音楽理論ライブラリーでは、今までの講座で一般的なコードとスケールの知識は、ほぼ網羅できたと思います。
調性(コード)、メロディー(スケール)、リズムというのが音楽を構成する3大要素ですが、今、このうち2つをやったわけです。
残りの1つの要素「リズム」ですが、これは音楽の横軸、時間的要素になります。
リズムに関しては、知識的に習得することよりも、メトロノームやアンサンブルで鍛えていく、という実践で向上する比率が高いと思いますが、リズムの基礎も一通り学習しておきましょう。
拍
リズムの一番基本になる単位が「拍」です。
人間の体も心臓が鼓動してリズムを刻んでいますが、1回の鼓動が1拍というわけです。
譜面では、拍は音符や休符で書かれますが、西洋音楽の音符の書き方は4/4拍子(後述)を基準に考えられています。
4/4拍子だと4分音符1つで1拍、4拍で1小節です。
また、1小節(拍子の1サイクル)を4つに分けた音ということで「4分音符」という名称になります。
音符の長さは以下のとおりです。下にいくほど音が短く、細かくなっていきます。
- 全音符(白玉)1小節分、4拍
- 2分音符(棒がついた白玉)1小節の半分、2拍
- 4分音符(棒がついた黒玉)1小節の1/4、1拍
- 8分音符(旗1本)1小節の1/8、1/2拍
- 16分音符(旗2本)1小節の1/16、1/4拍
- 32分音符(旗3本)1小節の1/32、1/8拍
- 64分音符(旗4本)1小節の1/64、1/16拍
拍子
拍を音楽のフレーズにそって何拍かの「かたまり」にしたのが「拍子」です。その曲が持つ拍のサイクルですね。
4拍子なら4拍でひとかたまり、3拍子なら3拍でひとかたまりです。
譜面だと、3/4とか6/8とか、分数の形で書かれていますが、分母は1拍の長さ、分子がひとかたまりにする拍の数で、例えば6/8拍子なら8分音符6つでひとかたまりです。
良く使われるのは、2/2拍子、2/4拍子、3/4拍子、4/4拍子、6/8拍子などですが「拍子はこの範囲にしなければいけない」というのはなく、7/4拍子とか、作ろうと思えば17/16拍子とかの変態的なものもありえます。
小節
拍子の構成拍数で音楽を区切るのが「小節」で、譜面には「小節線」が書かれます。
上の拍子の解説で使っている「ひとかたまり」という表現を、譜面に書いたのが「1小節」ということになります。
3/4拍子なら4分音符3つで1小節、4/4拍子なら4分音符4つで1小節、6/8拍子なら8分音楽6つで1小節になります。
ここまでが、拍・拍子・小節という、リズムの基本概念です。
音楽の難しいところは、同じ音楽でも人によって感じかたが違ったりするところで、譜面を書く人によって同じ曲でも違う拍子で書いたりするのはよくあることです。
そういう記譜方法の違いはありますが、要するに、その音楽が持つ時間的サイクルを理解して伝えることができれば、書き方は何でも良いとも言えます。
音楽は、拍・小節で区切られた土台の上で、様々な種類の音符を使ってリズムを表現していきます。
以下に、各種音符をまとめていきます。
符点音符
後ろに「点」がついた音符を符点音符といいます。
符点がつくと、元の音符の1.5倍の長さになります。以下に例をあげます。
- 符点4分音符
4分音符1つ+8分音符1つ(=8分音符3つ)の長さ - 符点8分音符
8分音符1つ+16分音符1つ(=16分音符3つ)の長さ
符点が複数つく場合
符点が2つ以上付く場合もあります。
符点が1つ増えるごとに「前の符点で伸びた分の半分の長さ」が足されます。例をあげてみます。
- 符点が2つ付いた4分音符
4分音符1つ+8分音符1つ+16分音符1つ=元の音符の1.75倍の長さ - 符点が3つ付いた4分音符
4分音符1つ+8分音符1つ+16分音符1つ+32分音符1つ=元の音符の1.875倍の長さ
符点音符を使わずに記譜することも可能ですが、譜面がごちゃごちゃになりやすいので、譜面をシンプルにするということで符点音符が使われます。
