DTM用のPC【DTM・機材解説05】

DTM(デスクトップミュージック、自宅のPCで行う音楽制作)・機材解説も5回目になります。今までは、ヘッドホンやマイクなどのレコーディング機材を中心に扱って来ましたが、今回は少し矛先を変えて「音楽制作のためのPC環境」というテーマで書きます。

DTMも昔はMTRとかハードウェア音源とかでやっていましたが、現在はPCでDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)と呼ばれるソフトウェアを使って制作するのが圧倒的に楽です。DAWについては次回詳しくやりましょう。

今回のテーマは、PC本体について「どんなPCがDTMに適しているのか?」という事から、PCの選び方、DTM向けのカスタマイズ方法などを解説いたします。

MacとWindowsどちらが良いか?

PCの2大プラットフォームであるMacとWindowsだと、どちらを選んだら良いのか?というのを知りたい方は多いのではないでしょうか。

結論から言うと、今はどちらでも良いと思います。

ちなみに自分はずっとWindowsを使っています。

音楽以外の作業でWindowsでしか動かないソフトを使っていたり、Windows系のほうが自分でパーツを交換したりして拡張しやすかったり、周辺機器も汎用性が高くて安い、という理由ですが。

Mac(Apple製PC)

MacはiPhoneやiPadを作っているApple社のPCで、もともとはマッキントッシュという機種だったのが、Apple社のPCの通称として定着したものです。

DTMやCGなどの芸術分野に関してはMicroSoftよりAppleのほうが早くから環境を充実させてきたという歴史があって、自分がDTMを始めた2005年時点でも、まだApple優位という空気がありました。

その頃は、オーディオインターフェイスもAppleが主導したFireWire(IEEE1394)という規格で繋ぐのが主流で、WindowsだとFireWire機器との互換性がイマイチだったし、2001年からMacはCoreAudioが標準のオーディオドライバになったため、難しい設定無しに快適な環境が構築出来た、という事情が大きいです。

しかし、現在ではこういう環境の差はほとんど無くなっています。

現在Macを使う利点としては、①周辺機器やソフトウェアの互換性がある程度保証されている点と、②iPhoneやiPadなどのApple製機器との連携がとりやすい点でしょうか。

モバイル機器をApple製品で固めている人はDTMもMacでやると利便性は良さそうです。

あとは、機器や接続規格を調べたりするのが苦手な初心者層もMacのほうが安心かもしれません。

Apple製品の欠点としては①機器の価格が割高な事と、②自分でパーツを交換したりしてカスタマイズ・修理がやりにくい事、という2点でしょうか。

Windows

現在、Apple社製以外のほとんどのPCがMicroSoft社のWindowsで動いています。

圧倒的なシェアを誇るWindows陣営ですが、DTMに関しては2000年前後まではAppleに大きく水を空けられていました。

流れが変わってきたのは2000年代に入ってUSB2.0が普及し、Cubaseを開発したスタインバーグ社が作ったASIOというオーディオドライバが浸透してきたあたりからです。

ASIOドライバの普及によってWindowsでもオーディオインターフェイスが快適に使用できるようになり、CubaseやSONARなどWindowsで動くDAWも急激に進化しました。

さらに2000年代後半になるとApple社が主導したFireWire規格が廃れてきて、オーディオインターフェイスもUSB接続のものが主流になってきます。

このあたりの時点でAppleの優位性はほぼ失われました。

ちなみにAppleは、その後にIntelとの共同開発でThunderboltという接続規格を出していますが、USB4.0でUSB規格と統合されるという話もあるようです。

Windowsの利点としては、①機器のバリエーションが圧倒的に豊富で安価なものが選べる点と、②カスタマイズや自力修理がしやすい点、③音楽用途以外に使う場合もソフトの選択肢が広いことなどです。

欠点としては、機器やソフトの品質がピンキリなため、DTMに最適なPC環境を整えるのに一定の知識が必要な事でしょうか。

現在はWindowsとMacで出来る事に大差は無いので、価格やソフトウェアや周辺機器などで選ぶことになります。

どんなタイプのPCが良いか?

