ノンダイアトニックコードスケール【音楽理論ライブラリー10】

音楽理論ライブラリーでは、前回からスケール(音階)の学習に入って、コードスケールの基本としてモードスケールとダイアトニックスケールをやりました。

今回は、一時的転調やノンダイアトニックな代理コードに対応するためのコードスケール=ノンダイアトニックコードスケールをやります。

ノンダイアトニックコードについてはこちらの記事をご覧ください。

今回も例は全てCメジャー・Cマイナーで書いています。

セカンダリードミナントのコードスケール

セカンダリードミナントは、あるコードの前に5度上(=4度下)のドミナント7thコードを付加して強調するコード進行です。

ドミナントモーションは基本のⅤ7→Ⅰ以外にも、Ⅵ7→Ⅱm7(Ⅱm7に対するドミナントモーション)とか、Ⅰ7→Ⅳ(Ⅳに対するドミナントモーション)とか、あらゆるコードに対してドミナントモーションがかかる(セカンダリードミナント)可能性があり、多くの場合、臨時記号が発生するノンダイアトニックコードが出てきます。

ドミナントモーションに対して使うコードスケールは、以下の2種が基本になります。Cメジャーキーを例にします。

メジャー系コードに対するセカンダリードミナント(D7→G、C7→Fなど)→ミクソリディアン

マイナー系コードに対するセカンダリードミナント(B7→Em、A7→Dmなど)→ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ(HMP5B)

それぞれ次の解決先コードをⅠ・Ⅰmととらえて、そこから数えたⅤ7のコードスケールを適用しています。

注意するのは解決先のコードがドミナント7th化されている場合などですが、その場合、ドミナント7th化される前の元コード(ダイアトニックコード)で判断します。

Cメジャーキーを例にすると、以下のようになります。

C7→F7
F7の元コードはFM7なのでメジャー系ドミナント進行。よってC7にはCミクソリディアンを使用。

A7→D7
D7の元コードはDm7なのでマイナー系ドミナント進行。よってA7にはAハーモニックマイナーP5Bを使用。

B7→E7
E7の元コードはEm7なのでマイナー系ドミナント進行。よってB7にはBハーモニックマイナーP5Bを使用。

メジャーキー、マイナーキーに関わらず、ドミナントモーションに対して、オルタード、コンディミ、ホールトーン等の臨時記号が沢山付くコードスケールも適用可能ですが、これらはジャズのフレージングになり、多用するとジャズの感覚に寄っていきます。

ドミナント7th化されたコードのコードスケール

ドミナントモーション以外の用途でドミナント7th化されているコードもありますが、これらに対するコードスケールは、付加されるテンションで変わってきます。

ノンオルタード系は原則、ミクソリディアンかリディアン7thです。

オルタード系は色々あります。

  • オルタード
  • コンビネーション・オブ・ディミニッシュ(1,♭2,♯2,M3,♯4,P5,M6,m7)
  • ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ(HMP5B)

オーギュメント7th(♯5)系だったら、ホールトーンスケール(1,2,M3,♯4,♯5,m7)が合いやすいでしょう。

コンビネーション・オブ・ディミニッシュ(コンディミ)とホールトーンの解説は、こちらをご覧ください。

裏コードのコードスケール

ドミナント代理の裏コードに対しては、リディアン7thが用いられます。

例えば、Ⅴ7の裏コードは♭Ⅱ7、Ⅵ7の裏コードは♭Ⅲ7となりますが、裏コードに対しては全てリディアン7thが適用できます。

Ⅴ7(表コード)と♭Ⅱ7(裏コード)はコードスケールでいうと、Ⅴオルタード=♭Ⅱリディアン7thという転回関係が成立します。

オルタードスケールとリディアン7thスケールはともにメロディックマイナースケールの転回形であることは前回の記事で解説済みです。

ディミニッシュコードのコードスケール

パッシングディミニッシュをはじめとした各種ディミニッシュコードには、ディミニッシュスケールを使います。

ディミニッシュスケールについてはこちらで解説しています。

ただし、ドミナント代理でディミニッシュコードが使われる場合、例えばⅤ7(♭9)代理の♭Ⅵdim7などでは、ⅤハーモニックマイナーP5BやⅤオルタードなどでも良いです。
半音下のHMP5Bやオルタードっていうことですね。

ちなみにですが、例えば♭Ⅵdim7上ででⅤコンビネーションオブディミニッシュ(半音下のコンディミ)を使えば結果として、♭Ⅵディミニッシュスケールと同じものになります。

ノンダイアトニック代理コードのコードスケール

よく使われるノンダイアトニック系代理コードのコードスケールは以下の通りです。Cメジャーキー・Cマイナーキーを例にします。書式は「コード名=度数表記|対応コードスケール」です。

  • D♭M7=♭ⅡM7|D♭リディアン
  • D♭7=♭Ⅱ7|D♭リディアン7th
  • Em7(♭5)=Ⅲm7(♭5)|Eロクリアン
  • FmM7=ⅣmM7|Fメロディックマイナー
  • F♯m7(♭5)=♯Ⅳm7(♭5)|F♯ロクリアン
  • A♭m7=♭Ⅵm7|A♭ドリアン
  • B♭M7=♭ⅦM7|B♭リディアン

オンコードのコードスケール

オンコードは原則的には分子のコードに対するコードスケールを弾きます。

ただし、アッパーストラクチャートライアドや、ポリコード的な分数コードの場合は、分母のコードトーンと分子のコードトーンを足してスケールを割り出します。

場合によっては既存のものではないスケールが生成されることもあるでしょう。

不明コードに使う汎用コードスケール

今挙げたものが、代表的なノンダイアトニックコードに対するコードスケールですが、実際には、これ以外の分類不能なノンダイアトニックコードが結構な頻度で出てきます。

それらの多くは経過的なものか転調絡みのものですが、こういう不明コードに対して、とりあえず当てはめても変になりにくい、というコードスケールがあります。

アドリブ演奏などで分析が十分に出来てない状態で演奏しなければならないこともありますが、そういう時に頼れるのが、以下に挙げるような「汎用コードスケール」です。

  • メジャー7thコード→リディアン
  • マイナー7thコード→ドリアン
  • マイナーメジャー7thコード→ハーモニックマイナーかメロディックマイナー
  • マイナー7th♭5コード→ロクリアン
  • メジャー7th♯5コード→リディアンオーギュメント
  • ディミニッシュコード→ディミニッシュスケール

構成音的にはこれで大丈夫なことがほとんどです。

なお、ドミナント7th系不明コードについては、上に書いた「ドミナント7th化されたコードのコードスケール」のところを参照してください。

――次回は一般のメジャーキー・マイナーキーという概念にあてはまらない特殊なスケールについてやろうと思います。

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