DAWによる音楽制作の基本【DTM・機材解説07】

だいぶ間が空いてしまいましたが、久々にDTM・機材解説の記事です。

今回から数回に渡って、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション=音楽制作ソフト)を使った音楽制作についてお話していきます。

まずは、前回の「DAW(音楽制作ソフト)について」の記事で、DAWの基本的な事や主要なDAWの紹介をしていますので、まだお読みになっていない方はご一読を。

DAW(音楽制作ソフト)について

DAW(音楽制作ソフト)について【DTM・機材解説06】
DTM・機材解説 第6回はDAW=音楽制作ソフトの解説です。DAWも色んなものが出ていますが、今回は代表的なDAWの紹介とDAWの選び方を解説します。

前回も書きましたが、現在のDAWは音楽制作に必要なものが全て揃っていて、どのDAWを選んでも出来ることに大差はありませんが、DAWの種類によって操作系や付加機能が違うので、作業効率に差が出ることもあります。

この連載では、どのDAWでも出来る基本的な機能を中心に解説します。

自分の音楽制作歴

自分のDAW使用歴は、前回「DAW(音楽制作ソフト)について」の記事内で書いていますが、DAWを使い始める以前から自宅での音楽制作はやっていました。

一番最初は、これが音楽制作と呼べるのかは謎ですが、楽器を始める前の1986年頃にパソコンでMML(BASIC上で動く音楽用プログラム言語)を使ってゲーム音楽などを打ち込んで、アレンジを変えたりして遊んでいたのが全ての始まりです。なにげに宅録より打ち込みのほうが先なんですよね~。

楽器を始めてからは、1989年頃に4chのカセットMTR(マルチ・トラック・レコーダー)を買って自宅録音=宅録を開始。

その後、1991年頃にフラメンコギターを始めてからは10年間ほどは、フラメンコギターの習得に集中していたので宅録による制作活動は休んでいましたが、2002年頃からまた曲を書き始めたので今度は8chのハードディスクMTRで宅録を再開しました。

そして2005年にPCを購入してからはDAWでの制作に切り替えて、2007年にはそれで作った自分のバンド「Galeria Rosada」のCDを出しています。

Galeria RosadaのCD販売はこちら

CD販売
フラメンコギタリスト=後藤晃のフラメンコ・ポップグループ「Galeria Rosada」のCDアルバム「Secrets of the world」を販売しています。

2008年頃からは他のアーティストの音源制作を手伝うようになり、レコーディングエンジニア的な仕事も請け負うようになりました。

当時のフラメンコ周辺業界には、自分のように自前でレコーディング・ミキシング・マスタリングまでやる人間が少なかったため、色んな方にお声かけ頂きましたが、この時期に集中的に勉強したおかげで、機材やソフトウェア(DAW含む)の知識や、音楽制作の技術・経験を得ることができました。

今はコロナ禍という事情もあって、動画制作と同様に、自宅での音源制作の需要も急激に増えていると思いますので、この大変な世の中で自分も何か役に立てれば、と考え、この「DTM・機材解説」シリーズ記事で自分の知識・技術を公開することにしました。

自分のDAWの用途

DAWの使い方は、その人の手掛ける音楽ジャンルや制作スタイルによって様々ですが、ここでは自分の用途・制作スタイルを基に解説していきます。

自分のDAWの用途ですが、DAWを触りはじめる以前にやっていたMTRでの制作を拡張した感じで、生楽器や歌の録音を中心に、打ち込み、ループ素材や録音素材の加工編集、ミキシング、マスタリング、最近では演奏動画の制作にも使っています。

自分はレコーディングと打ち込みの両方をやりますが、EDM系などの音楽をやっている人はレコーディングはやらなかったり、逆に生演奏系の人は打ち込みは一切やらなかったり。

自分の用途は、DAWの主要機能をまんべんなく使っていると思いますが、やはり生楽器奏者なので、どちらかというとレコーディングに力を入れていて、打ち込みは必要に応じて、という程度です。