連符
音符の上に3とか5とかの数字が付いた音符がありますが、あれを連符といいます。
連符はベースになる拍を上に書かれた数字で等分するものです。
連符の上に付く数字に制限はなく、例えば13連符とか35連符とかもあり得ます。
2連符・4連符・8連符と通常音符
通常音符も以下のように連符であると捉えることも出来るかもしれません。
- 8分音符=2連符
- 16分音符=4連符
- 32分音符=8連符
- 64分音符=16連符
ですが、通常は8分音符・16分音符・32分音符といった通常音符は連符とはしません。
ただし、拍子が4/4以外だったり、ベースの音符が4分音符でない場合は2連符・4連符・8連符などが発生することがありますので、以下に解説します。
ベースの音符が4分音符以外の連符
連符の基本は、4分音符を1拍として、4分音符を上に書かれた数字で等分するものですが、4分音符以外をベースにした連符もあります。
2拍3連符とか3拍4連符とかですが、ベースになる音符の長さに制限はありませんし、小節をまたぐ連符もあります。
連符は指定された拍数を指定された数字で等分すればいいわけですが、複雑な連符では、5拍4連、7拍13連とかもあり得ます。
ただ、そのレベルになると読譜も難しいし、ポリリズムの範疇になってきますよね。
2拍以上の連符であれば、呼び名は「◯拍◯連符」ですが、8分音符を連符に割ったものは「半拍◯連符」と呼ばれたりします。
16分音符以下の短い音符を連符に割ることもあります。
連符の記譜ルール
連符は元になる音符の長さと分割する数によって、使用する音符と旗の数が決まっています。
まず、ベーシックな4分音符を連符に割ったものの記載方法を紹介します。
- 3連符(旗1本)元の音符の半分の長さの音符で記載される
- 5連符から7連符(旗2本)元の音符の1/4の長さの音符で記載される
- 9連符から15連符(旗3本)元の音符の1/8の長さの音符で記載される
- 17連符から31連符(旗4本)元の音符の1/16の長さの音符で記載される
次に4分音符以外の音符がベースになった連符の記載方法をご紹介します。
- 半拍○連
4分音符の半分の長さの8分音符を連符に割ったもの。音が4分音符をベースとした連符の半分の長さになり、旗が一本増える。半拍3連なら旗2本、半拍5連なら旗3本になる - 2拍○連
2拍3連や2拍5連などベース音符が2分音符の場合は、4分音符をベースとした連符の2倍の長さの音符で記載され、旗が1本減る - 4拍○連
ベース音符が全音符の場合は、4分音符をベースとした連符の4倍の長さの音符で記載され、旗が2本減る - 符点音符の2連符
たまに、上に「2」の数字がついた連符があるが、これは符点音符を2等分したもの - 3拍4連符
3拍4連はよく出くるが、譜面では4分音符4つを「4」の数字でくくる - 音価比率表記の連符
上記以外の複雑な連符は比率による表記をしたりする。例えば5:3なら3拍5連符、7:6なら6拍7連符という具合 - 入れ子式の複合連符
連符の中にさらに細かい連符が入って、入れ子式の複合連符になる場合もある。例えば3連符の中の音符の1つをさらに2分割したり(6連符相当)、3分割したり(9連符相当)といった形
表拍と裏拍
拍には、表と裏という概念があります。
例えば、4/4拍子だと拍子の頭である4分音符が表拍で、拍子記号で規定される拍の頭が表拍ということです。
そして、表拍と表拍の間に存在する拍を裏拍といいます。
4/4拍子なら、4分音符を細分化した8分音符や3連符、16分音符などの、表拍以外の拍が裏拍です。
一般的には4/4拍子なら8分音符に2等分した後ろのほうの拍を裏拍といいます。
3連符の裏拍は2つあるので、自分は「3連の2つ目の拍」とか「3連の3つ目の拍」という表現を使っています。
16分音符(4連符)の場合は、3つの裏拍が存在します。
- 1つ目の音=表
- 2つ目の音=表裏
- 3つ目の音=裏、真裏
