フラメンコ音楽現代史~序章【フラメンコ音楽論32】

作年末に始めたこの企画『フラメンコ音楽論』ですが、今まで下記のような内容をやってきました。

  • 歴史や用語などの基礎知識
  • コードや音階の考察
  • 形式の解説

形式の解説に半年以上費やしましたが、これからの展開を考えて整理してみました。

フラメンコ音楽論の今後の展開

フラメンコ音楽論、これからの展開ですが、この企画の趣旨は『楽器プレイヤーの視点からフラメンコの音楽を理解して演奏していく』ということなので、そちらの方向に段々と近付けていきたいです。

具体的には、下のような内容をやっていきたいと考えています。

  • フラメンコ音楽現代史
  • 音楽理論を使って、さらなる掘り下げ
  • 奏法やリズム=コンパスなどのフィジカルな話

フラメンコを演奏するということ

今までやってきた内容を見てもらえばわかると思いますが、フラメンコの音楽はカンテを中心とした伝統的なものの上に成り立っています。

フラメンコをそれらしく演奏する、ということを考えると、実際のところは

  • フラメンコのフレージングを沢山おぼえる
  • コンパスに合わせて、同じものを繰り返し繰り返し練習して、どう弾いてもコンパスから外れないように訓練する
  • ニュアンスや音の出し方が非常に重要なので、スペイン人の演奏を徹底して真似る

以上3点だと思いますが、それだと『本物を沢山聴いて、沢山練習してください!』ということで話が終了してしまうので、言葉で表現できる部分は解析・解説を試みたいと思います。

現代のフラメンコの成り立ちを知る

まず、フラメンコの音楽は、他のメジャーな音楽ジャンルに比べて情報が入手しにくく、その実体がつかみづらいです。

インターネットが無かった昔に比べれば情報量は雲泥の差ですが、ネットの情報は未整理なまま溢れているので、それはそれで情報の整理が大変です。

長年コアなフラメンコファンをやっている人以外は

  • どういうものが主流なのか?
  • 何を聴いたらいいか?
  • 何をコピーすればいいか?

っていうところから分からないと思うんですよね。

そこで、まず、現在のフラメンコ音楽の成り立ちと、これは絶対に外せないという主流と思われるものを解説していきたいです。

最初に挙げた3つの企画のうち『フラメンコ音楽現代史』ですね。

フラメンコ音楽現代史について

さて、フラメンコ音楽現代史ですが、網羅的に細かい事までやるのは、文章量的にも自分自身の知識量的にも現実的でないので、本当に重要なところに絞ってやろうと思います。

フラメンコ『音楽』としたのも、フラメンコの音楽部分にテーマを絞ろう、という意図です。

このセクションでは、最初にやった『ダイジェスト版フラメンコの歴史』よりは、かなり踏み込んだ内容になりますが、これからフラメンコの音楽を学びたい人に大きな流れを理解していただく、という趣旨でやっていきます。

ダイジェスト版『フラメンコの歴史』

フラメンコの歴史と成り立ち【フラメンコ音楽論01】
新連載『フラメンコ音楽論』第1回講座。初回はフラメンコの歴史です。フラメンコの発祥から、現代の新しいフラメンコまでの流れをダイジェスト版でお届けします。

もし本格的に興味を持たれたら、さらに細かいところは自分自身でインターネットで調べたり、書籍を読んだり、音源を入手して聴いてみることをお薦めいたします。

フラメンコの『現代史』はどこからか?

