モニタースピーカーについて【DTM・機材解説03】

前回のDTM(デスクトップミュージック、自宅のPCで行う音楽制作)・機材紹介記事はモニターヘッドホンについてやりましたが、今回は前回と同様モニター環境関連ということで、モニタースピーカーについて解説します。

モニタースピーカーは、音楽制作用の解像度が高いスピーカーで、これの音を聴きながらミキシングやマスタリング、アレンジや録音のチェックなどを行います。

ですので、かなり重要な機材なのですが、自分はモニタースピーカーにあまりお金をかけていません。というか、お金をかけずに済みました。

その理由も、この記事を最後まで読んでいただければお分かりいただけると思いますが、まずはモニタースピーカーという機材の概要や、定番機材の解説などからやっていこうと思います。

パッシブスピーカーとアクティブスピーカー

スピーカーにはパッシブタイプのものとアクティブタイプのものの2種類あります。

パッシブスピーカー

パッシブスピーカーはアンプを内蔵しておらず、スピーカーケーブル等でアンプと接続します。

一般のオーディオ用のスピーカーはこちらで、電源不要ですがスピーカー単体では音が鳴らせません。

アクティブスピーカー

もう一方のアクティブスピーカー(パワードスピーカーとも言う)は、アンプを内蔵したスピーカーで、電源を必要としますが単体で音が鳴らせます。

現在、PCに接続して使うモニタースピーカーはアクティブスピーカーが主流です。

モニタースピーカーの歴史

前世紀まではパッシブスピーカーのほうが圧倒的に高音質で、音楽制作用のスタジオモニタースピーカーもパッシブスピーカーが主流でした。

ヤマハのNS-10M(通称テンモニ)などが代表的ですよね。

アクティブスピーカーは、以前は主にライブ用のモニタースピーカーなどで用いられていましたが、ミキシングなどの高音質が要求されるモニター用途ではパッシブスピーカーが使用されていました。

しかし、2000年代に入ってDTMが普及してPCとオーディオインターフェイスでの再生環境が一般的な時代になってくると、小型アクティブスピーカーの需要が増大してアクティブスピーカーは急激に高音質化・小型化していきます。

ヤマハでいうと、NS-10Mの後継的な位置付けのMSPシリーズなどが出てきました。

その流れはずっと続いていて、現在、PCに繋ぐ制作用モニタースピーカーはアクティブスピーカーが主流になっています。

モニタースピーカーの音質

元々、ミキシングやマスタリングをするためのスタジオモニターは、防音設備の調ったスタジオで、ある程度以上の音量で鳴らすものでした。

実際、音楽制作スタジオのメインモニタースピーカーはかなり大きなものを置いているのが普通ですが、価格もとんでもないもの(100万円以上とか)で個人で扱うには手に余ります。

ニアフィールドモニター

現在、個人が制作のためにPCに繋いで使うモニタースピーカーは「ニアフィールドモニター」と言われる小型のものです。

ニアフィールドモニターは、元祖であるテンモニがそうでしたが、元々は家庭で使われるミニコンポなどでどう聴こえるか?というのを確認する用途で使われていたものです。

現在はテンモニの時代より技術が進んで、遥かに小型で高音質にはなっていますが、再生能力に余裕がある大型スタジオモニターとニアフィールドモニターとは基本的な方向性が違います。

今のニアフィールドモニターは「小型の筐体でいかに低音域と解像度を得るか?」ということに特化していますが、そのために犠牲になっていることも多々あるので、そのあたりの「どこをどれくらい妥協するか?」というのが機種選びでも難しいところです。

モニタースピーカー選びのポイント

ミキシング・マスタリング用のモニタースピーカーに求められるのは、やはり優先順位的に解像度と再生可能周波数の広さですが、実際に聴かないとわからない部分が多いです。

スペック表では「40kHzまで出ます!」って書いてあっても、実際に聴くと全然高音が出なかったりするので。

高音に関しては人間の可聴域って、凄く耳の良い人でもせいぜい25kHzくらいまでしか聴こえないし、年をとると10kHzの音も聴こえなくなりますので、スペックで30kHzとか40kHzとか謳っているものより、実際に10kHzから20kHzあたりがしっかり出ていることが重要です。

一方、低音域の再生能力に関しては、バスレフなどの構造である程度は補強できますが、原則、スピーカーの口径に比例します。

なので、環境が許すなら8インチくらいの大口径のものがいいですが、口径が大きくなると、音量も上げないと音のキレが無くなってボケるし、小さい部屋に大きいスピーカーを置くのは、部屋鳴りや低音のコントロールが難しくなるので、そのへんが難しいところです。

