同様に、フラメンコギターもアポヤンドとアルライレ(アルアイレ)という二種類のタッチの仕方を使い分けます。
アポヤンド
ある弦を弾いたら、その隣(低音側)の弦の上に指を置いて止めるタッチ。
周囲の音に埋もれにくい太くてクッキリした音が出る。
アルライレ
ある弦を弾いたら、他の弦には触らずに空中に指を逃がすタッチ。
きらびやかで繊細な音が出る。
右手のテクニックの分類
右手のテクニックを大別すると4つのカテゴリーに分けられます。
- アルペジオ系
分散和音奏法で原則同じ弦を連打せず、1音ずつ弦移動する動きになります。
例外はトレモロです。
テクニック的にはトレモロ奏法もアルペジオ奏法の一種と考えますが、同一弦連打の動きになります。 - ピカード系
音階奏法です。主にアポヤンドのタッチでスケールを弾きます。例外はありますが、原則としてmiの交互弾弦です。 - 親指系
アルサプアを含む親指を使ったテクニックです。
フラメンコでは親指を使用する比重が高く、よくゴルペ奏法と併用されます。 - ラスゲアード系
複数弦を一気に掻き鳴らすリズムプレイのためのテクニックで、フラメンコ奏法の象徴です。
大まかに分けるとこの4つです。
もっと細分化すればできますが、ここではこの4系統に分けて解説していきます。
次回からいよいよ本格的にフラメンコ奏法のテクニック解説に入ります!
Webで学ぶフラメンコギター 前回

Webで学ぶフラメンコギター 次回

コメント