YouTubeファルセータ動画第40弾は、25年くらい前にパコ・クルス(Paco Cruz)に教わったシレンシオを演奏します。
シレンシオは、アレグリアス形式の踊りの途中でマイナーキーに転調してゆっくりのテンポで演奏される、4コンパスから10コンパス程度のセクションです。
アレグリアス形式解説記事
昨年(2020年)末にホセ・ルイス・モントン(Jose Luis Monton)作のシレシンオの演奏をアップした時にもシレンシオの解説をしていますので、是非そちらもチェックしてみて下さい。
今回は倍テンポのパルマを入れて演奏
このファルセータは、シレンシオとしてはコード進行やリズムが凝っていて難解な部類のものだと思います。
踊りのクラスなどで練習生用に弾ける感じではないし、タブラオなどでプロの伴奏に使うにしても、はっきり言って嫌がられます(笑)
ですので、あまり人前で弾く機会が無かったのですが、とても好きなファルセータなので、この場を借りて記録に残しておこうと思いまして。
このファルセータ、演奏的にはリズムのシンコペーションやアウフタクトが命なので、それが良く分かるように倍テンポ(アレグリアスのテンポ)の12拍子のリズムトラックを入れて演奏しました。
ちなみに、昨年弾いたホセ・ルイス・モントンのシレンシオも、オリジナル音源のバックに倍テンポのパルマが入っていますよね。
このファルセータの音楽的な内容
それでは、このファルセータの音楽的な内容を解説していきましょう。
まず、演奏サイズは一番スタンダードな6コンパスサイズです。
キーもスタンダードなEマイナーキーで、そんなに変わった転調もありませんし、フォーマットはめちゃめちゃ普通ですよね。
それでも難解に感じるのは、リズムとフレージングがイレギュラーで、コードの変わり目も3拍単位になっていない所が多いからだと思います。
シレンシオは、ソレアと同様に「3拍目にアクセントがある3拍子」で感じるのが一般的です。
しかし、このシレンシオは2拍単位でフレージングしている所が多く、シンコペーションやアウフタクトも激しいので、1度3拍子を見失うと復帰が難しいのです。踊り手さんが嫌がるのも頷けますよね(笑)
冒頭の2コンパスはシンプルなリズムで分かりやすいですが、3コンパス目からはシンコペーションとアウフタクトが大増量され、3拍単位と2拍単位のフレージングが入り乱れてきます。
シレンシオのファルセータって、普通は3コンパス目と5コンパス目に同じフレーズを使ったりして、それが「今どのへんにいるのか?」の目印になったりしていますが、このシレンシオはそういう分かりやすい繰り返しとかも一切無いので、これで踊るほうは途中で合っているのか不安になるんだと思います。
もう一つ、このファルセータで面白いのがコードボイシングでしょうか。
4度堆積コードや、いわゆるモーダルインターチェンジ的な借用コードを多用していて、本格的な転調は無いものの、微妙な調性感を演出していますよね。
パコ・クルスの作曲の特徴が良く出ていると思います。
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