また1か月ほど空いてしましましたが、今回のYouTubeファルセータ動画は、ティエントをお届けします!
今回、2つのファルセータを弾いています。この2つを選んだポイントは、ティエントらしさがよく出ていると思うからです。
ティエントの特徴は少し前に「フラメンコ音楽論」でやりましたので、そちらも参考にしてください。
ティエントらしいファルセータを選定
ティエントのファルセータは、踊り伴奏用のものだと粘りの無い均等なテンポで弾くように作られているものが多いですが、今回弾いたものは粘って弾いても良さそうな部分が沢山あるので「ティエントらしいなぁ」と思って選びました。
ティエントは踊りが入る場合とそうでない場合でテンポが全く違うので、ファルセータも踊り伴奏用と歌伴奏用にきっちり分かれる傾向がありますが、今回の2つのファルセータは弾きかた次第でどちらのテンポにも対応できる汎用性の高いものです。
ちなみに、両ファルセータともに元々は歌伴奏の速さのもので、オリジナルはもっとテンポが速かったんですが、今回は踊り伴奏に寄せて歌伴奏・踊り伴奏どちらにも転べるような中間テンポに設定しました。
ですので、細かい部分は踊り伴奏でも使いやすいような音型にアレンジして演奏しています。
以下、個別に解説いたします。
1つ目のファルセータ【エル・ボラ】
1つ目のファルセータは1996年頃、スペインでエル・ボラ(Agustin Carbonell “Bola”)に教わりました。
当時、ティエントのファルセータをあまり持っていなかったので、レッスンの時に「ティエントありますか?」って言ってみたら、その場でいくつか教えてくれたものの1つです。
このファルセータはエル・ボラも「パラ・サリーダ」って言ってたしイントロ向けのもので、なんというか「まさに、ティエント!」という感じの出だしですよね。
古風なフィーリングの中に、少しだけモダンな音使いが入っていて(G9のところとか)、好きなバランスです。
ただ、ボラ本人の作なのかは謎です。
ボラの作な感じもしますが、どこかできいたことがある気もするし、誰かの有名フレーズをアレンジして弾いてるのかもしれないですね。
2つ目のファルセータ【カニサーレス】
2つ目のファルセータは、ファン・マヌエル・カニサーレス(Juan Manuel Cañizales)氏の昔のファルセータです。
1991年のヘスス・エレディア(Jesus Heredia)という歌い手のCDの伴奏で弾いているものを耳コピーしました。コピーしたのは1993年頃と思います。26年前かー。
当時はフラメンコを始めて1、2年の頃で、今と比べると桁違いに情報が少なかったし、手探りでモデルノ系フラメンコギターの複雑なリズムやコードを一音一音拾っていました。
コードフォームもどうやって押さえているのか謎だったし、数十秒のファルセータをコピーするのに数日かかったりしていて。
このファルセータも、かなり挑戦的な音使いをしていることもあって、採譜が大変だった記憶があります。
動画の演奏は、ボラのものより一段と踊り伴奏の弾き方に寄せています。
1993年当時の日本のフラメンコギター事情
記事を書いていて、このファルセータをコピーしていた1993年当時の事を思い出したので、少しお話させてください。
1993年当時は、日本で耳にするフラメンコギターは、ほとんどがパコ・デ・ルシア以前の世代のもので、それより新しいものは日本では教わることもできませんでした。
トマティート、ビセンテ・アミーゴ、モライート・チコあたりは多少の情報は得られましたが、カニサーレスやボラなどに関しては情報が皆無で、CDの音源を自分で耳コピーするしかなかった状況です。
でも自分は「誰も弾いていないし、もしも、そのコンパス感や音使いが身に付けることができれば、凄く価値が高いものだろうな」と思い、せっせと耳コピーしていました。
当時は情報の絶対量が少なかったので、入手できる音源で気に入ったものがあれば、片っぱしから耳コピーしていましたが、その経験が自分のギタリストとしての基礎を形作っているんだと思います。
当時コピーして、未だに弾いているファルセータは数少ないんですが、この2つのファルセータは20年以上経過しても、未だによく弾くお気に入りのものです!
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