音楽理論ライブラリーでは前回、全ての音楽理論の基礎としてインターバル(音程)の解説をしました。
今回は、西洋音楽を構成する基本的な音階であるメジャースケール(長音階)とマイナースケール(短音階)、それらによってかたち作られる「調性」の基礎を学習します。
メジャー・マイナーのスケール(音階)について
音階(スケール)とは、ドレミファソラシドのことで、西洋音楽の7音階が基本になります。
ピアノの白鍵だけをド=Cから弾くとCメジャースケール、ラ=Aから弾くとAナチュラルマイナースケールになります。音の並びは以下の通りです。
メジャースケール
1,2,M3,4,5,M6,M7
ルート(1、ド)
全音(2、レ)
全音(M3、ミ)
半音(P4、ファ)
全音(P5、ソ)
全音(M6、ラ)
全音(M7、シ)
半音(オクターブ、ド)
ナチュラルマイナースケール
1,2,m3,4,5,m6,m7
ルート(1、ラ)
全音(2、シ)
半音(m3、ド)
全音(P4、レ)
全音(P5、ミ)
半音(m6、ファ)
全音(m7、ソ)
全音(オクターブ、ラ)
メジャースケールとナチュラルマイナースケールを比べると3、6、7が違いますね。
メジャースケールは3、6、7が長音程、ナチュラルマイナースケールは3、6、7が短音程となっています。
マイナースケールのバリエーション
マイナースケールはナチュラルマイナースケールのほかに、もう2種類あります。
ハーモニックマイナースケール
1,2,m3,4,5,m6,M7
ナチュラルマイナーと比べるとラ(ルート)への導音として、7th(ソ)が♯して長音程になっています。
メロディックマイナースケール
1,2,m3,4,5,M6,M7
こちらは導音が2つ付いて、6th(ファ)と7th(ソ)が♯して長音程になっています。
ちなみにメロディックマイナースケールとメジャースケールは、3番目の音が半音違うだけです。
例えば、Aメロディックマイナースケールの第3音のC音を♯させてC♯音にすると、Aメジャースケールになります。
ピアノの白鍵のみで弾けるCメジャースケールを基準に、メジャースケールと3種のマイナースケールの関係を一覧にすると、以下のようになります。
Cメジャースケール
全て白鍵
C,D,E,F,G,A,B
メロディックマイナースケール
3rdが♭して黒鍵に
C,D,E♭,F,G,A,B
ハーモニックマイナースケール
3rdと6thが♭して黒鍵に
C,D,E♭,F,G,A♭,B
ナチュラルマイナースケール
3rdと6thと7thが♭して黒鍵に
C,D,E♭,F,G,A♭,B♭
この捉え方だと、メジャースケールがメロディックマイナースケール(3番目が♭)→ハーモニックマイナースケール(3番目と6番目が♭)→ナチュラルマイナースケール(3番目と6番目と7番目が♭)と変化していってます。
まずは、メジャースケールと3種のマイナースケールの関係性を理解しましょう。
メジャーキー(長調)とマイナーキー(短調)
一般的な西洋音楽は今やったメジャースケールとマイナースケールの音を使って作られています。
そして、音楽には調性というものがあります。
ハ長調=Cメジャーキーとか、イ短調=Aマイナーキーなどですね。
ざっくり言うと、調性はその音楽が何の音階で作られているかを示しています。
メジャースケール(長音階)の音を使って作られている調がメジャーキー、マイナースケール(短音階)の音を使って作られた調がマイナーキーというわけです。
一般的にメジャーキーだと明るい曲調になり、マイナーキーだと切ない曲調になります。
調号について
調性は譜面上では調号で指定されます。
ト音記号やへ音記号のとなりに付いている♯や♭の塊が調号で、調号の付きかたで、ベースになるスケールが変わります。
たとえば、CメジャーキーとAマイナーキーは調号がつきませんが、この意味するところは、ピアノでいうと白鍵だけで演奏される調ということです。
調号に♯が1つ付いていたら、GメジャーキーまたはEマイナーキーとなり、F(ファ)の音が♯した音階がベースになります。
以下にメジャーキーとマイナーキーの調号の一覧を書いておきます。
調号と調性の一覧
調号なし
Cメジャーキー、Aマイナーキー
♯1つ
Gメジャーキー、Eマイナーキー
♯2つ
Dメジャーキー、Bマイナーキー
♯3つ
Aメジャーキー、F♯マイナーキー
♯4つ
Eメジャーキー、C♯マイナーキー
♯5つ
Bメジャーキー、G♯マイナーキー
♯6つ(♭6つと同じキーになる)
F♯メジャーキー、D♯マイナーキー
