スポンサーリンク

フラメンコ音楽論08~フラメンコギターで特徴的なコードボイシング

前回、フラメンコのリズム形式の概要をやりました。

今回から個別形式解説に入る予定でしたが

少し下書きをしたところ、一つの記事が膨大な量になってしまい

予定を変更することにしました。

スポンサーリンク

今回はフラメンコギターの特殊なコードの話です

前々回までコードやスケールの話をしていましたが

下書きの結果、コード関係の話が各形式解説の3割ほどを占めています。
しかも同じ調の形式では話が被ったりしているので

まずコード関係の話を調性ごとにまとめてやっておこうと思います。

今回はフラメンコギターのコードボイシング(和音の構成)の話が中心になりますが

前々回までにやったことを踏まえつつ

フラメンコ的なコードボイシングについて解説しようと思います。

 

フラメンコ独特の特殊コードは

ポルアリーバ、ポルメディオ、ポルタラント

といった『ミの旋法』系の調性に集中しています。

メジャーキー、マイナーキーでは特殊コードの使用は比較的少ないですが

例えばCメジャー・Aマイナーの形式の中で

平行調ポルアリーバの特殊コードが登場してくる場合はあります。

以下にフラメンコギターでよく使われる

特徴的なコードボイシングの例を列挙していきます。

ここでは、add9コード、sus4コード、一般的なテンションコードなど

一般音楽でも多用されるものは省きます。

スポンサーリンク

半音ぶつかり・異弦同音系のボイシング

『ミの旋法』 のをやったときに

半音ぶつかり系のフラメンコ音楽独特のテンションノート使いがあることに触れました。

フラメンコギターでは

使用可能であれば積極的にストレッチフォームや開放弦利用をして

半音ぶつかりや異弦同音を作りにいきます。

ギターの特性をいかした微妙な響きになります。

そしてそれはフラメンコ音楽の一つの重要な個性となっています。

ポルアリーバの半音ぶつかり・異弦同音コード

E7(b9)~半音ぶつかりを得るためにわざわざハイポジションやストレッチコードフォームと開放弦を使い

異弦同音も絡めたりします

Eb9e7b9e7b92

FM7~開放弦を絡めて2弦6フレットFと1弦開放Eの半音ぶつかり

FM7

F(#11)~解放弦を使って#11とP5のぶつかりを作ります

F#11

F(#9,#11)またはFm系コード~上のコードのG#音入りのもの

bIIコード上でIスパニッシュスケールのM3音(この場合G#音)が鳴ると

bII7(#9)もしくはbIIm7,bIImM7といったコードが考えられ

F7系ではなくFm系コードととらえることもできます。

これに関しては後で少し補足します。

F#9#11Fm

CM7(onE)~Em系コードの変化っぽいんですがm6、b13を含みます。

この音はマイナーコードではコードトーンにもテンションにもならない音です。

なので転回形のコードとしてとらえたほうがいいと思います。

そう考えるとコードネームはCM7(onE)になります。

こういう六度絡みの半音ぶつかりコードがモデルノ系では常用されますが

大抵ベース音はルートではないです。

これ以外も同様の転回形コードがいくつか出てきます。

CM7onE1CM7onE2

FM7(onA)~ストレッチによる半音ぶつかりコードです。

感覚的にAmのバリエーションとして演奏されてると思いますが

F音が含まれていて、Aからみるとm6、b13にあたります。

上のCM7(onE)と同様ですね。

コード理論的にはFM7(onA)ということになると思います。

FM7onA

G7(11,13)~M3と11の半音ぶつかり

G13

F7(onG#)~これは経過的にしか使われませんが

