ファンダンゴ・アバンドラオ(Fandangos Abandolaos)【フラメンコ音楽論21】

フラメンコ音楽論では、前回までにフラメンコの3拍子形式としてファンダンゴ・デ・ウエルバセビジャーナスに使用されているウエルバ系のコンパスを学習しましたが、ファンダンゴ系にはもうひとつ代表的なリズムパターンがあります。

それが、今回取り上げるファンダンゴ・アバンドラオと呼ばれるものです。

ファンダンゴ・アバンドラオの概要

単数形:Fandango Abandolao(このカテゴリーの総称。形式名は個別に付く)
複数形:
Fandangos Abandolaos(カテゴリーの総称。形式名は個別に付く)
主な調性:
ポルアリーバ(Eスパニッシュ調)
テンポ:
85BPMから130BPM

ウエルバ系のファンダンゴがアンダルシア西部で発展したのに対して、アバンドラオ系のファンダンゴは、マラガ、ロンダ、コルドバ、グラナダなどのアンダルシア中部から東部地域で発展してきました。

具体的な形式としてはベルディアーレス(マラガ)やロンデーニャ(ロンダ)などです。

アバンドラオのコンパスで演奏されるファタンゴ曲種を総称して「ファンダンゴ・アバンドラオ」と呼びます。

また、12拍子系として解説しましたが、ハレオスロマンセなどの歌もこのコンパスで演奏されることがあります。

アバンドラオのリズムの特徴

ファンダンゴ・アバンドラオのリズムパターンは、ファンダンゴ・デ・ウエルバを遅回しでやったような感じですが、コンパスの頭を強く出すことが多いので、ファンダンゴ・デ・ウエルバやブレリア系より分かりやすいビートです。

ギターは勇壮に掻き鳴らすスタイルで演奏されます。

そのため、フラメンコの「情熱」というイメージにマッチするのか、日本でフラメンコというと、このリズムがイメージされる場合も多いです。

3拍子の「じゃんじゃか、じゃんじゃか、じゃんじゃん」ていうやつですね。

アバンドラオの拍のとりかた

ファンダンゴ・アバンドラオのコンパスは、普通に頭にアクセントがついた3拍子でとれます。

テンポは85BPMから130BPMくらいです。

ウエルバ系より分かりやすい3拍子で、フレージングやコードの変わり目も3拍で区切れるものが多いです。

ただし、ブレリアのコンパスとミックスされたりするので、それは頭に入れておいたほうが良いです。次に解説します。

ブレリアとの関係性

ファンダンゴ・アバンドラオはざっくり言うと、ファンダンゴ・デ・ウエルバを半速近くまで遅くしたものですが、倍タイムのブレリアのリズムがミックスされたようなリズムで演奏されることがあります。