- 4つ目の音=裏裏
自分は上のように表現したりしますが、3連符、4連符の裏拍の言い方は人によって表現が違ったりします。
16分音符の裏拍を意識した演奏はいわゆる16ビートということになりますが、1970年代あたりのファンクなどのブラックミュージックで盛んに演奏されて定着したものです。
シャッフルビート
今、ブラックミュージックの話が出ましたので、シャッフルビートも解説しておきます。
ハネもの、3連系、スイングなどとも言われるリズムですが、表拍が長く、裏拍が短く演奏されます。
- 符点8分音符(表)+16分音符(裏)
- 3連符の1つ目の音(表)+3連符の3つ目の音(裏)
譜面にするとこのようになりますが、記譜が複雑になるので、最初にシャッフルビートであることを提示(8分音符2つ=◯◯という形式で書かれる)した上で、通常の(シャッフルビートになっていない)8分音符2つで書かれたりします。
シャッフルビートはブラックミュージック特有のビートで、ブルース、R&B、ファンクなどに多く、ジャズの4ビート(スイング)もシャッフルの一種です。
また、カントリー、ロックンロールなどのアメリカの白人系音楽も、ブラックミュージックからの影響が色濃く、シャッフルビートが多用されます。
ファンクに代表されるような16ビートにおいても、表と真裏が長く、表裏と裏裏が短く演奏される傾向です。
タイとスラー
タイとスラーは、複数の音符が弧線でくくられている音を繋ぐ記号です。
タイは同じ音程の2つの音を連結するもので、符点音符やシンコペーションのフレーズを通常音符で書くとタイを多用することになります。
自分としては、タイを使って記譜してあったほうが、拍の頭や表裏が分かりやすくなるので読みやすかったりしますが。
スラーはタイと似ていますが、音程変化を伴い、「弧線でくくられた音を切れ目なくレガートに(滑らかに)演奏する」という記号です。
ギターだと、主にハンマリング・プリングで表現します。
テンポ(BPM)
拍・拍子とそれらの記譜法について学習しましたが、リズムにはもう一つ、テンポという重要要素があります。
テンポは演奏する速度ですが、一般的にBPMという単位で示されます。
BPMは”Beat per minute”の略で、1分間に何拍入るのか?ということです。
4/4拍子で120BPMなら1分間に4分音符が120個、1秒に2拍(4分音符2つ)という速さです。
クラシックなどではアンダンテとかアレグロとかの速度表記を使ったりしますが、主観的でアバウトな要素を含むので、正確を期すには、BPMを使ったほうがいいでしょう。
タイム感・テンポ感
言葉的には「リズム感」「テンポ感」「タイム感」というのはだいたい同義ですが、微妙にニュアンスが違います。大体以下のような感じと思います。
- リズム感
一般的に広い意味で使われていて、リズムに関する感覚全般のことを指す - テンポ感
だいたいどれくらのテンポか?ということや、BPMを一定にキープする感覚を指す - タイム感
3拍や4拍のリズムサイクルをキープする感覚を指す。結果としてBPMもキープすることになるのでテンポ感と曖昧に使用される
タイム感はリズムのある音楽を演奏するのに極めて重要で、ドラムスなどのテンポをキープする役割の楽器奏者にとっては最優先で鍛えるべきものです。
リズム楽器に限らず、アンサンブルにおいては拍子やBPMを正確にキープ出来ないと、致命的なことになりがちですので。
タイム感を鍛えるには、いろんなやり方があると思いますが、日常的にメトロノームやリズムトラック、生の打楽器など、一定テンポ・一定サイクルを出してくれるものに合わせて練習する、というのが基本です。
タイム感がよくなると、演奏がぐっと締まるし、アンサンブルも容易になります。
――次回はもう少し応用的なリズムの解説をしようと思います!
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