音楽理論ライブラリーでは、前回まで音楽の成り立ちの基礎としてコード(和音)と調性の事を中心に扱ってきました。
大雑把にいうと音楽は以下の3つの要素で出来ています。
- コード(和音、調性)
- メロディー(旋律)
- リズム
今までは1つ目のコードの要素を中心にやってきたわけですが、これから2つ目のメロディー要素を担う「スケール(音階)」を学習していきます。
メロディーは、コードをバラバラに弾いたアルペジオ(分散和音)で出来ている場合もありますが、主に音階を用いて作られます。
アルペジオも「スケールを1音飛ばしに弾いたもの」と捉えることもできますよね。
スケールにも色々な概念・用語があって混乱しやすいところだと思います。
用語でいうと、ダイアトニックスケール、ノンダイアトニックスケール、コードスケール、モードスケールなどがあります。
今回から、これらについて学習していきましょう。
スケール(音階)の基本
ピアノの白鍵だけで弾いた、ドレミファソラシがCメジャースケール、ラシドレミファソがAナチュラルマイナースケールである、というのはこの講座の最初のほうで解説しました。
メジャースケール・マイナースケールは西洋音楽の調性(メジャーキーとマイナーキー)を構成する最も基本的な要素ですが、メジャースケール・マイナースケール以外にも、数多くのスケールが存在します。
スケールの中には7音階でないものもあるし、民族音楽系のスケールなどを入れるとかなりの数になります。
スケールの呼び名も、同じものに対して複数の名称があったりして混乱しがちです。
例えば、Cメジャースケールと、モードスケールの一つであるCイオニアンスケールは同じものですが、それを解釈する概念によって呼び方が変わったりするわけです。
スケールの構造
西洋音楽の調性のベースとなるメジャースケール・マイナースケールをはじめ、スケールは7音階のものが大多数を占めます。
7音階の基本構造は、ルート・3度・5度・7度のコードトーン4音に、2度(9th)・4度(11th)・6度(13th)のテンションノート3音を加えたもので、これで合計7音の音階が形成されます。
モード(旋法)とモードスケール
現代の音楽は複雑化し、メジャー・マイナーの概念だけでは対応しきれないケースが多く、もっと細分化された理論が必要になってくるのですが、そこで登場してくるのがモード(旋法)の概念です。
モードは教会旋法が基礎になっていて、その歴史はメジャー・マイナーの概念より古かったりするんですが、マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンなどのジャズアーティストによって作曲・インプロビゼーションの方法論として、改めて提唱されたことで一般化しました。以後、現代の主要な音楽理論として定着しています。
教会旋法(モード)は、7音階であるメジャースケール・ナチュラルマイナースケールを7つの独立した音階(モードスケール)に分けて、あらゆるコード進行に柔軟に対応しようというもので、具体的には7音階であるメジャースケールを7つに細分化したものです。ドから始めた音階、レから始めた音階、という具合に。
モードスケール一覧
以下にモードスケールの一覧を書きますが、度数表記に関しては以下のようになります。
m2→♭2
M2→2
P4→4
P5→5
3度、6度、7度は、M(メジャー)、m(マイナー)の表記を付けるという書き方で統一します。
- イオニアン(ドから=メジャースケール)1,2,M3,P4,P5,M6,M7
- ドリアン(レから)1,2,m3,P4,P5,M6,m7
- フィリジアン(ミから)1,♭2,m3,P4,P5,m6,m7
- リディアン(ファから)1,2,M3,♯4,P5,M6,M7
- ミクソリディアン(ソから)1,2,M3,P4,P5,M6,m7
- エオリアン(ラから=ナチュラルマイナースケール)1,2,m3,P4,P5,m6,m7
- ロクリアン(シから)1,♭2,m3,P4,♭5,m6,m7
これら7つの音階を指して「モードスケール」と呼ぶことがあります。
モードスケールは、このあと解説するメジャーキー・マイナーキー(ナチュラルマイナー)のダイアトニックスケールと同一のものですが「協会旋法から作られたスケール」ということで「モードスケール」という呼ばれかたもされるわけですね。
