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フラメンコ音楽論06~コード機能と代理コード

リズム形式に入る前に
スケール・コードなどの音程関係のことを一通りやっておこうと思います。
今回の内容は『コード機能』と『代理コード』です。

 

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コード機能

一般的な音楽にはコード進行があり、

コードにはそれぞれ『コード機能』がついています。

 

メジャーキー

・トニック
・ドミナント
・サブドミナント

マイナーキー
・トニックマイナー
・ドミナントマイナー
・サブドミナントマイナー

という六種類のコード機能があります。

~マイナーとつく3種はマイナーキーを、

つかない3種はメジャーキーを表現します。

マイナーキーの基本音階にはナチュラルマイナーの他に

ハーモニックマイナーとメロディックマイナーがあって、

それらの系統のコードには(~マイナーがつかない)ドミナントやサブドミナントの機能がついているものもあります。

それぞれのコード機能の働き

トニック ・ トニックマイナー

キーの中心となる響きで、安定感・終止感を伴います。

I,Imに解決している進行なら完全終止となりますが、

ルートコード以外の代理コードへの終止は不完全終止となります。

 

 

ドミナント ・ ドミナントマイナー

安定したトニックコードに対して緊張感を演出してトニックコードへの解決を促します。
V7とその裏コード(後述)のbII7がもっとも強いドミナント機能をもっています。
代理コードやドミナントマイナーはそれに比べるとやや弱くなります。

 

 

サブドミナント ・ サブドミナントマイナー

ドミナント系コードを補佐するコードです。

ドミナント系ほど緊張感は高くありませんが、

トニックのような終止感が無く、次のさらなる展開を感じさせるコードです。

通常、コード進行はドミナント系コード・サブドミナント系コードから

トニック系コードへと向かって流れる性質があります。

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代理コードと同主調系コード

同じキーの中でコード機能が同じもの同士は

『代理コード』と呼ばれ互換性があります。
例えばCメジャーキーでFとDm7は入れ換えても大丈夫だったりして、

知っているとコードワークやアレンジの可能性がぐっと広がります。

裏コード

ドミナント7thコードには『裏コード』と呼ばれる代理コードが存在します。

これは半オクターブ上(b5,#11の音程で、下に行っても同じ)のドミナント7thコードで
例えばG7→Cという5度進行があったとします。
これのG7を裏コードのDb7にして
Db7→Cという半音下降進行に置き換えるというものです。

ポルアリーバでいうとF7とB7
などが裏コード関係になります。
これらはどちらもEコードに対するドミナントになります。

セカンダリードミナントなど
ドミナント進行しているドミナント7thコードには全て適用可能なので
裏コードを考慮に入れると

そのキーで利用できるコードの範囲は一気に広がります。

パッシング・ディミニッシュ

ディミニッシュコードは短三度音程のみで構成されるコードで、
短三度で平行移動が可能です。

例えばCdim=Ebdim=Gbdim=Adimの中身は同じコードになります。

またドミナント7thコードのルート音を
半音上げるとディミニッシュコードになるので、
ドミナント代理として使われます。

パッシング・ディミニッシュは
ディミニッシュコードのこういう特性を利用して
ドミナント進行(5度進行)などをディミニッシュコードで代理して
半音進行に置き換えるものです。

裏コードに近い働きですね。

特筆すべきは、そうやってディミニッシュ変換をすると
短3度平行移動が可能になるので
そこを起点にまた違った展開が生まれたりして
作曲上凄く使い勝手がいいんですよね。

ノンダイアトニック系の代理コード

そのほか、慣用句的によく用いられる

ノンダイアトニック系の代理コードも結構な数存在しています。

ダイアトニックコードに対して構成音変化を伴うので

いつでもどこでも使えるような完全な代理関係ではありませんが

そのキーに対してドミナント系・サブドミナント系のコード機能を持つものです。

詳しくは後述します。

同主調系コードについて

平行調(CメジャーとAマイナーとポルアリーバなど)のコードやスケールは

構成音が同じなのでほぼ完全な互換性がありますが、

同主調(CメジャーとCマイナーなど、ルート音が同じもの)も『一定の』互換性があります。

例えばCメジャーキーの曲にCマイナー系のコード、Fm7などがでてくることがありますが、

これ単発であれば『転調』というほどではなく

『Cメジャーキーに対するサブドミナントマイナーコード』ととらえることができます。

同主調系の同機能コードの互換性

ルート音が同一のキーにおいて

トニック と トニックマイナー
サブドミナント と サブドミナントマイナー
ドミナント と ドミナントマイナー

これらの同主調系の同機能コードは前述のように『一定の』互換性がありますが

構成音の変化を伴うので完全な代理関係ではありません。
同じような働きをするけれど、そのままで代理コードとしての使用はできないということです。

メロディーラインによってはokの場合もありますが、

代理コードというよりアレンジという範疇になってきます。

フラメンコ音楽での例

フラメンコの音楽でも同主調が混在するものは多いです。

形式でいうと『タンギージョ・デ・カディス』など、

メジャーとマイナーを混ぜて歌われますが、ああいうイメージです。

特筆すべきはメジャー・マイナーだけでなく

フラメンコ的同主調転調として、ミの旋法も加わるので
例えばタンギージョでよく使うAのキーだと、

AメジャーとAマイナーとAスパニッシュ=ポルメディオ

さらにAマイナー平行調のEスパニッシュ=ポルアリーバ

といったキーが入り乱れることになります。

タンゴやブレリアでもこういう転調遊びが多いですが
場合によっては上記に加えて

Aメジャー平行調のC#スパニッシュなども入ってきたりします。
転調を絡める歌は以外と多いので、

そういう歌の伴奏は注意が必要です。

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メジャー・マイナーで使用するコード一覧

今まで、一般的なメジャーキー・マイナーキーのダイアトニックコードなどは省略してしまっていたので、

ここでメジャースケール、ナチュラルマイナースケール、

ハーモニックマイナースケール、メロディックマイナースケールの各ダイアトニックコードと

よく使うノンダイアトニック系の代理コードを

コード機能、コードスケールとともに一覧にしておきます。

セカンダリードミナントや裏コードは代表的な一部のものしか記載していません。
フラメンコではメジャーキー、マイナーキーの形式にはそのまま適用できます。

このなかで実際にフラメンコで使われるものは限られてきますが、

可能性としては全て使用可能です。
未解説のコードやスケールもありますが、そのうちやろうと思いますので!

