音楽理論ライブラリーではこれまで11回に渡って、キーの成り立ち・コード・スケールなど音楽の基本的な構成要素を解説しました。
これから、今までの知識を使って応用的な事を学習していきます。
今回は「楽曲分析=アナライズ」です。
楽曲分析=アナライズとは何か?
アナライズ(楽曲分析)とは「作曲の意図を読み取り、音の意味するところを理解する」という作業ですが、分析ができなければアレンジ(編曲)もアドリブ演奏も感覚のみでやることになり、行き詰まりやすくなります。
アナライズはコード進行分析が中心になり、キーの流れの把握が主な作業ですが、モードや特殊なスケールによって作られているものもあるので、モード・コードスケールも含めた総合的な知識が求められます。
キー(調性)を把握しよう
上で述べた通り、コード分析のメインはキー(調性)の把握です。
キーの把握とは、その部分のⅠコードまたはⅠmコードを特定して、コード進行を度数(=ディグリー。キーのルート音から何番目の音の上に積まれたコードか?ということ)で理解するということです。
キーは曲全体に及んでいる場合もあるし、一部のセクションだけに限定されている場合もありますが、原則的には下記のものが、その曲全体のキー(主調)として扱われることが多いです。
- 曲のメインテーマやAメロ出だしのキー
- 曲の最後に終止するキー
- 曲中で最も使用比率が高いキー
シンプルな曲だと最初から最後まで一つのキーなこともありますが、複雑な曲になると、調性が微妙に揺らぎながら進行するのでキーの判別が難しいです。
キー把握の重要性
キーを把握してコードのディグリーが確定できれば、以下のような作業の効率が全く違ってきます。
- 省略・追加できるコードの判断
- 代理コードへの置き換え
- コードボイシングの組み換え
- 適切なコードスケールをつけてメロディーを生成・変更する
スムーズに分析ができるようになると、アレンジやアドリブ演奏のみならず作曲にも役立つし、音楽をやる上で凄く楽になります。
キー(調性)の判別法
転調の無い曲なら一曲通して同じキーなので分析も簡単ですが、一時的転調含む転調がある曲は、細分化してより細かく分析しないと正確な調の流れがわからないため、曲の部分部分で細かくキーを分析する必要が出てきます。
ここでは自分が実際にやっているキーの判別法を書いてみます。
簡単にいうと、曲のなかで「終止感」のあるところのベース音が、その部分のキーのルート音です。
メロディーの終止を探して、そこのコードを調べたりメロディーに使われているスケールを調べてキーを判別する、というシンプルなキー判別法は、自分がやっているゲーム音楽演奏ブログの記事で解説していますので、参考にしてください。
次に、もう少し高度な方法を解説していきます。
ドミナントモーションを頼りにしたキー特定
ドミナントモーションを頼りに、キーを判定する方法もあります。
まず、コード進行をみてドミナントモーションを探します。裏コードによる半音進行も考慮しましょう。
そして、それがⅤ→Ⅰなのか、それ以外のセカンダリードミナントなのか判別します。
Ⅰコードの判別は解決先のコードに「強い終止感」があるかで判別します。
終止感があればⅠコードの可能性が高く、そのコードがその部分のキールートとなります。
ドミナントモーションが無い場合のキー判別法
では、ドミナントモーションが無い場合はどうするかというと、ある程度のサイズの「転調を含まないと感じるコード進行」を取り出して、ダイアトニックコード表のどこかに当てはまらないか考えます。
他のタイプのコードがドミナント7thに変化している場合もあるのでそれも考慮します。
感覚に頼る判別法
どうしてもキーがわからない部分がある場合、該当コード進行を弾いた後に続けてメジャーコードとマイナーコードを色々なルートで弾いてみます。
その中で据わりが良くて「終止感」のあるコードが、そこのキーのルートコードの可能性が高いです。
感覚に頼る判別方法ですが、これが意外と、頭だけで考えるより有効だったりします。
分析が難しい部分
上のような方法で曲の部分部分のキーが判明してきたら、前後のコードにディグリーを付けていって、テンションやコードスケールを導きだしていきます。
パズルを完成させる感じで、判明した部分を手掛かりにして曲全体を分析していきますが、なかなかスッキリ判明しない部分も出てくるかと思います。
以下、分析が難航した場合の対処方法を解説していきます。
不明コード
楽曲のある区間を分析をしていて、その部分に想定しているキーの範囲内では説明がつかないコードがある場合、以下のことを考えます。
- 他のコードネームを検討
オンコードになっている可能性を考えて、コードネームのつけ直しを検討する。 - 転調の可能性を検討
他のキーに転調している可能性を考えて、コードのディグリーを変える。
前後の流れやメロディーに使用されてる音なども考えて、相応しいと思う流れになるように解釈していきます。
モードや特殊スケールを活用している場合
今まで解説した作業を地道にやれば、一般的なメジャーキー・マイナーキーで出来ているものの大部分はキーの流れが判明してくると思いますが、要注意なのはモードスケールを応用的に使っていたり、民族音階などの特殊な音階を使っている場合です。
いわゆるモード奏法や特殊スケールについては、前回学習しました。
コード進行的にはどう聴いてもⅠ・Ⅰmなのに、メジャースケール(イオニアン)・マイナースケール(エオリアン)でない音階がメロディーに使われていて、キーの判断に迷うことがあります。
メジャーキー・マイナーキーの範疇のみで考えると「転調」ということになりますが、転調で解釈してしまうと「メロディーが終止するところのコードがいつもドミナントやサブドミナント」ということになりがちで、苦しい解釈になります。
そういう時は、モード奏法や特殊スケールを使っていると解釈して、メロディーが終止するところはトニックコードになるように考えたほうが良いです。
コード進行の分析ができればアレンジも楽々
コード分析が完了してキーの流れが完全に把握できれば、コードのディグリーが確定するので、コードスケールによる音階や、付加可能テンションが導けます。
ここまで来れば、作曲の意図を尊重しつつ自分なりにアレンジしたり、そのコード進行上でコードスケールを使ったアドリブ演奏が出来たりするわけです。
作曲で行き詰まった場合も、自分の曲を一旦冷静に分析してみると、次の流れのヒントになったりします。
――次回からは分析ができるという前提で、アレンジなどの領域を学習していきます。
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