フラメンコギターの演奏動画はこれが今年最初になりますが、今回はアレグリアスのシレンシオを演奏します。
シレンシオについて
シレンシオはアレグリアスの踊りの中で入るゆっくりしたパートで(シレンシオが無い構成の踊りもあります)、通常は歌やサパテアードは入らず、ギターのファルセータで演奏されます。
アレグリアスは普通はメジャーキーですがシレンシオの部分は同主調のマイナーキーに転調して演奏され、テンポはソレアと同じくらい(ソレア同様に60BPMから120BPMくらいとかなり幅がある)です。
サイズは4コンパスから10コンパスくらいの範囲ですが、今回演奏しているのはスタンダードな6コンパスのサイズです。
また、伝統的なシレンシオのファルセータはコード進行もほぼ決まっていて、いわゆるマイナー3コード(EマイナーキーならEm・Am・B7)で構成されていますが、今回のファルセータは少し凝った展開をします。
こちらの記事でシレンシオについてもう少し詳しく解説していますので、参考にしてください。
今回のファルセータについて【ホセ・ルイス・モントン】
今回演奏しているのは、バルセロナのギタリスト、ホセ・ルイス・モントン(Jose Luis Monton)作のファルセータのアレンジです。
元ネタのファルセータは、ホセ・ルイス・モントンの1998年のアルバム『Aroma』に収録されている「Me Sabe a Mar」という曲のイントロに使われていますが、その録音でのアレンジでは、シレンシオのファルセータのバックにアレグリアスのテンポ(シレンシオの2倍速)でパルマが入っていて、途中から徐々に普通のアレグリアスに移行していく仕掛けになっています。
ちなみに、このファルセータは他のギタリストも踊り伴奏ネタとして使っている人が多く、自分が最初にコピーしたのもベレン・マジャ(Belen Maya)の伴奏ギタリストが弾いていたものでした。
ですので、今回の演奏はホセ・ルイス・モントンのCDバージョンと、ベレン・マジャ伴奏バージョンがミックスされていて、しかも自分が長年演奏しているうちに変化していったものなので、元ネタとはかなり異なっていると思います。
屈指の名ファルセータ
自分はかれこれ20年くらいこのファルセータを弾いていますが、今までおぼえたシレンシオのファルセータの中でも一番好きなものです。
ホセ・ルイス・モントンの作曲センスは本当に素晴らしいのですが、とくにこのシレンシオの6コンパスには彼のギターの魅力が凝縮された完璧な構成になっていて、フラメンコギターの歴史の中でも屈指の名ファルセータだと思います。
コード進行について
このファルセータのコード進行ですが、伴奏用のシレンシオとしては凝っていて、ギタリスト複数人で伴奏する場合はギタリスト同士で打ち合わせが必要になるパターンかと。
キーとサイズはスタンダードなもので、Eマイナーキーの6コンパスです。
序盤3コンパスはマイナー3コードで作られていますが、テンションノートが多用されていたり、所々B7の代わりにAmが使われていたり、B7の前置きとしてCM7が登場したりします。
中盤の4コンパス目がイレギュラーな展開で、F♯ハーフディミニッシュを上手く使って最後FM9に行っていますが、このFM9はEマイナーキーから転調無しと考えると♭ⅡM9にあたり、いわゆるナポリコードです。
メロディーをナポリコードに終止させる作り方はややイレギュラーと思いますが、意味深な余韻を残す感じで良いですよね。
5コンパス目からは普通の展開に戻りますが、部分的にEメジャーキーになっています。
コード進行としてはこんな感じですが、このファルセータは通常のシレンシオのフレージングからリズムをずらして作ってあって、その結果、コードの変わり目もズレているところが曲者だと思います。
コメント