爪の作り方【Webで学ぶフラメンコギター03】

「Webで学ぶフラメンコギター」第3回は、右手の爪についてお話します。

フラメンコに限らず、ピックを使わない指弾きのスタイルの場合、右手の爪の形や補強の仕方で、演奏性と音質が大きく左右されます。

スムーズなテクニックを得て、良い音を出すためには、その人に合った爪を作るという作業は大変重要になってきます。

爪の削りかた

最適な右手の爪の長さや形は人によってかなり異なるので、一概に「これがベストな爪の削りかたである」ということは言えませんが、適用範囲が広そうな一般的な傾向を書いてみます。

まず、スチール弦のギタリストは爪を長く伸ばして、グラスネイルなどでガッチリ補強して、爪だけでタッチするスタイルの人が多いです。

そのほうが速いフレーズが弾きやすかったり、音色も倍音が増えてキラキラした感じになるからですが、ナイロン弦ギター、とくにフラメンコギターではかなり事情が異なります。

フラメンコギターに適した爪の形

フラメンコギターに適した爪の形ですが、フラメンコ奏法ではアポヤンドの比率が高く、とくにピカードなどは均質かつスピードのあるアポヤンドが必要なので、爪を伸ばしすぎると引っかかってコントロールが難しくなります。

ナイロン弦ギターでも、クラシックギターでは全部アルライレで弾くスタイルもあるし、それであれば長い爪が有利と思いますが、フラメンコギターの場合はフラメンコらしい音を出すのにアポヤンドのタッチは不可欠ですよね。

そんな事情から、鉄弦ギタリストやアルライレスタイルのクラシックギタリストに比べると、フラメンコギタリストは爪を短く削る人が多いです。

今まで、多数のフラメンコギタリストの爪を見せてもらったんですが、平均するとこんな感じだと思います。

  • ima→白い部分が1、2mm程度
  • 親指→5mm前後に伸ばして左側を短く削る

各人の指の肉の厚さ、爪の形状、爪の硬さ、弦のテンション、さらにその日のコンディションなどでベストの長さは変わってきます。

以下、右手の各指ごとに解説します。

p(親指)

親指の爪だけはある程度の長さがないと、アルサプアやラスゲアードで音が出なかったりするので、5mm前後(自分は長めで6、7mm)に伸ばして、左側を短く削ります。

親指のタッチは、アルペジオやピカードと一緒にベース音を弾くようなときは、ほぼ弦と平行に当てて、親指の真横で弾く状態です。

親指単音でアポヤンドする時や、アルサプアは、弦に対して少し親指を立てて爪を当てていきます。

i(人差し指)とm(中指)

人差し指と中指はピカード(音階)にも使うので、最適な長さや形を決めるのが大変かもしれません。

短かすぎると音が出にくくなるし、長すぎると引っかかるようになります。

a(薬指)

薬指はアルペジオでの使用が中心になるので、人差し指&中指より短めにしたほうが弾きやすい場合が多いです。

ch(小指)

