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フラメンコ音楽論05~コードスケールのフラメンコへの応用

前回、フラメンコで使われる音階とコードについてやりましたが、
あれだけだとちょっと大雑把で中途半端な感じがするので、

もう少し掘り下げておきたいです。

メジャー・マイナーのキーのものは普通の音楽とだいたい同じなので、

今回も『ミの旋法』中心の話になります。

すみません、今回も音楽系以外のかたにとっては退屈かもしれませんが

考え方だけでもくみ取っていただければ、と思います。

 

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フラメンコで求められる即興性

フラメンコギターでは譜面はほとんど使いません。

とくに伴奏では歌のコード変化や

踊りのリズム変化や展開変更に即応したりせねばらず、

手持ちのネタをその場でつくりかえたり、

アドリブで合いの手を入れたりする必要が出てきます。

ギター二本いるときにもう一人のコードに乗っかって

インプロビゼーションをとる場面もあるでしょう。

フラメンコはモダンジャズ等ほどの専門的なインプロビゼーションは必要とされませんが、

その場でフレージング・簡易的作曲をする能力はかなり重要です。

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モードとコードスケール

今回はまだリズム要素には触れずに、

コードや曲展開の変化(ファルセータの長さが急に変わったり)

に対応するやり方を考えます。

具体的には『モード』と『コードスケール』の応用です。

これは即興演奏だけでなく

リハーサルの現場でファルセータを指定サイズにつくりかえたり、

自分で一からファルセータを作ったり作曲をしたりするのに必ず役立つと思います。

モードとコードスケールの概念の基本については

ゲーム音楽論のほうでも簡単に解説していますが、

ゲーム音楽論10~スケール(音階)とモード(旋法)

ここではフラメンコ音楽を学びたい楽器プレイヤー向けに、

もう少し突っ込んでみます。

モード~教会旋法

まず、モードですが、教会旋法のことです。
モードはモダンジャズのアドリブ・作曲の手法として

マイルス・デイヴィスらによって提唱され、

現在の主要な音楽理論体系として定着しています。

モダン・ジャズではコード進行が複雑化して

従来のメジャー・マイナーの概念だけでは対応しきれなくなってきたことから、

教会旋法の応用が考え出されました。

教会旋法=モードは七音階である

メジャースケール・ナチュラルマイナースケールを

七つの独立した音階(モードスケール)に分けて、

あらゆるコード進行に柔軟に対応しようというものです。

ドから始まる音階、レから始まる音階、という具合です。

以下のようにになります。

ドから~イオニアン(1,2,M3,P4,P5,M6,M7)(=メジャースケール)
レから~ドリアン(1,2,m3,P4,P5,M6,m7)
ミから~フィリジアン(1,b2,m3,P4,P5,m6,m7)(ミの旋法の元になっている)
ファから~リディアン(1,2,M3,#4,P5,M6,M7)
ソから~ミクソリディアン(1,2,M3,P4,P5,M6,m7)
ラから~エオリアン(1,2,m3,P4,P5,m6,m7)(=ナチュラルマイナースケール)
シから~ロクリアン(1,b2,m3,P4,b5,m6,m7)

コードスケール

上記7つのモードスケールを含め、

あらゆるコード進行に対して

コードとスケール(音階)を一対一で対応させようという考え方が『コードスケール』です。

これにより、あらゆるコード進行でのメロディー生成・インプロビゼーションが可能になります。

前回、ダイアトニックコードを解説しました。

メジャースケール・ナチュラルマイナースケールのダイアトニックコードには

モードスケールが一対一で対応します。
メジャーならイオニアンがIコードに
マイナーならエオリアンがImコードに
それぞれ対応します。

ーーーここまででモード・コードスケールの基本概念を解説いたしました。

一般的なメジャーキー・マイナーキーでの

モードやコードスケールといった一般的理論を解説しているところは

インターネット上にもたくさんあります。

モード・コードスケールの基本概念だけ理解してただけたら

一般的なメジャーキー・マイナーキーについては

ここでは省略させていただきます。

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ミの旋法にコードスケールを設定してみる

ミの旋法ではどうでしょうか?