例えば、120BPMのアバンドラオなら240BPMのブレリアの語彙を入れていく感じです。

フラメンコでは、こうやってリズムを細分化・複雑化させていくんですが、こういうものが入ってくるとカウントは混乱しそうです。

ソレアでも、ゆっくりテンポのサパテアード伴奏やファルセータに倍タイムのブレリアの語彙が入るし、ティエントタラントだと倍タイムのタンゴの語彙になります。

対応表にするとこんな感じになります。アバンドラオにブレリアを当てる場合、主に6/2拍子のパターンが使われるので、それで表記。○が付いた数字がアクセント拍です。

アバンドラオ
① ○ 2 ○ 3 ○ ④ ○ 5 ○ 6 ○
ブレリア
⑫ 1 ② 3 ④ 5 ⑥ 6 ⑧ 9 ⑩ 11

ブラウザの表示具合によってズレてそうですが、アバンドラオ6拍に対してブレリア12拍を当てはめます。

ファンダンゴ・アバンドラオのマルカールパターン

ファンダンゴ・アバンドラオの代表的なマルカールパターンは以下のようなものです。

1小節3拍の3拍子。○はコードチェンジ無しの拍。ポルアリーバ(Eスパニッシュ調)で記載。

|E ○ ○|F ○ ○|G G♭ F|E ○ ○|

ファンダンゴ・デ・ウエルバのマルカールをゆっくり演奏したものと考えられ、歌の締めくくりでもこのパターンが弾かれます。

ファンダンゴ・アバンドラオの歌

ファンダンゴ・アバンドラオに属する形式は色々ありますが、歌のコード進行はほぼ共通です。

ファンダンゴ・デ・ウエルバでやったCメジャー基調の6コンパスのものが基本になりますが、歌の種類や歌いかたによって伸縮します。

アバンドラオの歌は3拍単位で伸縮

歌の伸縮の仕方ですが、上で書いたカウント方法で数えた場合は「3拍単位で伸縮」します。

このテンポでは6拍単位だと長すぎて歌の自由度が落ちてしまうためだと思われます。

ですので、ファンダンゴ・アバンドラオを上で解説した方法でカウントする場合、メディオコンパス=3拍という感覚です。

歌以外の部分では、3拍単位で伸縮することはほとんどありません。

歌のコード進行

以下に基本的な進行をあげておきます。

実際の演奏サイズは伸縮が激しく、形式によっても異なるので、大まかな展開のみの一覧にします。

(G7→)C
C→F(またはG7)
G7→C
C→G7
G7→C
C7→F→G/G♭/F→E

ディグリー(度数)表記版

(♭Ⅲ7→)♭Ⅵ
♭Ⅵ→♭Ⅱ(または♭Ⅲ7)
♭Ⅲ7→♭Ⅵ
♭Ⅵ→♭Ⅲ7
♭Ⅲ7→♭Ⅵ
♭Ⅵ7→♭Ⅱ→♭Ⅲ/Ⅱ/♭Ⅱ→Ⅰ

アバンドラオで演奏される主な形式

ファンダンゴ・アバンドラオとして建造される代表的な形式をあげていきます。

ベルディアーレス(Verdiales)

ベルディアーレスはマラガ土着のファンダンゴで、フラメンコでは主にマラゲーニャの後歌として歌われます。

本場のマラガではフラメンコ形式としてではなく、民謡としてのベルディアーレスが現在でも演奏されていて、バイオリン・太鼓・カスタネットが入ったりしてフォークミュージック色が強いものです。

主にポルアリーバで演奏されます。

ロンデーニャ(Rondeña)

ロンデーニャはロンダのファンダンゴですが、以下の2種類の演奏形態があります。

  • アバンドラオのもの
    元々はこちらの形態。主にポルアリーバで演奏されます。
  • リブレのギターソロ
    ラモン・モントージャ(Ramon Montoya)が創作したリブレ(自由リズム)のスタイルで、変則調弦(6弦をD、3弦をF♯に下げる)が特徴。次回、リブレ系ファンダンゴの解説でもう少し詳しくやります。

ハベーラスとハベゴーテス(Jaberas,Jabegotes)

これらもマラガのファンダンゴで、アバンドラオのコンパスで演奏されます。

ハベーラスは豆売りの、ハベゴーテスは漁師の仕事歌が起源と言われています。

バンドラス(Bandolas)

「山賊の歌」といわれる歌です。

マラガ山間部からコルドバあたりで歌われていたファンダンゴで、アバンドラオのコンパスで演奏されます。

ファンダンゴ・デ・ルセーナ(Fandango de Lucena)

コルドバのファンダンゴ・アバンドラオです。

ファンダンゴ・デ・グラナダ(Fandango de Granada)

グラナダのファンダンゴ・アバンドラオで、カスタネットを使ったセビジャーナスに似た踊りが入ります。

その他のファタンゴ・アバンドラオ

これ以外でもファンダンゴ系の歌はアバンドラオで演奏されることがあります。

ファンダンゴを3拍子で演奏する場合、原則的には以下のようにコンパスを使い分けます。

  • 歌い回しの速いファンダンゴ→ウエルバ系のコンパス
  • 歌い回しがゆっくりのファンダンゴ→アバンドラオ系のコンパス

ただし、ウエルバ系とアバンドラオ系の中間的なコンパスもあったりして曖昧な部分もあります。

――次回からはファンダンゴ系の発展形として、リブレ(自由リズム)形式へと入っていこうと思います!

フラメンコ音楽論 前回

セビジャーナス(Sevillanas)【フラメンコ音楽論20】
フラメンコ音楽論第20回は、踊りの入門形式であるセビジャーナスを解説します。踊りから見ると入門用ですが、音楽的にはイレギュラーで難解な面もある形式です。

フラメンコ音楽論 次回

自由リズムのファンダンゴ(マラゲーニャ・グラナイーナなど)【フラメンコ音楽論22】
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