コードスケールの概念
コードスケールは、コードに対して1対1で音階を対応させて、あらゆるコード進行や転調に対応できるようにする考え方です。
これにより、あらゆるコード進行でのメロディー生成・インプロビゼーションが可能になります。
ダイアトニックスケール
ダイアトニックコードに対応するコードスケールをダイアトニックスケールといいます。
ダイアトニックスケールには上で解説したモードスケールが含まれます。
メジャーキーならイオニアンがⅠコードに、マイナーキーならエオリアンがⅠmコードに、それぞれ対応します。
以下に各キーのダイアトニック・コードをあげていきます。
把握しやすいように全てC音をルートとしたキーで統一し、コードは4和音で記載します。
Cメジャーのダイアトニックスケール
メジャーキーとナチュラルマイナーキーのダイアトニックスケールは、上で解説したモードスケールが用いられます。
- CM7(ⅠM7)Cイオニアン(Cメジャースケール)
- Dm7(Ⅱm7)Dドリアン
- Em7(Ⅲm7)Eフィリジアン
- FM7(ⅣM7)Fリディアン
- G7(Ⅴ7)Gミクソリディアン
- Am7(Ⅵm7)Aエオリアン(Aナチュラルマイナースケール)
- Bm7♭5(Ⅶm7♭5)Bロクリアン
Cナチュラルマイナーのダイアトニックスケール
Cナチュラルマイナーのダイアトニックコードの一覧です。
- Cm7(Ⅰm7)Cエオリアン(Cナチュラルマイナースケール)
- Dm7♭5(Ⅱm7♭5)Dロクリアン
- E♭M7(♭ⅢM7)E♭イオニアン(E♭メジャースケール)
- Fm7(Ⅳm7)Fドリアン
- Gm7(Ⅴm7)Gフィリジアン
- A♭M7 ♭(ⅥM7)A♭リディアン
- B♭7(♭Ⅶ7)B♭ミクソリディアン
Cハーモニックマイナーのダイアトニックスケール
Cハーモニックマイナーのダイアトニックスケールの一覧です。
- CmM7(ⅠmM7)Cハーモニックマイナー(1,2,m3,4,5,m6,M7)
- Dm7♭5(Ⅱm7♭5)Dロクリアン♮6(1,♭2,m3,4,♭5,M6.m7)
- E♭M7♯5(♭ⅢM7♯5)E♭イオニアン♯5(1,2,M3,4,♯5,M6,M7)
- Fm7(Ⅳm7)Fドリアン♯4(1,2,m3,♯4,5,M6,m7)
- G7(Ⅴ7)Gハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ(1,♭2,M3,P4,P5,m6,m7)
- A♭M7(♭ⅥM7)A♭リディアン♯2(1,♯2,M3,♯4,5,M6,M7)
- Bdim7(Ⅶdim7)Bオルタード♭7(1,♭2,♯2,M3,♯4,♯5,6)
※普通はディミニッシュコードが出てきたらコンディミやディミニッシュスケールを使うが、Ⅰハーモニックマイナーでのフレージングを維持する場合はこちらになる
Cメロディックマイナーのダイアトニックスケール
Cメロディックマイナーのダイアトニックスケールを一覧にします。
- CmM7(ⅠmM7)メロディックマイナー(1,2,m3,4,5,M6,M7)
- Dm7(Ⅱm7)ドリアン♭2(1,♭2,m3,4,5,M6,m7)
- E♭M7♯5(♭ⅢM7♯5)リディアンオーギュメント(1,2,M3,♯4,♯5,M6,M7)
- F7(Ⅳ7)リディアン7th(1,2,M3,♯4,5,M6,m7)
- G7(Ⅴ7)メロディックマイナーパーフェクト5thビロウ(1,2,M3,4,5,m6,m7)
- Am7♭5(Ⅵm7♭5)ロクリアン♮2、オルタードドリアン、スーパーエオリアン(1,2,m3,4,♭5,m6,m7)
- B7♭5(Ⅶ7♭5)オルタード、スーパーロクリアン(1,♭2,♯2,M3,♯4,♯5,m7)
ハーモニックマイナーとメロディックマイナーのダイアトニックスケールはマニアックなものも含まれますが、使用頻度の高い重要なものは以下の5種になります。
- ハーモニックマイナー
- ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ
- メロディックマイナー
- リディアン7th
- オルタード
次回はノンダイアトニックなコードスケールを学習します!
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