フラメンコ的慣用句でFコードの一部をおさえたままベースラインをつけていくテクニックがあり

そのなかでG#音とA音の半音ぶつかりを強調することがあります。

コード理論的にはF7(#9)でベース音が#9とM3の半音ぶつかりになる、

という無茶なことになりますが

EスパニッシュのM3をF上でベースラインに使用した結果こうなっているもので

テンションコードというよりは、クリシェに近いと思います。

FonG#

ポルメディオの半音ぶつかり・異弦同音コード

A(onBb)~b9をベースに持ってきてルートと半音でぶつけるという、

普通の音楽ではやってはいけないボイシングなんですが

フラメンコではストレッチしてまでこの形を使ったりします。

ポルアリーバのE(b9)と同様に異弦同音も絡めたりします。

Iコードはとくに微妙な響きにこだわります。

Ab9Ab9-4Ab9-2

BbベースではないけどA7(b9)系コードボイシングでこういうのもあります

Ab9-3

A(b9,b13)~5弦開放でルートを鳴らしながら3フレット半セーハ(1弦は開けて開放)でやる形。

1弦は5fでもok。

Ab9b13

Bb7(#9,13)~低音弦で#9のC#音とM3のD音をぶつけたりします。

一般のコードボイシングではNGですが、フラメンコギターでやるとかっこいいです。

Bb7#913

Bb7(onC#)~上で紹介したF(onG#)のポルメディオ版です。

こちらはおさえかたが特殊で5弦4フレットを中指を交差させておさえます。

BbonC#

ポルタラントの半音ぶつかり・異弦同音コード

F#(b9,#11)~タラント・タランタの基本ルートコードです。

1~3弦を開放弦にしてテンションノートを出します。
どちらも半音ぶつかりを含みます。
F#7-1F#7-2

 

F#7系はいろいろバリエーションがあって

開放弦を絡めて半音ぶつかりを作ります。

F#7-3F#7-4

 

GM7(13)~解放を使ってM7とルートを半音ぶつかりにします。
1弦まで出すとメジャー13thコードになります。
GM13

 

GM7(onB)~Bmの三弦を開放弦にしたものです。

上のポルアリーバで紹介したFM7(onA)の転調版です。

感覚的にはBmのバリエーションとして演奏されてると思うんですが

三弦開放G音はBbからみると、m6、b13にあたります。

コード理論的にはGM7(onB)ということになると思います。

GM7onB

DM7(onF#) ~上のポルアリーバで紹介したFM7(onA)のオープンコード版です。

F#m系のコードの変化に思えますが

D音を含むのでコード理論的にはDM7(onF#)です。

DM7

Eメジャーの半音ぶつかり・異弦同音コード

EM7~1弦開放と2弦4fの半音ぶつかり。ルートコードでよく使うボイシング。
EM7

 

A7(#11)~ビセンテ・アミーゴなんかが多用します。
#11とP5の半音ぶつかりコード
A7#11

 

G#7(b9)~G#コードに5弦解放を絡めたもの。ルートとb9の半音ぶつかり。

EメジャーのIII7またはEメジャー平行調のG#スパニッシュのIとして使用されます。

G#7b9

Eメジャー、Aメジャーなどの半音ぶつかり・異弦同音コード

C#7(b9)~C#コードの4弦解放を絡めたものです。

ルートとb9の半音ぶつかりです。

EメジャーのVI7、AメジャーのIII7

Aメジャー平行調のC#スパニッシュのIとして使用されます。

C#7b9

高音弦を解放にしたテンション・異弦同音コード

フラメンコギターでは普通のコードを弾くときも

高音弦の解放音(1弦=E、2弦=B、3弦=G)を絡めて
テンション・異弦同音コードにすることがあります。

 