♭1つ
Fメジャーキー、Dマイナーキー
♭2つ
B♭メジャーキー、Gマイナーキー
♭3つ
E♭メジャーキー、Cマイナーキー
♭4つ
A♭メジャーキー、Fマイナーキー
♭5つ
D♭メジャーキー、B♭マイナーキー
♭6つ(♯6つと同じキーになる)
G♭メジャーキー、E♭マイナーキー
臨時記号と基本的な転調について
調号で指定されたスケール以外の音が入ってくると♯や♭の臨時記号が発生しますが、ベースになる音階自体が変わる場合は「転調」となり、改めて調号が指定されたりします。
ただ、転調にもいろいろなものがあり、調の判断が微妙な場面も多いです。
関係調などの基本的な転調については今回の講座で解説しますが、転調の判断は広い知識を要することも多いので、もう少し先で改めて詳しくやろうと思います。
関係調
現在のキーと使用する音の互換性が高く、スムーズに転調できるキーを関係調といいます。
関係調同士は使用されるコードの互換性も高いので、コード進行によっては、どちらにもとれる場合があります。
関係調には4種類あります。
平行調
上の調号一覧表では、同じ音を使ったメジャーキーとマイナーキーが組になっていますが、これを平行調と呼びます。
メジャースケールの6番目の「ラ」の音をルートにとると、平行調のマイナーキーに、逆にマイナースケールの3番目の「ド」の音をルートにとると、平行調のメジャーキーになります。
Cメジャーの平行調はAマイナー、Cマイナーの平行調はE♭メジャーになります。
平行調同士は調号が同一なので、使用する音もコードも同じで、シームレスに転調できます。
属調
元のキーに対して5度上(4度下)の調です。Cメジャーの属調はGメジャーです。
調号は♯が1つ増えます(または♭が1つ減る)。
上の一覧表では、基準になるキーから数えて、♯系なら1つ下の段の、♭系なら1つ上の段のキーが属調です。
元のキーから使用する音が1音しか変わらないので、スムーズな転調になります。
下属調
元のキーに対して4度上(5度下)の調です。Cメジャーの下属調はFメジャーになります。
調号は♭が1つ増えます(または♯が1つ減る)。
上の一覧表では基準になる調から数えて、♯系なら1つ下の段の、♭系なら1つ上の段のキーが下属調です。
属調転調と同じく、元のキーから使用する音が1音しか変わらないので、スムーズな転調になります。
同主調
先ほどやったスケールの解説で、CメジャースケールとCマイナースケールの比較をやりましたが、こういうCメジャーキーとCマイナーキーなど、ルートが同じ調性同士を同主調といいます。
メジャーとマイナーの同主調の転調は調号がいっぺんに3つ変わるので、使う音の互換性としてはそんなに高くありませんが、曲の中で同主調の音が入ってくるのは現代の音楽では常套句であり、非常によく出てきます。
同主調と短3度転調の関係
短3度転調も基本的な転調の一つですが、同主調転調と短3度転調は表裏の関係にあります。
メジャーキーで短3度上に転調
例えばCメジャーキーから短3度上に転調するとE♭メジャーキーになりますが、これはCマイナーキーの平行調なのでCマイナーへの同主調転調と同様の効果になります。
メジャーキーで短3度下に転調
Cメジャーキーから短3度下に転調するとAメジャーキーになりますが、これはCメジャーの平行調であるAマイナーの同主調にあたります。
マイナーキーで短3度上に転調
Cマイナーキーから短3度上に転調でE♭マイナーですが、Cマイナーの平行調であるE♭メジャーの同主調になります。
マイナーキーで短3度下に転調
Cマイナーキーから短三度下に転調でAマイナーですが、これはCメジャーの平行調なので実質同主調転調です。
――このようなことから、短3度転調も同主調に準ずるものである、ということがお解りいただけるでしょうか?
最後のほうは現段階では少し難しい話も入ってきましたが、メジャースケールと3種のマイナースケール、メジャースケールとマイナースケールの関係、調性の成り立ちと関係調というのが、なんとなく理解できたでしょうか?
今回やったような基礎的な話も、未経験者からすると、音楽の授業でやった記憶はあるものの、難解なものと感じるかもしれません。
でも、音楽理論の勉強を進めるうちに、各種の情報が繋がって理解が深まっていくと思いますので、現段階で完全には理解できなかったとてしても、あまり気にせずに学習を進めましょう。
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