PCには、デスクトップ型・ノートPC・一体型PC・タブレットと、色んな形態がありますが、どんなものを選んだら良いのか?ということを考えてみます。

デスクトップPC

結論から言うと、DAWを使う用途で設置スペースがあるならデスクトップPCがベストです。

一番の理由は、大画面モニターやマルチモニターにすることでDAWの作業効率が飛躍的に上がるからです。

実際に録音・打ち込みからミキシングまでやってみると、ノートPCの小さい画面でタブ切り替えなんてやっていると物凄いストレスが溜まりますので。

その他にも、ファンを静かなものに交換したりして静音化を図ったり、重いプラグインを使うのにPCの能力が足りなくなっても、CPUやメモリーを増強できる余地がデスクトップPCは圧倒的に大きいのです。

HDDやSSDなどのストレージも一度にたくさん繋げられたりするので、増設やバックアップも楽々です。

ノートPC

DAWを使うならデスクトップPCが良いという事がご理解いただけたかと思いますが、次にノートPCが有効な用途を考えてみます。

デスクトップPCやモニターの設置スペースが無いならノートPCでやるしかないですし、家の中で移動しながら作業する場合などもノートPCは便利ですよね。

めんどくさい作業はデスクトップPCでやるとしても、サブ機としてノートPCがあると非常に重宝します。

しかしながら、DTMにおけるノートPCの最強の使い道はモバイル録音だと思います。

自宅以外の場所でレコーディングしたい場合、いつも使ってるソフトで録音するのが一番楽なので、そういう用途がある人にとってはノートPCは無くてはならないものです。

ノートPCの選び方

ノートPCの選び方ですが、自宅でメイン使用するなら持ち運びに支障が出ない程度に大型・大画面で極力ハイスペックなものが良いでしょう。

メインPCは別にあって、モバイル専用機やサブ機としてノートPCを用意するなら、スペック的に支障が出ない程度に、なるべく小型軽量なものが良いでしょう。

その他、ノートPCを選ぶポイントとしては、①なるべく沢山(最低3つくらい)USB端子が付いている事と、②外部モニター出力が付いている事の2点でしょうか。

USB端子はオーディオインターフェース、マウス、外付けストレージ、テンキーパッド(あるとかなり便利)など、同時に繋ぎたいものは沢山あるので、USB端子は多い方が良いです。

USBハブを使えば増設もできますが、給電が不安定になったりして動作の信頼性が落ちるので(信頼性の面からオーディオインターフェースと外付けストレージは直接接続にするべき)、最低3口くらいは本体に付いていて欲しいところです。

外部モニターが接続できれば、大画面の外部モニターを増設することでデスクトップPCの作業環境に近付けることもできます。

ノートPCの電源

ノートPCでDTM作業をする時に気を付けるべきなのは電源です。

バッテリー駆動させると、バスパワー(ACアダプター不要のUSB給電タイプ)のオーディオインターフェイスでファントム電源を使う場合など、電圧が不足してノイズ発生や音質低下を招きやすいので、なるべくACアダプターを使ってコンセントから電源をとるようにしてください。

自分はモバイル録音用にB5サイズの小型ノートPCとバスパワーで動く小型のオーディオインターフェイスを用意していますが、作業の信頼性を上げるためにノートPCはACアダプターで使うようにしています。

一体型PC

デスクトップPCとノートPCの中間的なものとして、一体型のPCが家電メーカーなどから発売されています。

一体型PCも色んなタイプがありますが、多くはノートPCを大型化・据え置き型にしたものです。

その場合、ベースはノートPCなのでデスクトップPCの利点である自由度や拡張性も無いし、かといってノートPCのように簡単に持ち運びできる利点も無いので、あまりお薦めできません。

据え置き型PCの設置スペースがあるなら、モニターやストレージの増設の自由度が高くて、パーツ交換の容易なセパレート型のデスクトップPCを選んだほうが良いと思います。

タブレット

タブレット端末についても少し触れておきましょう。

ノートPCでDTMが出来るなら、iPadなどのタブレットだとダメなの?と思われるかもしれませんが、現状ではタブレットだけで全て完結というのは、厳しいと思います。

ノートPCはデスクトップPCを小型化したものですが、タブレットはスマートフォンを大型化させたものなので、繋げられる機器やインストール可能なソフトも限定されるし、スペックも貧弱で拡張性など皆無なのでDTMには適していません。

現状ではタブレットをメイン端末として本格的な音楽制作をしよう、というのは制約が多すぎると思いますが、タブレットはファンレスで無音なので、レコーディング用の補助端末としてはとても優秀です。