ポルアリーバ、ポルタラント、Gメジャーとその平行調であれば
1弦、2弦、3弦が使用可能
 
ポルメディオとその平行調であれば
1弦、3弦が使用可能
 
Eメジャー、Aメジャーとその平行調であれば
1弦、2弦が使用可能
 
フラメンコで使われる調性はこういったことが考慮されて設定されています。

半音単位の対応はカポタストで、ということです。

ーーーこのあたりがよく使う半音ぶつかり・異弦同音系コードですが、

これらに限らずフラメンコギターではコード単体の微妙な響きを重視します。

スポンサーリンク

その他のフラメンコで使う特殊なコード

半音ぶつかり・異弦同音系以外でもフラメンコでは特徴的なコードを使います。

伝統的なフラメンコギターには慣用句的な特殊定型コードがありますが

モデルノ系でも習慣的によく使われる特殊なコードがあります。

スタンダードなものをあげていきます。

こちらも調性ごとにまとめます。

ポルアリーバ

F7(b5)~Eへの進行で使います。b5の音は#11と考えることもできますね。

Fb5

Fm,Fm7,FmM7~Fm系コードはEスパニッシュに含まれるG#音(=Ab)を

Fコード上で使った結果です。

G#音を#9にとれば上でやったF7(#9)ですが

フレージングやボイシング、前後の流れで解釈が変わってきます。

ポルメディオ

A7(onG)~普段使いコードとして多用します。

ラスゲアードなどで6弦も一緒に鳴らしたとき

開放のE音より7thであるG音のほうが音がしまって聴こえるためです。

A7onG

Bb6(onG)~これも上と同じで

6弦まで鳴らした時の響きで選択されてると思います。

BbからみるとG音は6thなので

Gm7としたほうがコード理論的にはスッキリしますが

bIIとして使われてる感じが強いのでBb6(onG)としました。
1fのBbコードを押さえた状態から中指でベースのG音を押さえます。

Bb6onG

Bb9~1fで押さえます。モデルノ系の常套句です

Bb9

Bb7(onAb),Bb7(b5)(onAb)~Aに行くときによく使う7度ベースの形

Bb7onAbBb7b5onAb

C#~これ、モデルノ系でよく出てくるんですが、

C#コードをBb7代理のような形で使うことがあります。

コードネームはBb7(#9)のほうがいいかもしれません。

C#

ポルタラント

Gm~オープンGから3度の音を半音下げたものです。

スパニッシュスケールのM3音がbII上で使われたものです。

Gm

スポンサーリンク

フラメンコ式ドミナントモーション

コードトーン的には普通ですが

フラメンコギターではドミナントモーションをかけるときに

三度、五度、七度がベース音になった7thコードを多用します。

3度、5度がベースになる場合

例えばD7→Gの進行を弾くとき

オープンGにいく場合は三度ベースのD7(onF#)から
3fのセーハのGに行くときは3fセーハのまま五度ベースのD7(onA)から入ります

この形は1弦まで鳴らすとD11になります。

D11

7度がベースになる場合

ミの旋法上でbVIIm7→Iの上行解決パターンに

七度がベースになったbII7が挟まることが多いです。

ポルアリーバの場合
Dm7からベースを半音上げてF7(onEb)

F7onEb

1f半セーハのF7(onEb)もありますが

これは普通の形ですよね。

ポルメディオの場合
Gm7からベースを半音上げてBb7(onAb)

この形は1弦まで鳴らすとBb13になります。

Bb13onAb

ポルタラントの場合

Em7からベースを半音上げてG7(onF)

ポルメディオと同じ形ですが3フレット下にズレてセーハではなくオープンコードになります

G13onF

こういったコードを作ってベース音を半音上行させてIに持っていきます。

スポンサーリンク

sus2コード=add9(omit3)

呼び名はadd9(omit3)でもいいです。

とくにポルメディオで多用されます。

3度の音が2度の音に変化したもので

ロックなどで使ういわゆるパワーコードに9thが入ったものです。
敢えて調性感を弱くして硬質な響きにしたいときにやります。

例 Csus2

Csus2

ーーーー以上、フラメンコで多用される特殊コードについて
思いつく範囲で書きましたが、まだまだあると思いますので、
必要に応じて加筆するか、個別形式解説で補足しようと思います。

 

スポンサーリンク

関連リンク

フラメンコ音楽論07~フラメンコのリズム形式

コメント