前回解説したポルアリーバを例にすると、

G#音を含まないほうのダイアトニックコード、

臨時記号がつかない範囲ということですが、

これはCメジャー・Aナチュラルマイナーと平行調なので、

7つのモードスケールがそのまま適用できます。

『ミの旋法』はミから始まるので以下の通りになります。四和音で書きます。

Em7(Im7)Eフィリジアン
FM7(bIIM7)Fリディアン
G7(bIII7)Gミクソリディアン
Am7(IVm7)Aエオリアン
Bm7b5(Vm7b5)Bロクリアン
CM7(bVIM7)Cイオニアン
Dm7(bVIIm7)Dドリアン

 

ルート音が違うだけで、Cメジャー、Aナチュラルマイナーと全く同じものです。

 

I,I7の扱い

では、ミの旋法のルートコードであるE,E7はというと、

ここは前回やったEスパニッシュスケールとなります。フィリジアン+M3です。
ハーモニックマイナー・パーフェクト5thビロウ(1,b2,M3,P4,P5,m6,m7)(以下HMP5B)でも間違いではありません。構成音的には(後述)

通常の五線紙の感覚だと

E,E7コードも臨時記号が発生するので

ノンダイアトニックコードと感じるかもしれませんが

フラメンコ的感覚ではEm,Em7ではなく

E,E7がルートコード=『通常コード』じゃないでしょうか。

また、E7=AマイナーのV7(コードスケールはHMP5B)ととらえることもできますが

それも少し違って、やはり感覚的に『Eコード=I,ルート』なんですよね。

そのへんがImへの解決を前提としたV7解釈のHMP5Bと

ルート解釈のスパニッシュスケールのとらえかた・フレージングの違いというか。

フラメンコのポルアリーバE7のフレーズはAmに向かっていくとは限らないんですよね。

※ポルアリーバのE7でも次のコードがAmの場合、HMP5B的な動きになります。

 

ーーー話を戻しますが、

上で出てきた7つのダイアトニックコードとルートのE,E7の範囲で完結したとして

コードスケール通りにやると、

E、E7コードのときだけ、G#音が登場することになります。

普通の理論の範囲だとこれが基本です。

前回解説したフラメンコ的テンション使いの問題は残りますが

それがここで簡単に解説できれば、この講座も必要ないわけで

この問題はゆっくり考えていくことにして

コードスケールのフラメンコへの応用ということで話を続けます。

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ノンダイアトニックコードへの対応

I,I7は特殊な立ち位置なのがわかったと思いますが
他のノンダイアトニックコードはどうでしょうか?

ポルアリーバでよく使われるノンダイアトニックのコードスケールを考えてみましょう。

セカンダリードミナント

まず前回解説したセカンダリー・ドミナント系ですが、

次にメジャー系コードに五度進行するなら(D7→G,C7→Fなど)ミクソリディアン
次にマイナー系コードに五度進行するなら(B7→E7※,A7→Dmなど)HMP5B
となります(例は全てポルアリーバ想定)。

 

それぞれ次の解決先コードをI,Imととらえて、

そこから数えたV7のコードスケールを適用します。

※ちなみに上記のうちB7→E7進行ですが、これだけ少し特殊です。

ルートコードのE7はM3を含みますが

ベースとなっているのがフィリジアン=マイナー系ですので

B7→E7はマイナー系ドミナント進行ととらえます。

弾いてみれば感覚的にわかると思います。

F7(bII7)は?

では、F7(bII7)はどうでしょう?

ミクソリディアンでも可ですが、

これはFM7のリディアンが変化したものですので、

リディアンの7thが半音下がったリディアン7th(1,2,M3,#4,P5,M6,m7)が一番マッチします。

テンションノート入りの7thコード

ドミナント7th系は上に書いたのが基本ですが
ドミナント7thコードには、いろんなテンションノートが入る可能性があります。

 

例えばメジャー系五度進行でも
G7(b13)→CM7などの進行もありえます
この場合Gミクソリディアンだとb13が無いので他のスケールを選びたいです。

 

こういうのは付加される(可能性のある)テンションノートで決まってきます。

テンションや5度にbや#がたくさんつくオルタード系と
テンションや5度があまりbや#しないノンオルタード系に大別されますが

ノンオルタード系は原則、ミクソリディアンかリディアン7thです。

オルタード系は色々あります。

オルタード(1,b2,#2,M3,#4(=b5),m6,m7)
コービネーション・オブ・ディミニッシュ(1,b2,#2,M3,#4,P5,M6,m7)
ホールトーン(1,2,M3,#4,#5,m7)

