前回はリズムの基礎や記譜方法をやりましたが、今回は実際によく使われるリズムパターンや音楽ジャンルごとのリズムの特徴をやろうと思います。
各リズムパターンの特性を知って、それらのパターンに対応する基本的な伴奏法を身に付けていれば、あとはコード譜さえあれば、その場でそれらしい伴奏をサッと付けることもできます。
大まかな系統ごとに見ていきます。
4拍子系
リズムパターンも色々ありますが、世界的に見ても4拍子系が圧倒的に多いです。
8ビート
ロックの代表的リズムパターンです。
ベードラとスネアを交互に打つものですが、8ビートをシャッフル化させたリズムもよくあります。
2ビート
2分音符でベードラやスネアを打ち鳴らすので、2ビートと呼ばれますが、8ビートを早回ししたようなノリです。
スカとかスピードメタル系で聴かれます。
メタル系だとダブルベースドラムを駆使したりして、疾走感をだします。
4ビート
ジャズの代表的なリズムパターンです。
いわゆるシンバルレガートでベースのビートを刻みますが、ブラックミュージック特有の跳ねたリズムで、表拍が長く、裏拍が短くなります。
ジャズでは、これを『スイング』と表現します。
16ビート
8ビートよりリズムが細分化され、16分音符の表裏、裏裏を多用するリズムです。
1960年代~1970年代にファンクが流行して、アメリカの黒人アーティストを中心に盛んに演奏されて確立されたビートです。
ブラックミュージック由来なので、表拍(表表と裏表)が長く、裏拍(表裏と裏裏)が短くなる傾向です。
アレンジ上は細かいベースラインやエレキギターのカッティングが特徴です。
ラテン系
ラテン系のリズムパターンは、戦後にラテン音楽、ラテンパーカッションのブームがあり、多くはそこで確立されたものです。
キューバ系(サルサとかルンバ)とブラジル系(サンバとかボサノバ)が二大ジャンルと思いますが、符点音符の多用、裏拍の多用、弱起リズム(ビートの頭を強く出さない)の多用、などが共通の特徴です。
アルゼンチンタンゴやフラメンコのタンゴも広い意味ではラテン系ビートです。
テクノ・EDM系
テクノミュージックは1970年代頃に始まった、シンセサイザーなどの電子楽器を駆使した音楽ジャンルですが、現在では、1980年代後半から浸透した、打ち込みのビートを使ったクラブ・ダンス系の音楽ジャンル(いわゆるEDM)も含めてテクノというジャンルで扱われているイメージです。
1980年代に流行したディスコビートやユーロビート、1990年代から大流行したハウス、トランス、ダンスホールレゲエなどが含まれます。
特徴は打ち込みで作った機械的な正確なリズムで、いわゆる『4つ打ち』(ベースドラムをひたすら4分音符で鳴らす)に象徴されるように、4拍子のビートを強烈に出して、誰もが踊れるように作ってあるものが多いです。
その他4拍子系
系統としてまとめられるのは上のようなものですが、4拍子系のリズムパターンは他にも世界中にたくさん存在します。
例えば、ボブ・マーリーによって確立されたレゲエのリズムパターンは8ビート系と考えることもできますが、リズムのハネかたや隙間の作り方が独特なので、独立したリズムパターンジャンルと捉えたほうが良さそうだし、そういうモノが数多くあります。
3拍子系
3拍子は4拍子に次いで多くあるリズムですが、多くはヨーロッパ地域の民謡や舞曲が起源です。
3拍子系はリズムパターンとして系統づけられるものは少ないです。
ワルツ
クラシックの時代から3拍子の代表的リズムパターンにワルツがあります。
3拍子の後ろ2拍にアクセントがある『ずんちゃっちゃっ、ずんちゃっちゃっ』というアレですね。
ワルツは舞曲で、舞踏会などで踊るためのリズムです。
社交ダンスのステップなどでそういう流れが受け継がれています。
現在では、ワルツ以外のメジャーな3拍子パターンが存在しないため、ワルツ=3拍子全般というふうにとらえられることもあります。
フラメンコの3拍子
フラメンコは自分の専門なので、これも少しだけ触れておきます。
フラメンコのリズム形式は半分以上が3拍子系(6拍子、12拍子を含む)のリズムです。
ソレアやシギリージャなど、原始的なフラメンコには12拍子(6拍子)系しかなかったんですが、アンダルシア民謡から3拍子が採り入れられ、2拍子や4拍子の形式に至っては、引き上げ移民が伝えた中南米の音楽が起源と言われているくらいで、もともと4拍子の感覚は希薄だったと思われます。
このように、フラメンコは3拍子系が中心ですし、スペインの伝統音楽をベースにした音楽も3拍子が多いです。
フラメンコのリズムに関しては『フラメンコ音楽論』で詳しく扱っていますので、そちらをご覧ください。

6/8拍子
6/8拍子はクラシック音楽でも、一般の音楽でも、かなりの割合で出てきます。
通称『ハチロク』と呼ばれたりします。
ハチロクは8分音符1つで1拍、8分音符6つで1小節というリズムですが、アクセントのつけかたによって、2拍子にも3拍子にもきこえますが、ハチロクは厳密には2拍子の一種です。
8分音符3つで1拍、2拍で1小節というのが基本ですが、これだと3連符の2拍子とほぼ同じです。
個人的には、ハチロクの特徴は3拍子にも2拍子にもとれる、という曖昧なところだと思っていますが。
あと、ハチロクは16分音符で刻むケースが多いです。
その場合、自分は16ビート+3拍子みたいなイメージで演奏してます。
クラシック系音楽のリズムの取りかた
クラシック系の音楽・奏者は、他のジャンルと違う特殊事情があります。
基本的に譜面を再現するジャンルなので、他のジャンルと演奏に対する考え方が違うんですが、とくにリズムアンサンブルは他のジャンルと全く異質なものです。
ある程度以上の人数のアンサンブルには指揮者がつきますし、BPMの指定も速度記号でやるのでアバウトです。
BPMは指揮者の裁量でコントロールするか、少人数なら阿吽の呼吸で合わせる感じで、こうしたことが可能なのは、クラシックの楽曲の作り方によるところが大きいと思います。
打楽器や打ち込みでBPMをキープして、その上でリズムプレイを展開するようなジャンルと比べて、クラシックの楽曲のリズムは表拍主体の単純なものが多いです。
そのかわり、フェルマータが多かったりで、BPMに縛られない表現を重視する傾向です。
現代では、ジャンルの垣根はどんどん取っ払われて、クラシックの奏者も正確なBPMでリズミックなプレイをすることも増えてきたし、とくに若い世代ではクラシック以外のジャンルも積極的に演奏したりして、以前ほどギャップはなくなってきているように思います。
――前回と今回でリズムに関して、簡単にですがまとめました。
これで、調性・コード・スケール・リズムという音楽の基本構成要素を一通り学習したことになります。
今回の連載の主旨である『音楽をアレンジしたり演奏したりするのに、知っておいた方がいい実用的な音楽理論をコンパクトに解説する』というのは大体達成できたと思いますので、これで一旦終了といたします。
しかし、これで完璧、というわけにもいかないと思いますので、また必要に応じて加筆・修正をしていこうかと思います。
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