4サイクルコンパス【フラメンコ音楽論41】

前回、フラメンコのリズムの捉え方の一つの考え方として、『コンパス=サイクル理論』を紹介しました。

これから『コンパス=サイクル理論』を使ってフラメンコのコンパスを攻略していこうと思いますが、前回はフラメンコのコンパスをサイクル化するために3つのサイクルカテゴリーと5つのテンポ帯に分類した結果、15種類のリズムサイクルができました。

今回は3つのサイクルカテゴリーのうち、最も取っつきやすい『4サイクル』5種類について書きます。

4サイクルの基本

4サイクルでとるのは、2拍子系形式です。

感覚的には通常の4拍子に近いので、表・裏・三連などの感覚さえしっかりしていれば、すぐに馴染めると思います。

4サイクルのリズムパターン

サイクルをキープするためのリズムパターンは4拍や6拍が楽にキープできればなんでもいいんですが、実用上は演奏しながら足でキープする場合が多いと思うので、間隔が均等になるパターンがいいです。

4サイクルを足でキープするのに適したパターンとしては以下の4種類があります。

●は足を踏んだりするアクションをする拍、○は頭の中でカウントする拍です。

全拍ベタ踏みの4サイクル
●●●●
テンポがゆっくりの場合は全拍ベタ踏みが安定します。
テンポが速い場合でも、テンポ(BPM)のキープを最優先する場合はベタ踏みにします。

1,3拍目を踏む4サイクル
●○●○
4サイクルの一番基本的なパターンで、ミドルテンポ~ハイテンポはこれが最も安定します。
非常に分かりやすいパターンですが、演奏している手のほうは弱起になってサイクルの頭を強く出さないことが多いので、そういう音の隙間を正確にとるために足を踏む感覚です。

2,4拍目を踏む4サイクル
○●○●
バックビートである2,4拍目を踏む場合もあります。
パルマや演奏も2,4拍目が強いことが多いので、フレーズ的にはマッチしやすいですが、隙間を埋めてテンポキープするという意味では1,3拍目を踏んだほうが良さそうです。

1拍目のみ踏む4サイクル
●○○○
サイクルの頭だけをとっていきます。
4拍のサイクルは最も感じやすいですが、足を踏む間隔が長くなるので、その分テンポキープは難しくなります。
ハイテンポ~超ハイテンポに適しますが、テンポキープよりもサイクルを大きく感じるのを優先したいときはこのパターンを使います。

足を踏む目的

これはサイクルの種別に関係ない普遍的な話なんですが、サイクルやBPMをキープするのに足を踏む、ということの意味を考えてみます。

一つは自分がサイクルやテンポを感じて演奏しやすくするためです。

でも、それだけなら頭の中でサイクル・テンポを感じて正確にキープできれば、必ずしも足を踏む必要はありません。

足を踏むもう一つの重要な目的が、他者とのサイクル・テンポの共有です。

自分が感じているテンポや、今演奏しているフレーズがコンパスに対してどんな入り方をしているか?ということを共演者や聴衆にリアルタイムに伝える手段として、サイクルの節目やコンパスアクセントで足を踏む、というのが一番有効なわけです。

フラメンコはソロでもできますが、多くの場合はパルマなどを含めたアンサンブルになります。

演奏メンバーのレベルにもよりますが、ある一定以上複雑なことをやろうと思ったら、足を踏んでコンパスとフレーズの関係を伝えるのが最もシンプルで早い方法です。

では、以下にテンポ別の4サイクルを解説していきます。

超スローテンポの4サイクル

使う形式は、ティエント、タンゴ・デ・マラガ、ガロティン、ファルーカ、タラントなどです。

主に踊りのレトラの部分と、レトラテンポのファルセータやサパテアードで使うテンポです。

65~90BPMくらいで、足を踏むなら、全拍ベタ踏みが基本です。
4拍で1サイクル、2サイクルで1コンパスとなります。

このテンポの場合、2倍テンポ(ミドルテンポ)のタンゴの語彙を使うこともよくあります。
タンゴでいう8分音符がこのテンポの16分音符に該当します。

タンゴの語彙をこのテンポに当てはめる場合、コードやフレーズの回りかたが2倍の長さになるので、そこは調整が必要です。

超スローテンポ4サイクルは、多少テンポを揺らして演奏する場合も多いです。

ティエントなどは割りきれない譜割りで粘ったりもしますが、ここまでゆっくりのテンポではティエントといえど、粘らない場合のほうが多いです。

ティエント形式解説

ティエント(Tiento)【フラメンコ音楽論25】
フラメンコ音楽論 第25回は独特のタメの効いたコンパスが特徴のティエント形式です。『タメ』の解析、踊り伴奏時の倍速テンポへの切り替えについても書いています。