ちなみにですが、自分の環境だと設置スペースや音量の問題で5インチが限度なので、ミキシング・マスタリングにはヘッドホンの併用は必須になります。

逆にヘッドホン併用が前提なら、スピーカーにそこまで凄い再生能力を求めなくて良くなるので、予算やセッティングにも余裕が出ますよね。

だいたいこんな事を勘案しつつ、自分の目的にあったものを選んでいくと良いと思います。

代表的なモニタースピーカー

各社とも様々なグレードのモニタースピーカーを発売していますが、スピーカーに関しては会社ごとの特色がハッキリしているので、会社ごとに解説していきます。

機種ごとの感想は、現物やネットの比較音源などを試聴したものを基に書いていますが、自分の主観であり、当然違う感じ方をされる方もいると思いますので参考程度にしてください。

YAMAHA

ヤマハはNS-10M(テンモニ)以降、モニタースピーカーにおいては世界のトップメッカーで、現在も業界標準的な位置付けのメーカーです。

現在の主要製品は、MSPシリーズと、HSシリーズです。

MSPシリーズはテンモニ直系のアクティブスピーカーとして、業界スタンダードの地位を占めてきたシリーズでフラットな特性が売りですが、発売されてから久しいので設計の古さは少し気になるところです。

サウンドハウスで購入
YAMAHA ( ヤマハ ) / MSP5 STUDIO
YAMAHA ( ヤマハ ) / MSP5 STUDIO


後発のHSシリーズはテンモニ譲りの白いコーンが特徴で、今後YAMAHAのモニタースピーカーはこちらが主流になりそうです。

HSシリーズは、とくに高音の再生能力と定位の正確さに定評があります。

反面、低域は弱めなのでサブウーハーを使うか、スペースが許すなら8インチのHS8を選択すると良いと思います。

サウンドハウスで購入
YAMAHA ( ヤマハ ) / HS8 ペア
YAMAHA ( ヤマハ ) / HS8 ペア

Genelec

独特の形状のモニタースピーカーを作っているジェネレックはフィンランドで設立された会社で、プロ向けのハイクオリティーな製品を専門に製造しています。

見れば一発でそれとわかる筐体は一体形成されていて、サイズ以上の再生能力があります。

製品は妥協の無い素晴らしいものですが、値段はかなりお高くなります。

ジェネレックの音の傾向は(良い意味で)「クソ真面目」な感じで、徹底したフラットな特性と高解像度、正確な定位が特徴ですが、極力色付けを廃した音作りなので、初めて聴くと地味に聴こえるかもしれません。

予算に余裕があるのなら、とりあえず選んでおいて失敗はないブランドといえます。

サウンドハウスで購入
GENELEC / パワード・スタジオモニター
GENELEC / パワード・スタジオモニター

ADAM AUDIO

アダムは1999年に設立されたドイツのメーカーで、独自の技術を盛り込んだプロ向けのモニタースピーカーをラインナップしています。

外観は四角いリボンツィーターがトレードマークです。

プロユースの高級ブランドのイメージがありますが、ジェネレックに比べると安価なモデルも出していて、5万円くらいの予算でも候補に入れることができます。

アダムのスピーカーの音質的な特徴は、再生帯域が広く、高域と低域が強調されたドンシャリ気味のサウンドカラーです。

リボンツィーターはかなり優秀なようで、とくに高域の解像度が良いです。

サウンドハウスで購入
ADAM AUDIO / パワード・スタジオモニター
ADAM AUDIO / パワード・スタジオモニター


なお、ADAMから分家したEVEというメーカーもあって、よく似た製品を出しています。

KRK

KRKはアメリカのDJ向け機材メーカーですが、黄色いコーンがトレードマークになっているハイクオリティーなモニタースピーカーを作っていることで知られています。

日本ではまだ知名度が高くありませんが、欧米のDJ系のトラックメイカーやEDM系のアーティストが好んで使用しているイメージですよね。

KRKのスピーカーは大きなバスレフポートが前面に付いていて、音圧感のある低音が特徴ですが、実は高音域の再生能力も高く、非常に高い潜在能力を秘めていると思われます。

サブウーハーを使わずに低音のズンズンが欲しいなら、KRKの製品をお薦めします。

価格帯はペアで4万円から10万円くらいのものが中心です。

サウンドハウスで購入
KRK / パワード・スタジオモニター
KRK / パワード・スタジオモニター

TANNOY

タンノイはオーディオファンの間では昔から高級スピーカーブランドとして知られていますが、安価で高品質なニアフィールドモニターのREVEALシリーズ・GOLDシリーズを出しています。

