これより新連載「Webで学ぶフラメンコギター」を始めます。
本講座では、他ジャンル含めたギタリストに向けて奏法などの実技的な内容に的を絞って解説していきます。
この連載の概要は予告編の記事をご覧ください。
フラメンコギターの音の出し方
奏法の解説に入る前に、フラメンコギターに求められる音、フラメンコらしい音とはどういうものなのか?ということを考えてみます。
フラメンコの奏法もそういう需要を満たすために発展してきたものなので、まずは、出すべき音の方向性をイメージしておく必要があります。
フラメンコらしい音とは?
フラメンコギターは歌や踊りの伴奏楽器として発展してきました。
ラモン・モントージャ(Ramon Montoya)以降「コンサートスタイル」というソロギタースタイルの演奏も浸透しましたが、やはり基本としては「雑音が多い中で伴奏楽器としての役割を果たせる音の出し方」というのが「フラメンコらしい音」に繋がっていると思います。具体的には以下のようなような音ですね。
- パルマやサパテアード、ハレオの中でもよく聴こえる、抜けがよくて輪郭がクッキリした音
- リズム楽器としての役割が強いので、立ち上がりが良く、タイトな音
そして、コンサートスタイルのギターソロと言えども、こういう「フラメンコらしい音」というのが重要視されています。
音量について
雑音が多い中でよく聴こえる条件として、もうひとつ「音量」というのもあります。
昔はマイクを使わずに演奏していたため、音量はかなり重視されていましたが、今はマイクを通すことのほうが多く、それに伴って奏法も変化してきているので、昔ほど絶対音量は重要視されなくなってきています。
今は音量を出すことにエネルギーを使うより、フレーズの細かさ、リズムの複雑さ、繊細な強弱感、綺麗な音色、ということに重点を置いている傾向じゃないでしょうか。
実際にスペイン人の名手といわれるギタリスト達の演奏をマイク無しで目の前で聴くと、CDなどで聴いてイメージしていたより音量が全然小さくてびっくりしたものです。
とは言え、やはり「最低限の音量」というのはあって、「一音一音しっかりタッチして良く抜ける音を出すことが重要」ということは今後奏法が進化しても変わることはないでしょう。
音量に関して、これだけは言っておきたいのですが、闇雲に音量を求めて力任せに弾くのは変な癖がつくし、故障の原因にもなるので絶対にやめたほうがいいと思います。
音色について
同じナイロン弦ギターでも、フラメンコギターとクラシックギターでは、音色についての考え方が異なります。
クラシックギターでは生音での独奏が前提となるため、以下のような音色が良しとされています。
- ビビりなどが無い澄んだ音色
- 長時間聴いても疲れないふくよかな音色
- ギター単体で低音と高音のバランスがとれていること
- マイク無しでも遠くの聴衆まで届く遠達性
これに対して、フラメンコギターでは伴奏楽器としての役割が重視されるため、先ほど述べた「雑音の中での音の抜け」「リズム表現に特化した音の立ち上がり」ということのほうが、より優先されます。
ですので、フラメンコギターでは多少音がビビろうと、音域バランスが悪くなろうと「よく抜けて目立つ音」「リズム表現に適した立ち上がりの鋭い音」ということが優先され、奏法もそれに特化しているわけですね。
原則的にはそんな方向性ですが、近年ではマイク使用を前提とした、より細かいフレーズやリズム表現をするように奏法も変化してきているので、「フラメンコらしい音」というのも変化・多様化しつつあるのではないしょうか。
今は動画サイトで右手の細かいフォームなども見られるし、各自、好きなギタリストの音色を目標として、タッチの仕方などを良く研究することが大切です。
――次回は楽器や弦の選び方など、ハードウェア的な事を解説いたします!
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