DTMに適したPC環境構築

DTMに適したPCの選び方ということはだいたい理解していただけたと思いますが、今度はDTM用途のPCのカスタマイズということを考えてみましょう。

まずは、デスクトップPCとノートPCのどちらでも出来るカスタマイズを挙げてみます。

メモリーの増設

DTMはメモリーを食う作業だし、動画編集も視野に入れるならメモリーは余裕があったほうが良いです。

とくにノートPCは一般的な作業をする最低限のメモリーしか積んでいなかったりするので、増設出来るならしておきましょう。

現時点では、シンプルな使い方ならメモリーは8GBあれば大丈夫ですが、重いプラグインを使ったり、トラック数が多い音源編集や動画編集をする場合、16GBくらいは欲しいところです。

ストレージの増設

DTMではストレージ(HDDやSSD)の容量をかなり消費します。

パート数が多い曲だと1曲で数GBになるし、音源やプラグインもサイズが馬鹿デカイものが多いです。

ノートPCの場合は内臓ストレージは1つしか接続出来ないものが多いので、なるべく高速で大容量のものを入れておきましょう。

速度や耐振動性・静音性を考えると、今ならSSD一択だと思います。

SSD一台で全部完結するなら、DTM専用機でも1TBくらい、他の用途と兼用なら2TBくらい欲しいところです。

デスクトップPCなら同時に何台もストレージが接続出来るので、メインストレージには小容量のSSDを、サブストレージに大容量のHDDを使って安くあげることも出来ますが、HDDは騒音発生源になるので理想はオールSSDです。

普段アクセスしないデータは外付けのストレージやDVD-Rなどに保存しておけば、内蔵ストレージの容量を節約できます。

モニターの増設

DTMでは音源編集をしつつミキシングをしたり、フェーダー画面をいじりながら録音したりなど、2つ以上の作業を同時に進める場面が多いのですが、そういう時に複数のモニターが使えると非常に便利です。

ノートPCでも外部モニターを接続できるものが多いので、自宅で作業するときは外部モニターを繋いでマルチモニター化すると格段に作業効率が上がります。

デスクトップPC限定のカスタマイズ

ノートPCでも出来るカスタマイズは以上になりますが、デスクトップPCなら更なるカスタマイズも可能です。

静音化

せっかくS/N性能が良いインターフェイスやマイクを揃えても、PCが騒音を発していたら意味が無くなってしまうので、DTM用のPCは、なるべく音を出さないようにカスタマイズします。

PCで一番騒音を発するのは冷却ファンなので、CPUファンや電源ユニット(ファンが入っている)を静かなものに交換すると良いです。

ケースも静音を売りにしているものもあるので、そういうものを選ぶと良さそうですね。

あとは上でも書きましたが、HDD(とくに3.5インチ)も騒音や熱を出すので極力SSD化します。

CPUについて

自作PCやBTOパソコンなどは自分でCPUを選べたり、後からでもCPUを交換できたりしますが、どういうものが良いのでしょうか?

CPU性能は高いに越したことはありませんが、現在のデスクトップPC用CPUなら一般的なDTM用途で力不足になることはほとんど無いので、録音メインで考えるなら静音化を優先したほうが良いと思います。

あまりコア数が多くてクロック周波数が高いと、それだけ発熱量も上がってファンがうるさくなりますので、必要な性能とのバランスを考えて、なるべく低発熱・低消費電力のものを選びましょう。

グラフィックボード(GPU)

グラフィックボード(GPU)は表示性能に影響しますが、これもあまり高性能なものは発熱源になってGPUファンがうるさくなります。

今はCPUに内蔵されているタイプ(以前はマザーボードに組み込まれていてオンボードグラフィックと呼ばれていた)のものでも、DTMや一般的な動画編集なら全く困らない性能になっています。

DTMをやるのと同じPCで3Dゲームや3Dグラフィックス制作などの作業をやることが無いのなら、コストと発熱を考慮して、CPU内蔵グラフィックスを使うか、ローエンドのファンレスのグラフィックボードを使用するのが正解なのではないでしょうか。

デスクトップPCのDTM向けカスタマイズをまとめると、闇雲に性能を求めるより低発熱のCPU・GPUを使って発熱を抑えたり(そうすることで冷却ファンの数を減らす)、ストレージをSSD化したり、電源ユニットやケースも騒音を出さないものを使う、というような低発熱化・静音化が優先事項ということです。

――今回は、DTMに適したPC環境の構築うテーマでPCのハードウェア面についてお話しましたが、次回はソフトウェア方面に話を広げていきたいと思います。

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