セビジャーナス(Sevillanas)【フラメンコ音楽論20】

フラメンコ音楽論では前回、3拍子系の基本形式としてファンダンゴ・デ・ウエルバをやりました。

今回は歌としてはファンダンゴ系から一旦外れますが、ファンダンゴ・デ・ウエルバに類似したコンパスをもつセビジャーナスをご紹介します。

セビジャーナスは踊りを習うと最初に教わる初心者向けの曲種として定着していますが、そのリズムはファンダンゴ・デ・ウエルバと同様に難解な面もある形式です。

セビジャーナス形式概要

単数形:Sevillana
複数形:
Sevillanas
テンポ:
130BPMから200BPM

セビジャーナスは、セビージャのフェリア(春祭り)のときに歌ったり踊ったりされる民謡・民俗舞踊で、厳密にはフラメンコではありません(ファンダンゴ・デ・ウエルバなどにも言えることです)。

よく盆踊りに例えられますが、セビージャではそんな感じで大衆的なものです。

セビジャーナスの歌のサイズは決まっていて、踊りの振りもほぼ決まっています。

そのため、共通化しやすく教えやすい、ということでフラメンコ入門用形式として定着しています。

踊りに関しては、基本的にみんなが踊れるように作ってあるので、難しい技巧もなく初心者に適していますが、音楽面では結構難解だったりします。

歌に関しては、現在も毎年新曲が出てくるし、基本様式さえ守っていれば自由に作れるので、キーやコード進行は何でもありの形式です。

セビジャーナスのコンパス

セビジャーナスのリズムパターンはファンダンゴ・デ・ウエルバと同様のものです。

下にリズムパターンを図示しますが、ファンダンゴ・デ・ウエルバのコンパスと同様、1からのカウントで6拍子で書きます。○が付いた数字がアクセント拍です。

通常コンパス
① 2 3 ④ 5 6

締めくくりのコンパス(5拍目が締めくくり)
① 2 3 ④ ⑤ 6

ファンダンゴ・デ・ウエルバとのコンパス的な違いですが、セビジャーナスの場合、12拍サイクルという感覚は希薄で完全に6拍単位で構成されている、ということがあげられます。

テンポは歌やアレンジによってまちまちですが、概ね130BPMから200BPMくらいです。

セビジャーナスのフレージング

セビジャーナスはフレージングもファンダンゴ・デ・ウエルバと同様です。

つまり、ベースリズムは3拍子ですが、2拍単位のフレージングを多用するという特徴があります。下に図示します。

コンパス ① 2 3 ④ 5 6
フレーズ ① 2 ③ 4 ⑤ 6

コードの変わり目は1拍目に次いで3拍目が多く、それもファンダンゴ・デ・ウエルバと同様です。

歌の入り方は、前のコンパスから1、2拍食って入るものが多いです。

セビジャーナスの構成

セビジャーナスは構成が完全に決まっています。

セビジャーナスの歌は1つの歌が3セクション構成になっていて、以下の2つのいずれかになります。

  1. A→A→A’
  2. A→A→B

通常、連続して4つの歌が歌われます。

ちなみに、今は4番までが一般的ですが、昔は6番まであったようです。

1番から4番で同じ歌で歌詞が変わる場合もあるし、違う歌が歌われる場合もあるので、事前に歌い手と伴奏者で打ち合わせておきます。

以下に、一般的なセビジャーナスの構成を書いてみます。1コンパス=6拍。用語は後述します。

  1. 前奏
    パソ・デ・セビジャーナと同じ弾きかた。4か1から入ってコンパス数は状況によって変わる
  2. 歌のサリーダ
    2コンパス。Aメロ後半部分が歌われる
  3. 間奏(パソ・デ・セビジャーナ)
    1コンパス
  4. Aメロ
    5コンパス
  5. 間奏(パソ・デ・セビジャーナ)
    1コンパス
  6. Aメロ
    5コンパス
  7. 間奏(パソ・デ・セビジャーナ)
    1コンパス
  8. Bメロ(A’の場合もある)
    5コンパス(5コンパス目の4拍目で止まる)
  9. 1.から8.をを4回繰り返す

このような構成になっています。

前奏は6拍単位で伸縮しますが、サリーダが入ったら後は固定サイズです。

フラメンコをやっていると展開を丸々記憶してしまうんですが、一般的音楽からするとかなりイレギュラーな構成ですよね。

パソ・デ・セビジャーナ(間奏)

一般的なフラメンコ形式のマルカールにあたるセビジャーナスの前奏・間奏部分ですが、歌の小休止に入る短い間奏部分を「パソ・デ・セビジャーナ」といいます。

パソ・デ・セビジャーナのサイズは6拍で、下記のようなパターンで演奏します。

メジャー・マイナーキー
Ⅴ7→Ⅰ(Ⅰm)

ミの旋法
♭Ⅱ→Ⅰ

例によって、コードは1拍目と3拍目(普通の3拍子より1拍早い)で変わるのがミソです。

前奏について

前奏は、基本的にはパソ・デ・セビジャーナと同じ弾き方で必要な長さだけ繰り返して歌が入るのを待ちますが、前奏の出だしには以下の2パターンがあります。

  • コンパスの頭から入る場合
  • 3拍食って入る場合

3拍食うのはそこでギターがテンポを出して、伴奏者全員でコンパスの頭から入るための仕掛けです。

ラストの締めくくりについて

最後のしめくくりですが、4拍目の頭という普通の音楽からすると中途半端に思えるところで止まります。

フラメンコをずっとやっていると体に入って憶えてしまうんですが、最初は前触れもなく急に終わる感じがして違和感があるかもしれません。

歌が無い場合のセビジャーナス伴奏

余談になりますが、自分がフラメンコやりはじめのころ、たまに歌無しでセビジャーナスの踊り伴奏をやることがあったんですが、よくサイズが分からなくなっていました。

歌無しでやる場合、ブレリアとかソレアのほうが、歌(が入ってるとおぼしき所)とかジャマーダなどの展開が分かりやすいので楽だった記憶があります。

セビジャーナスで歌がいない場合は、歌のメロディーをギターで弾くようにアレンジしたり、セビジャーナスサイズで作ってあるファルセータで伴奏するほうが良いかもしれません。

――次回はまたファンダンゴに戻って、ファンダンゴ・アバンドラオをやりたいと思います!

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