REVEALシリーズは再生能力と分解能が高く、価格も安いので自分も一時購入を検討していました。

音質的には中音域に特徴があって、艶があって聴きやすいのですが、これってリスニング寄りのチューニングぽいので、ミキシング用途にはどうかと思いました。

あと、今のタイミングだと新作のGOLDシリーズが出て、REVEALシリーズはもうディスコンぽいので保守やサポート面でどうかというのもありますよね。

ちなみに、GOLDシリーズのほうは現時点(2020年10月)では発売されたばかりで試聴もできなかったし、ほとんど情報が無いのですが、タンノイの得意分野である同軸スピーカー(ツィーターとウーハーが同じ軸に設置される方式)だし、REVEALシリーズの出来の良さとコスパを考えると、恐らくかなり良いものだと思います。

サウンドハウスで購入
TANNOY / パワード・スタジオモニター
TANNOY / パワード・スタジオモニター

IK Multimedia

IKマルチメディアは、コンパクトなモニタースピーカーのiLoudシリーズを出しているメーカーです。

設置スペースや音量の問題で小型のものしか置けないけど、なるべく高音質なものが欲しい、という場合はiLoudは良い選択肢になると思います。

スピーカーは3インチほどで細長い筐体ですが、このサイズでこれだけの再生能力のあるスピーカーは他に無いと思います。

サウンドハウスで購入
IK MULTIMEDIA / パワード・スタジオモニター
IK MULTIMEDIA / パワード・スタジオモニター

自分が使っているモニタースピーカー【JBL 305PmkⅡ】

さて、あれこれモニタースピーカーをみてきましたが、今、自分が使ってるのは、JBLというメーカーの305PmkⅡという機種です。

JBL 305Pmk2

今まで使っていたモニタースピーカーが不調になってきたので、少し前に買ったものです。

その際に予算を決めて色々な機種を比較検討しましたが、結果から言いますと、5万くらいまでの予算で選ぶなら、特別なこだわりが無い限り、これを選んでおけば間違いないのでは?と思います。

それほどコストパフォーマンスに優れたスピーカーです。

何故この機種を選んだのか?

JBLはアメリカのスピーカー専門メーカーで、ハイエンドの大型スタジオモニターでは大きなシェアを持っていて、そのノウハウを普及価格帯の製品にフィードバックしています。ヤマハなどと同じ構図ですね。

これを購入する時、予算は5万円くらい、最大10万円までで考えていて、設置場所の関係で4インチから5インチサイズに限定して探しました。

ネットで調べまくったり、試聴に行ったりして比較検討しましたが、他社の4、5万円前後の機種だと305PmkⅡとドッコイドッコイか、ソースによっては明確に305PmkⅡほうが良かったんですよね。

この上の価格帯となると、ジェネレックか、ADAMの上位機種まで視野に入りますが、10万円クラスになってきます。

305PmkⅡにするか、10万クラスにするか?は、ソコソコ迷ったんですが、やはり差額がデカすぎるし、その差額分の価値があるか?というのは、その人の事情次第と思います。

自分の場合は、10万クラスと305PmkⅡの音質差は僅差に感じたし、差額であのマイク欲しい……となったわけですね。

JBL 305PmkⅡ レビュー

では、JBL 305PmkⅡのレビューをお届けします。

最初に言っておくと、このスピーカーはバスレフポートが後ろに付いていて、出音もやや低音が優位なので、設置方法に気を使わないと解像度が出ないかもしれません。

この記事の最後にモニタースピーカーの設置方法も書いているので、最後までお読みいただけたら、と思います。

ちなみにですが、この機種はエージング(スピーカーやヘッドホンの慣らし運転)は不要です。

なんでも、出荷前に100時間の連続再生耐久テストをやっているらしくて、そのあたり、さすがにスピーカー専門メーカーだと感心しますが、結果として100時間エージングしたのと同じなので、最初から本調子の音で使えるわけです。地味にありがたいところです。

305PmkⅡ 音の傾向

305PmkⅡの音質ですが、まず5インチクラスのスピーカーとしてはトップクラスの低域再生能力があります。

スペック表だと再生可能な周波数下限は43Hzになっていて、体感では本当にそのあたりまで出ている感じですが、盛られたようなズンズン感は無いナチュラルな低音なのでアコースティック系音楽のミキシング・マスタリングには適していそうです。

ただ、100Hz以下の超低音は5インチというサイズの限界もあるので、そこをシビアに聴きたかったら、ヘッドホンを併用するかサブウーハーで補強するかですね。

高音域のほうは、スペック上は24kHzまでと、それほど良いわけではありませんが、実際にはクッキリと高音が立った音がします。

シンバルやハイハットのニュアンスを聴くのも問題ない解像度です。

これは、10kHzから20kHzあたり(人間の可聴域は20kHz前後まで)がしっかり出ている事と、独特のツィーター形状で高周波が耳に届きやすくなっているのが大きいと思います。