まず、どのへんから『現代史』として扱うか?ですが、ちょっと悩みます。

個人的にはパコ・デ・ルシア、カマロンあたりからと思いますが、それまでの流れを簡潔にですが、やっておきたいと思います。

第一世代

形式ごとの解説で、形式そのものの創始者として名前を連ねていた、エンリケ・エル・メジーソ、アントニオ・チャコン、マヌエル・トーレ、ニーニャ・デ・ロス・ペイネス、ラモン・モントージャ(ギター)そのあたりの世代が現代フラメンコの礎を作りました。

彼らは19世紀生まれで、1900年前後のカフェ・カンタンテ時代後期あたりから、世界大戦前後に活躍した世代です。

ここでは彼らを『第一世代』とし、それ以前は資料が極端に少なくなるため『先史時代』とします。

第二世代

現代のフラメンコの原型を作った第一世代のあとに出てきて活躍したのが、歌だとマノロ・カラコール、アントニオ・マイレーナ、ギターならニーニョ・リカルド、踊りはグラン・アントニオ、そしてアメリカに渡っていたカルメン・アマジャとサビーカス、といった人達です。

おおむね1900年~1920年くらいに生まれた世代で、彼らが活躍するのは1930年代~1970年代が中心です。
ここでは『第二世代』とします。

第三世代

この次に出てくる、ギター三人衆(パコ・デ・ルシア、マノロ・サンルーカル、ビクトル・モンヘ・セラニート)、カマロン、エンリケ・モレンテ、アントニオ・ガデスなどの世代をここでは第三世代とします。

この世代くらいから現代のフラメンコに直結していて『現代史』というのに相応しいと思います。

彼らは1930年代~1950年代くらいの生まれで(日本で言うと団塊の世代から少し上くらい)、最も活躍したのは1970年代~1990年代ですが、未だに現役で活躍している人もいます。

そのあとの現役世代を第4世代とします。

第一世代が活躍した時代から現在まで100年以上が経過しているわけですが、大まかに4つの世代に分けてみました。

この企画で現代史として扱うのは、主に第三世代からになります。

フランコ政権の影響

ここで、スペイン固有の事情として、フランコ政権の事を意識しておくべきと思います。

第二次大戦後、スペインでは1930年代にスペイン内戦があり、1939年に内戦を制したフランコが独裁政権を打ち立てます。

それ以降スペインでは、第二次大戦後も1975年にフランコが没して1978年に立憲君主制の民主主義国家として再建されるまで、フランコ独裁政権が続きました。

その間、スペインは形だけは民主主義国家でしたが、実際は独裁圧政政権の色彩が強く、文化活動に対しても政治的な干渉がありました。

そしてフラメンコなどの芸術表現も完全な自由があったわけではなかった、という事情は非常に大きいんではないでしょうか。

フラメンコに関しては、フランコ政権は保護政策的な接し方でしたので、フラメンコアーティストの待遇は悪くなかったと思いますが、あくまで伝統芸能としてのフラメンコの保護だったので、フュージョン的なものや、新しい発想のものは非常にやりにくかったと思います。

1970年代後半あたりが現代フラメンコの幕開け

カマロンやパコ・デ・ルシアの作品を聴くと顕著ですが、フランコ政権下の1970年代までは伝統的なラインを守っていますが、フランコ政権が倒れた後の時代になると、ベースやパーカッションを入れたりして一気に雰囲気が変わってますからね。

1970年代までのフラメンコは、良くも悪くも、フランコ政権下で『純粋培養』されてきたものなんだと思います。

伝統芸能としての純粋な部分が保持され、それがフラメンコの個性にもなっている一方、発展・広がり・変化という意味では40年の遅れをとってしまったことになります。

カルメン・アマジャとサビーカスも、そういう事情があってアメリカに移住していたものと思われます。

本当の意味でアーティストの自由意思で、やりたいことをやり、自由に発展させていける、そういう時代になったのは1970年代後半以降であり、自分的にはそのあたりが『フラメンコ現代史』の始まりではないかと思うんですが。

フラメンコ音楽論 前回

ルンバとサンブラ【フラメンコ音楽論31】
フラメンコ音楽論 第31回はタンゴ系・北部起源系以外の『その他の2拍子形式』で、ルンバとサンブラをご紹介します。ルンバは各種リズムパターンを詳細解説!

フラメンコ音楽論 次回

第三世代アーティストの活躍【フラメンコ音楽論33】
前回から始まったフラメンコ音楽現代史、今回はフラメンコの発展のターニングポイントとなった1970~80年代に活躍した『第三世代』のアーティストを紹介します。

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