小指の爪もラスゲアードやゴルペに使うこともあるので、少し伸ばしますが、伸ばしすぎるとノイズ発生源になるので、音を出すための最小限の長さにします。

スクエア型と丸型

人差指、中指、薬指の3指の爪の形状は、上を平らに削る(スクエア型)か、指の形に沿って丸く削る(丸型)かは、音の好みや右手のフォームで変わってきます。

スクエア型に削る場合でも、少し角度をつけて斜めに削るのがいい場合もあるので、色々試してみてください。

どちらの場合も爪の両端は削って角を落とします。

自分の場合は、imaは丸型に削ってから、弦の当たる角度に合わせて、先端部を少し平らに削ります。丸型とスクエア型の中間ですね。

自分の爪の形に関しては、補強方法と一緒に記事の末尾で公開していますので、最後までお読みいただけたら、と思います。

爪の補強

フラメンコの奏法は爪の補強をしないと、すぐに削れてしまったり、割れたりします。

とくに踊り伴奏では、数十分で爪がボロボロになったりするので、補強はしなければなりません。

補強の仕方も色々ありますが、一つずつ解説しましょう。

瞬間接着剤・ネイルグルー

爪の補強材で一番メジャーで手軽なのが瞬間接着剤です。

使いやすいのは、シアノアクリレート系の低粘度のもので、乾いたときに表面がツルツルになるタイプのものです。

昔から釣具用の緑のアロンアルファが有名なんですが、乾くのが遅いという欠点があります。

100円ショップ・ホームセンター・インターネットで売っている安価なものの中で、低粘度で速く乾くものを探すといいです。

低粘度のサラサラのもののほうが接着剤が剥がれかけたところにも浸透して再接着してくれるので、補修も楽です。

ちなみに、ゼリー状や乾いたとき表面がザラザラになるタイプ(無印の黄色のアロンアルファとか)は強度は出ますが、乾くのが遅かったり、ラスゲアードで引っかかり感が出たりで、あまり適していません。

ネイルグルー

ネイルアートで使うネイルグルーも主成分は瞬間接着剤と同じシアノアクリレートが主流なので、特徴は瞬間接着剤と同様です。

単価は100均の瞬間接着剤よりは高くなりますが、ボトルタイプでハケがついているものは塗りやすいし、ノズルの目詰まりに悩まずにすみますよね。

自分もネイルグルーは何種類か試したんですが、爪に優しくするために混ぜ物をしてるせいなのか、大抵、瞬間接着剤に比べて乾くのが遅いです。

自分は乾きの早い瞬間接着剤を大容量ボトルで買って、マニキュアやネイルグルーの刷毛付きの容器に詰め替えて使っています。

瞬間接着剤・ネイルグルーはお手軽さやメンテナンス性は最高ですが、耐久性はそんなに高くないので、マメなメンテナンスが必要です。

強度も他の補強方法にくらべると弱いので、地爪が弱い人はこれだけだと不安があるかもしれません。

混ぜ物系・グラスネイル

接着剤系のベース剤に混ぜ物をして爪の強度と耐久性を高めるもので、グラスネイルなどと言われているものもここに入ります。

ティッシュペーパーで補強

古典的な方法にティッシュペーパーを使うものがあります。

瞬間接着剤をつけた爪にティッシュペーパーを貼って紙繊維に接着剤を浸透させ、乾いたら綺麗に整形して、さらに上から接着剤を重ね塗りするんですが、接着剤だけの場合より厚みが出て強度が上がります。

ただ、結構剥がれやすく、端のほうから剥がれてくるのでマメに補修してやらないといけません。

あと、乾きが遅くなるので爪を作るのに時間がかかります。

グラスネイル・ガラスパウダー

グラスネイルは接着剤にガラス繊維の粉を混ぜて使うもので、キットも売っていますが、結構高価で1万円とかします。

自分はこれを安く出来ないかと思い、ガラスパウダーを買ってきて(ホームセンターとかモノタロウとかで売ってます)しばらく試していた時期があります。

接着剤を付けた爪にガラスパウダーをまぶすと一瞬で浸透して固まるので、ヤスリで凸凹を綺麗に削って、上からさらに接着剤でコーティングしていきます。

ガラスパウダーの耐久性はティッシュペーパーよりは良いですが、やはり数日すると剥がれてきます。

あと、爪を強化した状態だと爪が削りにくくなるので、爪の形を変えたいときは結局自分で剥がさないといけなくなったりしてメンテナンス性は低下します。

グラスネイル含む混ぜ物系はメンテナンス性の低下と引き換えに強度を得る感じなので、多少めんぐくさくても硬い爪が好きな人、爪に厚みが欲しい人、自爪が脆い人には良い選択と思います。