それだけ高音が出ているのに、シャリシャリ感・刺さり感が無いのも好感ポイントでした。

スペック表で30kHzと書いてあっても、実際には15kHzすら鳴らせないスピーカーも沢山ありますから、JBLのスペック表記はかなり誠実なものと思います。

残る中音域は、フラットで何の味付けも無いので地味に聴こえるかもしれませんが、自宅でのミキシング・マスタリング用途には十分な解像度があります。

総合的な音質としては、セッティングさえちゃんとやれば上から下までフラットでナチュラルな音で聴けます。

そして、高音がしっかり耳に届くせいか、定位もかなり明確に聴くことが出来ます。

ホワイトノイズ

このように305PmkⅡは価格からは信じられないほどの再生能力がありますが、唯一の欠点としては、多少ホワイトノイズ(サー、という機器自体が発する小さなノイズ)があって、その結果S/Nはそんなに良くない、ということですかね。

自分の環境だと305PmkⅡのホワイトノイズは周囲が静かな状態でスピーカーに耳を近付けないと聴こえない程度で、PCのファンとか隣の部屋の冷蔵庫の音のほうが大きいくらいなので、実用上問題になることはありません。

ちなみに、どんな機種であってもアクティブスピーカーの構造上、多少のホワイトノイズは発生してしまいます。

バランス接続すれば多少は良くなるとは思いますが(自分はバランス接続しています)、そのレベルのS/Nが影響するようなシビアな作業はヘッドホンですかねー。

驚異のコスパ

総合的にみて、JBL 305PmkⅡは他社の5万円クラス(ペアで)のスピーカーと互角(以上かも)の実力があると思います。

予算10万以下でモニタースピーカーを探している場合、自分個人的には中途半端な値段のものを買うより、この機種にしておいて浮いた数万円で他の機材を買うほうが良いと思いました。

逆に、この下のグレードの1万円台の機種を検討している人がいたら、今なら、もうちょっと足して305PmkⅡにしておけ!と強くお薦めしたいです。

いやいや数千円で……という場合は、知らんがな(笑)

サウンドハウスで購入
JBL ( ジェービーエル ) / 305P MKII
JBL ( ジェービーエル ) / 305P MKII

スピーカーの性能を引き出すために

最後になりましたが、モニタースピーカーのパフォーマンスを十分に引き出すために、いくつか注意事項があります。

大抵の機種で当てはまりますので参考にしてください。

床やデスクに直接置かない

スピーカーを床やデスクに直置きすると、低音を中心に共振を起こして、解像度が低下します。

とくに低音が良く出る機種は、これが顕著です。

ですので、モニタースピーカーは床やデスクに直接置かず、スピーカースタンドに設置するのがベストですが、スペース的に無理な場合はインシュレーターを試してみましょう。

後ろの壁と離して設置する

スピーカーと後ろ側の壁との距離は、とくにバスレフポートが後ろについている機種で注意すべきポイントですが、そうでない機種もなるべく後ろの壁と離して設置してください。

そうしないと後ろの壁で低音が反射・増幅されて音がボケたり部屋鳴りを誘発したりします。

後ろの壁とスピーカーは最低でも30cmくらいは離したほうが良いと思います。

ツィーターを耳の高さに設置

高音域の音は上下左右に広がらずに直進する傾向があるので、スピーカースタンドなどでツィーターを耳の高さに持ってくると、音の輪郭がクッキリして解像度が上がります。

解像度が悪いと思ったら、スピーカースタンドを買って高さを調整してみましょう。

バランス接続で繋ぐ

モニタースピーカーは出来たらバランス接続にしましょう。

バランス接続とは、信号線から独立したアース線(グラウンド)も使用する方式ですが、バランス接続で繋ぐとノイズに強くなって出力も向上します。

バランス接続できない場合はアンバランス接続となり、信号線のみになるので、ノイズと出力の面で少し不利になります。

モニタースピーカーの接続端子には、XLR(キャノン)端子、TRS端子(横線が2本入っているフォン端子)、TS端子(横線が1本のフォン端子)、RCA(ピン)端子などがありますが、XLR端子とTRS端子はバランス接続が可能です。

RCA端子とTS端子はアンバランス接続になりますが、XLRやTRSでも機器が対応してないとアンバランス接続になります。

以上4点を守ることで最大のパフォーマンスが出ると思います。

コメント