HMP5B

オルタードやコンディミはジャズフレーズと一体になっているので、

それをそのまま応用すると、どうしてもジャズっぽくはなります。

フラメンコでのオルタードテンションや#5,b5の処理はスケールというより、

もっとピンポイントで入れていく感じでしょうか。

このへんは自分もフレージングなど要研究です。

フラメンコ的なミの旋法の平行移動

そしてもう一つ、7th系ノンダイアトニックで特筆すべきは

ミの旋法の平行移動による一時転調が多用されるという点です。

例えばポルアリーバなら、

Ab,Gの進行が出てきてGのスパニッシュ調(=短3度転調)に行ったり

Bb,A(またはAm7とか)がきてAスパニッシュ(ポルメディオ)(=4度転調)に行ったり

C,B7がくればBスパニッシュ(=5度転調)です

あとEメジャーのアレグリアスで平行調のG#スパニッシュ調は普通に行きますが

Bスパニッシュ調(=平行調からの短3度転調)や

C#スパニッシュ調(=平行調からの4度転調)などに行くこともあります。

ほとんどの場合

平行調、同主調、属調、下属調といった関係調がらみで

短三度上(=同主調)か四度上(下属調)、五度上(属調)の転調が多いです。

転調してすぐに戻ることもあれば

ノンダイアトニックというより

本格的転調というべき長さの場合もあります。

コードスケールとしては該当のスパニッシュスケールを使用します。

それに付随して転調先のbII7が出てきたら

上記のようにリディアン7thを適用します。

例えばポル・アリーバでやっていて

Ab7→G7→F7→E7となった場合のコードスケールは

Abリディアン7th→Gスパニッシュ→Fリディアン7th→Eスパニッシュ

となります。

ドミナント7th系以外のノンダイアトニックコード

ドミナント7th系以外のノンダイアトニックコードに対しては
ケースバイケースになりますが、大雑把に言うと

メジャー7thコード→リディアン
マイナー7thコード→ドリアン
マイナーメジャー7thコード→ハーモニックマイナーかメロディックマイナー(1,2,m3,P4,P5,M6,M7)
マイナー7thb5コード→ロクリアン
メジャー7th#5コード→リディアンオーギュメント(1,2,M3,#4,#5,M6,M7)
ディミニッシュコード→ディミニッシュスケール(1,2,m3,P4,b5,#5,M6,M7)

構成音的には、これでだいたいいけます。

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他にもコードスケールはたくさん存在する

今回、代表的なコードスケールをあげていきましたが

他にも、

ハーモニックマイナーとメロディックマイナーの転回形から派生するもの

(リディアン7th,リディアンオーギュメント,オルタードはメロディックマイナーの転回形。今回は長くなりすぎて無理ですが、フラメンコ的テンションの理解に結構重要なように思うので、またの機会に解説する予定でいます。)

・フラメンコ以外の民族音階がベースになったもの

・ブルーノートを含むスケール

など、7音階に限らず、色々なものが存在しますが

一定条件が揃えば全てが利用可能です。

究極的にはクロマチック(半音階)理論に行きつきますが

自由度が高すぎるとコードごとの色彩感が出にくくなるので難しいところです。

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理論をやる意味

このようにコードスケールは

場面場面で使う音階をはっきり把握できるというメリットがありますが

これで世界中全ての音楽が理解・処理できるわけではなく、

あくまであくまで一つの方法であり、

『一般的な音楽ジャンルで作曲やインプロビゼーションをする際に違和感のある音を出にくくする』ためのものです。

コードスケール自体もいろんな人が様々なものを考案したりしていて大量にあって

このコードには絶対このスケールが正解!というのも本当はありません。

フレーズとしてカッコ良ければ

例えばポルアリーバでAmに対して

AドリアンとかAフィリジアンを使っても

あと、それらをミックスして弾いても

ぜんぜん構わないわけです。

ただ、あまりたくさんの可能性を意識すると

考えることが増えて反応が遅れたりするので

敢えて使うスケールを限定しておこう、

という方向の理論体系ですね。

コードスケールやモードは。

全ての音楽理論は

『音楽』を演奏・作曲するのに、多くの人が自然の流れと感じることを

最大公約数的に皆が共有できるように体系化してある

それだけのものです。

理論がわかったからといって

それだけでいい音楽が作れたり、

素晴らしい演奏ができるわけではありません。

しかし、音楽を論理的に把握するのに

他に方法が無いのも事実で

中でも汎用性が高いコードスケールやモードの考え方は大変有用と思います。

前回、今回と解説したものは
これからフラメンコ音楽の謎に挑むに当たって
『考え方の土台』として捉えていただきたいです。

 

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フラメンコ音楽論04~フラメンコで使われる音階とコード

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