マニキュア系

ベースコートやトップコートなどのマニキュア系の補強剤は元々爪につけるために作られているので安心感はあります。

ただし、マニキュア系は強度を得るのに何回も重ね塗りしないといけなかったり、そのわりに耐久性がイマイチだったりします。

踊り伴奏をあまりやらず、柔らか目の爪が良い人は瞬間接着剤より合うかもしれません。

ジェルネイル

ジェルネイルはマニキュアの一種と思われがちですが、こちらは液状の樹脂に紫外線を当てて硬化させるものです。

接着剤系より柔軟性があり、爪に厚みが出るので、独特のまったりした弾き心地になりますが、好みの別れるところと思います。

耐久性は高く、1か月くらいもちますが、硬化させるのに紫外線を照射する機器が必要で、自分でやるのは初期投資がかかるし、いつでもどこでも出来る手軽さはないです。

また、ジェルネイルがついた状態だと爪が削りにくくなったり、剥がすときに大変だったりと、メンテナンス性はあまり良くないです。

付け爪

仕事などの事情で爪が伸ばせない人は、付け爪を使う手もあります。

プラスチックのチップをネイルグルーなどで自爪に貼り付けて使うものです。

ギター用の付け爪も売っているし、今は一般のネイル用品も種類が豊富なので、合うものを選んで使います。

自分が付け爪を使うのは爪が割れてしまった時くらいなんですが、ワシ爪・反り爪など、爪が真っ直ぐ伸びない人には救世主的なアイテムかもしれません。

これの欠点は、付け爪の整形に手間がかかることと、自爪ではないので慣れないと違和感があることです。

アラスカピック

指先にはめて使うピックで、付け爪の一種とも捉えられます。琴爪みたいな感じですね。

鉄弦ギタリストはよく使いますが、フラメンコで使っているのは見たことがありません。

市販のものだと長すぎてアポヤンドのタッチに適さないので、どうしても使いたかったら、短く削るとか。

これは、敢えて試そうという機会も必要性も無いので、自分には未知の領域ですが、元々アラスカピックで慣れている人がフラメンコ奏法に応用したら面白い世界が広がるかもしれませんね。

爪の形・補強方法まとめ

爪の長さに関しては、指先の形や爪の生え方、タッチの好みなどで変わってくるので、各自試行錯誤して自分の指と奏法に合った長さと形を研究してください。

爪の硬さに関しては、一般的には短めの爪なら硬めにしないと音が出にくく、長めの爪は柔らか目にしないとアルライレで引っかかりやすい、という傾向はあります。

自爪の強さ・演奏スタイル・メンテナンス性を考えて自分にあった補強方法を選ぶと良いでしょう。

自分の爪を公開!

参考までに、現在の自分の爪の写真を公開いたします。

i・m・a・chの爪

人差し指、中指、薬指、小指の爪

今は親指以外は短めに削っています。白い部分が1mmくらい。

pの爪

親指の爪

pだけは長めで、白い部分が6~7mm。

これくらいないと、アルサプアやラスゲアードでしっかり音が出ないので。

爪を削る時はこの長さにしておいて、数日経って爪が伸びて、引っ掛かり感が出てきたらヤスリで削って、この長さに戻しています。

自分の爪の補強方法

ちなみに、自分の爪の補強方法は、上の方でも書きましたが、基本は瞬間接着剤単用で、乾きの速い接着剤(100均のものとかでもシアノアクリレート100%ならどれでもok)をマニキュア等のボトルに詰め替えて使っています。

ただし、踊り伴奏が立て込んだり、爪が傷んでいるときはガラスパウダーを混ぜて強度を上げることも。

爪を削る時に、接着剤がボロくなっていたら剥がして塗りなおしますが、先がノズルになった小分け容器(普通に売っている内容量2gとかのもの)の接着剤を持ち歩いて、補強した部分が割れたり剥がれたりしたら、上から1滴垂らしてマメに修理するようにしています。

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