なので、レコーディングに関しては力を入れて解説する予定ですが、打ち込みをバリバリやりたい人は、もっと専門的な本やサイトで勉強する事をお薦めします。

DAWでの作業フロー

では、DAWでの音楽制作の各手順について解説していきますが、自分の場合、大体以下のような手順になります。

  1. ベーストラック制作
  2. レコーディングと打ち込み
  3. テイク選定・素材編集
  4. 音作り・ミキシング
  5. マスタリング

こんな手順ですが、2.3.4.はやりながら行ったり来たりするので順不同になることも多く、だいたいのイメージということで。

では、1.から5.まで順を追って解説していきます。

ベーストラック制作

いわゆるプリプロダクションに当たる作業で、最初に曲のテンポやコードなどがわかるレコーディング用のカラオケを作ります。

リズムセクションはとりあえず出来合いのループ素材で良いし、それに簡単なコードバッキングを鍵盤かギターで重ねればok。

コードバッキングパートを打ち込みで作っておけば、アレンジ変更にも簡単に対応できます。

ただし、曲の内容やレコーディング手順によってはベーストラックを使わないほうが効率が良い場合もあって、例えばギターのソロ曲などは、ベーストラックは作らずに直接レコーディングしたりするし、ケースバイケースで柔軟に判断しましょう。

ちなみに、フラメンコ(歌入り)の場合は、コード進行やサイズがイレギュラーになりがちなので、打ち込みは使わずに、「クリック+ギターでの簡単な仮伴奏」という感じのベーストラックを作ることが多く、リブレ(自由リズム)の曲などは、ベーストラック的なものは一切使わず、歌とギターの同時一発録りが一番良かったりします。

レコーディングと打ち込み

レコーディングと打ち込みに関して、まずは基礎知識的なところをおさえておきましょう。

レコーディング

DAWの機能の一つにレコーディング機能があり、生楽器や歌の録音ができますが、オーディオインタフェースにコンデンサーマイクを接続して録音するのが最も高音質です。
録音した音はDAWにwavの波形(PCM録音)として記録され、素材として使用します。

自宅でのレコーディングについてこちらの記事で解説しました

宅録=ホームレコーディングの基本【DTM・機材解説08】
「DTM・機材解説」では前回、DAWを使った音源制作の基本的な流れを解説しました。これから個別のプロセスを詳しくみていきますが、今回はレコーディングについてです。

オーディオインタフェース、コンデンサーマイクについては、以下の記事で紹介していますので参考にしてください。

オーディオインターフェイスについて【DTM・機材解説01】
自分は録音エンジニア的な仕事もしていますが、これから企画の一つとして機材やソフトウェアの解説もしていきます。今回はオーディオ・インターフェイスについて。
コンデンサーマイクについて【DTM機材解説04】
DTM機材・ソフトウェア解説の第4回は、ホームレコーディングに使うコンデンサーマイクについてです。定番マイクや自分の使用マイクの解説もしています。

打ち込み(MIDIプログラム)

レコーディングは録音によって素材を作る作業でしたが、打ち込みは、MIDIと呼ばれる規格に添ってプログラムして、コンピューターに演奏させたものを素材とするやり方です。

MIDIプログラムの入力方法は、MIDIキーボードを繋いでクリックに合わせて演奏して入力する「リアルアイム入力」と、PCの画面上の操作で音を一つずつ置いていく「ステップ入力」の二種類に大別できますが、DAWによって、それぞれ工夫された入力方法が用意されています。

また、MIDIプログラムを再生するためには「MIDI音源」が必要です。
MIDI音源には、PC上で全て処理する「ソフトウェア音源」と外部機器による「ハードウェア音源」があり、それぞれ以下のような特徴があります。

ソフトウェア音源
PCのみで完結できて手軽だけど、CPUに負荷がかかってレイテンシー(モニター音の遅れ)が発生する

ハードウェア音源
外部機器を接続して同期をとらないといけないので少し面倒だけど、PCの負荷は少ない

WindowsにもMacにも、最初から付属しているソフトウェア音源あるので、それで最低限の事はできますが、より本格的な打ち込みをしたい場合は、別途音源を用意したほうが良いでしょう。

打ち込みは最初にプログラムの手間がかかりますが、一度打ち込んでしまえば、アレンジ変更・テンポ変更・移調などが簡単に出来るのが最大の利点で、先ほど解説したベーストラックをMIDIで作っておくと融通が効いて大変便利です。