スローテンポの4サイクル

だいたい100~130BPMです。
使う形式は、上の超スローテンポ4サイクルと同じですが、カンテソロの場合はこちらのテンポで演奏することが多いです。

ティエントの場合は、ほぼ粘るリズムになります。

タンゴ・デ・マラガも粘る割合が増え、ガロティンは超スローで演奏するものより一段軽快な感じになります。

4サイクル、6サイクルともに、ゆっくり歌われる歌は、元々このテンポで演奏されていて、フラメンコの『原型』とも言えるテンポ帯です。

ですので、必然的にカンテソロに使うことが多くなりますが、踊りの場合でもレトラのテンポを速めに設定する場合は、こちらの感覚になります。
ギターソロでもこのテンポは多用されます。

カンテソロ伴奏・ギターソロの場合は、多少テンポを揺らして演奏することも多いです。

このテンポでは倍速テンポの語彙はあまり使いません。

足でサイクルキープする場合は、粘るリズムも入れやすい1,3拍目を踏むパターンが楽です。

ミドルテンポの4サイクル

130~180BPMくらいで、超スローテンポの約2倍の速さです。

使う形式は主にタンゴですが、2拍子系形式の踊りは形式問わずエスコビージャでこのテンポが頻出します。

16分音符と3連符の使い分けや、細かいシンコペーションなど、細かくてテクニカルな表現に適したテンポです。

足でリズムをキープするときは1,3拍目を踏むパターンが基本です。

ハイテンポの4サイクル

180~250BPMくらいで、形式としては、ルンバ、ルンバタンゴ、タンギージョなどです。

基本的には上のミドルテンポ4サイクルをスピードアップしたものですが、16分音符以上のフレージングは難しいテンポになってくるので、8分音符、3連符が主体の表現になります。

足でのサイクルキープは1,3拍目を踏むのが基本です。

3連符のタンギージョは別枠

ハイテンポ4サイクルで注意すべき形式はタンギージョです。

詳しくはタンギージョ形式解説を見ていただきたいですが、3連符化されたリズムがベースになったものがあり、このテンポだと実質は2拍3連符での演奏になります。

3連符のタンギージョは実際の演奏上は6/8拍子でとったほうがいい場合が多いし、一種のポリリズムの様相なので、これだけは個別のパターンとして練習しておいたほうがいいでしょう。

タンギージョ形式解説

タンギージョ(Tanguillo)【フラメンコ音楽論27】
フラメンコ音楽論 第27回はタンギージョ(Tanguillo)です。伝統的なものとモダンスタイルでは全く違うリズムに聴こえますが、そのあたりを解明します!

超ハイテンポの4サイクル

今回やっている4サイクルだけでなく、全てのコンパスサイクルに当てはまりますが、このテンポになるのは主に踊り伴奏の追い上げやマチョのときです。

250BPM以上になり、300BPMともなると、もう細かいシンコペーションとか気にする余裕もなく、全体のリズムから遅れないように必死な状態になります。

このテンポはサイクル数に関わらず、とにかく速いテンポに慣れておくしかないです。

突然このテンポにされると頭や手がついていかなかったりするので、踊り伴奏を主体にやる奏者なら、定期的に鍛えておくことが必要と感じます。

足でサイクルキープするなら、頭拍のみ踏むパターンか、追い付くなら1,3拍目を踏むパターンです。

――次回は、フラメンコ音楽をやる上で最重要かつ最難関と思われる6サイクルコンパスをやります!

フラメンコ音楽論 前回

コンパス=サイクル理論【フラメンコ音楽論40】
フラメンコ音楽論は今回から新展開。これから、フラメンコを演奏する上で最も難しい部分である『コンパス』を独自の『コンパス=サイクル理論』を用いて攻略していきます。

フラメンコ音楽論 次回

6サイクルコンパス【フラメンコ音楽論42】
今、フラメンコ音楽論では『コンパス=サイクル理論』を解説中ですが、今回はフラメンコを演奏する上で最も重要かつ、鬼門となりやすい6サイクルのとりかたです。

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