前回はファンダンゴ系の基本形式としてファンダンゴ・デ・ウエルバをやりました。
今回は歌としてはファンダンゴ系から一旦外れますが、ファンダンゴ・デ・ウエルバに類似したコンパスをもつ『セビジャーナス』をご紹介します。
セビジャーナス形式概要
単数形 Sevillana
複数形 Sevillanas
ファンダンゴ・デ・ウエルバなどにも言えることですが、セビジャーナスは厳密にはフラメンコではありません。
セビージャのフェリア(春祭り)のときに歌ったり踊ったりされる民謡・民俗舞踊です。
よく盆踊りに例えられますが、セビージャではそんな感じで大衆的なものです。
セビジャーナスの歌のサイズは決まっていて、踊りの振りもほぼ決まっています。
そのため、共通化しやすく教えやすい、ということでフラメンコ入門用形式として定着しています。
歌は現在も新曲がどんどん出てくるし、基本様式さええ守っていれば自由に作れるので、キーやコード進行は何でもありです。
踊りに関しては基本的にみんなが踊れるように作ってあるので、難しい技巧もなく初心者に適していますが、音楽面では結構難解だったりします。
セビジャーナスのコンパス
ベースリズムはファンダンゴ・デ・ウエルバと同様です。
ファンダンゴ・デ・ウエルバのコンパスと同様、1からのカウントで6拍子で書きます。
通常コンパス
① 2 3 ④ 5 6
締めの入るコンパス
① 2 3 ④ ⑤ 6
5拍目が締めくくりです。
ファンダンゴ・デ・ウエルバとのコンパス的な違いですが、セビジャーナスの場合『12拍サイクルという感覚はなく完全に6拍単位で構成されている』ということがあげられます。
テンポは歌やアレンジによってまちまちですが、概ね130~200BPMくらいです。
セビジャーナスのフレージング
フレージングもファンダンゴ・デ・ウエルバと同様です。
ベースリズムは3拍子ですが、2拍単位のフレージングを多用します。
歌の入り方も前のコンパスから1~2拍食って入るものが多いです。
コンパス ① 2 3 ④ 5 6
フレーズ ① 2 ③ 4 ⑤ 6
コードの変わり目は1拍目に次いで3拍目が多く、それもファンダンゴ・デ・ウエルバと同様です。
セビジャーナスの基本構成
セビジャーナスは構成が完全に決まっています。
セビジャーナスの歌は1つの歌が3セクション構成になっています。
A→A→A’
または
A→A→B
となります。
通常、連続して4つの歌が歌われます。
同じ歌で歌詞が変わる場合もあるし、違う歌が歌われる場合もあります。
これは事前に歌い手と伴奏者で打ち合わせておきます。
今は4番までが一般的ですが、昔は6番まであったようです。
前奏・間奏・最後のしめくくり
一般的なフラメンコ形式のマルカールにあたる前奏・間奏部分ですが、歌の小休止に入る短い間奏部分をパソ・デ・セビジャーナといいます。
前奏とパソ・デ・セビジャーナの部分は6拍1単位で下記のようなパターンで演奏します。
メジャー・マイナーキー
Ⅴ7→ⅠまたはⅠm
ミの旋法
♭Ⅱ→Ⅰ
コードは3拍目で変わるのがミソです。
前奏もパソ・デ・セビジャーナと同じ弾き方ですが出だしが2パターンあります。
- コンパスの頭から入る場合
- 3拍食って入る場合
3拍食うのはそこでギターがテンポを出して、伴奏者全員でコンパスの頭から入るための仕掛けです。
そして最後のしめくくりですが、4拍目の頭という普通の音楽からすると中途半端に思えるところで止まります。
フラメンコをずっとやっていると体に入って憶えてしまうんですが、最初は前触れもなく急に終わる感じがして違和感があるかもしれません。
セビジャーナスの構成詳細
1コンパス=6拍で書きます
- 前奏
パソ・デ・セビジャーナと同じ弾きかた。
4か1から入ってコンパス数は状況によって変わる。 - 歌のサリーダ
2コンパス。Aメロ後半部分が歌われる - パソ・デ・セビジャーナ
1コンパス - Aメロ
5コンパス - パソ・デ・セビジャーナ
1コンパス - Aメロ
5コンパス - パソ・デ・セビジャーナ
1コンパス - Bメロ(A’の場合もある)
5コンパス(5コンパス目の4拍目で止まる)
以上を4回繰り返す。
――こんな構成です。
前奏は6拍単位で伸縮しますが、サリーダが入ったら後は固定サイズです。
フラメンコをやっていると展開を丸々記憶してしまうんですが、一般的音楽からするとかなりイレギュラーな構成ですよね。
歌が無い場合のセビジャーナス伴奏
余談になりますが、自分がフラメンコやりはじめのころ、たまに歌無しでセビジャーナスの踊り伴奏をやることがあったんですが、よくサイズが分からなくなってました。
歌無しでやる場合、ブレリアとかソレアのほうが、歌(が入ってるとおぼしきところ)とかジャマーダとか分かりやすいので楽だった記憶があります。
歌が無い場合は、セビジャーナスサイズで作ってある分かりやすいファルセータで伴奏するほうがいいかもしれません。
――次回はまたファンダンゴに戻って、ファンダンゴ・アバンドラオをやりたいと思います!
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