レコーディング・打ち込みの作業内容

基礎知識の解説が少し長くなりましたが、「レコーディングと打ち込み」の作業内容としては、必要な素材をレコーディングと打ち込みで作っていきます。

歌が入る場合は、まず最初にベーストラックをモニターしながら仮歌を録って、それに合わせてアレンジを考えつつ、録音と打ち込みを進めるのが良いでしょう。

ちゃんとしたアレンジのバッキングとリズムセクションを作ったら、ベーストラックはもう不要なのでミュートします。

最後に、本歌とソロパートを録りますが、そこは時間をかけて良いテイクを録りたいところですよね。

テイク選定・編集

レコーディングが完了したら、レコーディングした音のうち、どのテイクを採用するか選定したり、各パートのタイミングを揃えたり、録音レベルの不揃いを修正したり、ノイズを消したり、打ち込みを追加して細かいアレンジを作り込んだり、といった細かい作業をやって曲を仕上げていきます。

ただし、素材編集は制作するものの内容によって大幅に作業内容が変わります。

例えば、自分がYouTubeにアップしている演奏動画のようなものだと、タイミングや音圧音量を弄ってしまうと映像を重ねた時に不自然になるので、録音物の編集に時間をかけるより、一発で良いテイクが録れるまで練習とリトライを繰り返したほうが良かったりしますので。

このように、どういう作業内容になるかは、作るものによって異なってきますが、ここの作業が雑だと、クオリティーの高い音源はできません。

ミキシング

レコーディングと打ち込みで全てのパート素材が揃って、編集で整えたら、ミキシングをして曲をステレオ2chのトラックにまとめます。

ミキシングというと、ライブなんかでミキサーのフェーダーを弄って、各パートの音量バランスをとる作業というイメージだと思うし、それも間違えではありませんが、音楽制作時のミキシングはもっと多岐に渡る作業になります。大体以下のような作業内容です。

  • 各パートの音量バランス調整
  • 各パートのPANの調整
  • オートメーション(自動音量調整)を書き込んで各パート内の音量を調整
  • EQで各パートの音質調整
  • コンプレッサーで各パートの音圧調整
  • 空間系エフェクトで各パートの奥行きと残響の調整
  • その他のエフェクトの選定と調整

こういった作業をして、パートごとの周波数(音の高さ)の被りを極力減らして、一番音量の高いところがクリッピングしないようなバランスで音量を調整します。

また、音量が突出した部分があると、そこがすぐクリッピングしてしまって、全体の音量が稼げなくなるので、オートメーション(自動音量調整)を書いて、音量が突出したところを削り、逆に聴こえにくいところを持ち上げます。
細かい事ですが、この作業をちゃんとやらないと次のマスタリングの作業に支障が出ますので。

マスタリング

マスタリングは、ミキシングでステレオ2chにまとめられた音源に最終的な処理をして音源を完成させる作業です。

具体的には、マルチバンドコンプレッサーやEQを使って全体の音圧を調整したり、出すぎている周波数帯を削ったりして、聴きやすく、前に出るようなサウンドにします。

同様の作業を、ミキシングの時はパートごとにやりましたが、マスタリングはミキシング後の全体のサウンドに対して施すわけですね。

以前はマスタリングは素人では無理と言われていましたが、今はマスタリング用のプラグインが進化していて、そういうプラグインを最初からマスタートラックに入れておけば、ミキシングと一体で作業できます。

以前は何十回も再生しながら、クリッピングぎりぎりのところに音量を調整する作業をやっていたものですが、現在は自動で圧縮具合とレベル調整をしてくれるマスタリング用プラグインがあるので、物凄く楽になりました。

ミキシング・マスタリングのためには、なるべく良いモニター環境が必要ですので、モニタースピーカーやヘッドホンの選び方も重要になってきます。以下の記事も参考にしてください。

モニタースピーカーについて【DTM・機材解説03】
DTM・機材解説シリーズ第3回は、モニタースピーカーについてです。自分も使っている非常にコストパフォーマンスに優れたスピーカーの紹介もしています。
モニターヘッドホンについて【DTM・機材解説02】
一年ぶりくらいですが機材の解説記事です。今回はモニターヘッドホンについて。自分も使用しているMDR-CD900ST、CPH7000、ATH-M40xのレビューも。

――以上、今回はDAWでの音楽制作の手順を駆け足で解説しましたが、大体の全体像は掴めたのではないでしょうか?

次回から、個別の作業を詳細に解説しようと思いますので、お楽しみに!

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