略号

トニック→T
トニックマイナー→TM
ドミナント→D
ドミナントマイナー→DM
サブドミナント→SD
サブドミナントマイナー→SDM

理解しやすいように例として

同主調のCメジャー・Cマイナーで書きます。

Cメジャー

CM7 IM7(T) イオニアン
Dm7 IIm7(SD) ドリアン
Em7 IIIm7(T) フィリジアン
FM7 IVM7(SD) リディアン

G7 V7(D) ミクソリディアン

Am7 VIm7(T) エオリアン
Bm7b5 VIIm7b5(D) ロクリアン

Cナチュラルマイナー

Cm7 Im7(TM) エオリアン

Dm7b5 IIm7b5(SDM) ロクリアン

EbM7 bIIIM7(TM/SDM) イオニアン

Fm7 IVm7(SDM) ドリアン

Gm7 Vm7(DM) フィリジアン

AbM7 bVIM7(TM/SDM) リディアン

Bb7 bVII7(DM/SDM) ミクソリディアン

※メジャーキー上でbIIIM7、bVIM7、bVII7が出てきたときは

SDMとして働く場合が多いです。

Cハーモニックマイナー

ナチュラルマイナーから変化するコードのみ記載

CmM7 ImM7(TM) ハーモニックマイナー

EbM7#5 bIIIM7#5(TM/SDM) イオニアン#5(リディアンオーギュメントでもok)

G7 V7(D) HMP5B

Bdim7 VIIdim7(D) オルタードb7(ディミニッシュスケールでもok)

※メジャーキー上でbIIIM7#5が出てきたときは

SDMとして働く場合が多いです。

Cメロディックマイナー

CmM7 ImM7(TM) メロディックマイナー

Dm7 IIm7(SD) ドリアンb2(メジャーキーへの一時転調としてドリアンでもok)

EbM7#5 bIIIM7#5(TM/SDM) リディアンオーギュメント

F7 IV7(SD) リディアン7th

G7 V7(D) メロディックマイナーパーフェクト5thビロウ(HMP5Bでもok)

Am7b5 VIm7b5(TM/SDM) オルタードドリアン=スーパーエオリアン(ロクリアンでもok)

B7b5 VII7b5(D/SDM) オルタード=スーパーロクリアン

※メジャーキー上でbIIIM7#5、VIm7b5、VII7b5が出てきたときは

SDMとして働く場合が多いです。

CメロディックマイナーはCメジャーと一音しか違わず

3rdがm3かM3かという違いだけなので
メロディックマイナーのダイアトニックコードは

同主調転調の繋ぎとしてよく使われます。

 

Cルートのキーで使われるノンダイアトニック系の代理コード

一般的によく使われるものを記載します

 

DbM7 bIIM7(SDM) リディアン
Db7 bII7(D) リディアン7th

Em7b5 IIIm7b5(SD) ロクリアン

FmM7 IVmM7(SDM) メロディックマイナー

F#m7b5 #IVm7b5(SD) ロクリアン

Abm7 bVIm7(SDM) ドリアン

BbM7 bVIIM7(SDM) リディアン

ドミナント・サブドミナント代理の分数コード(onコード)

ポップスでは多用されていて

フラメンコでもたまに出てきます。

Dm7(onG) IIm7(onV)(D/SD) Vミクソリディアン

FM7(onG) IVM7(onV)(D/SD)  Vミクソリディアン

メジャー系のドミナント・サブドミナント代理コードで

ドミナントとサブドミナントの中間的な響きをもっています。

構成音的にメジャーダイアトニックの範囲内なので

IIm7、IVM7、V7、VIIm7b5に対して

代理コードとして用いることができます。

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ミの旋法にコード機能と代理コードを設定してみる

ミの旋法にコード機能を設定するとどうなるでしょうか?

前回までにやったポルアリーバのダイアトニックコードとコードスケールをベースに考えてみます。

 

ベースになるフィリジアンスケールはマイナー系なので

マイナー系のコード機能が中心になります。

ポルアリーバで書きます。

bIIとVはドミナント7th化したものが普通に出てくるので併記します。

E7(T) I7 スパニッシュ

Em7(DM) Im7 フィリジアン

 

FM7(SDM)bIIM7 リディアン

F7(D) bII7 リディアン7th

 

G7(DM) bIII7 ミクソリディアン

 

Am7(TM) IVm7 エオリアン

 

Bm7b5(SDM)Vm7b5 ロクリアン

B7(D)V7 HMP5B

 

CM7(TM) bVIM7 イオニアン

 

Dm7(SDM)bVIIm7 ドリアン

あくまで自分個人的な解釈ですが
実用上の代理関係などを考慮して設定してみました。

Am=トニックマイナーについて

これをやって改めて気がつきましたが、
Eスパニッシュ=ポルアリーバはE7(T)とAm(TM)のダブルトニックじゃないか?と思いました。

ポルアリーバはAmから始まるパターンも多くてAmはトニックマイナーに感じます。

Amへの終止の場合、E7はドミナント的に働きます。

CM7=トニックマイナーについて

トニックマイナーのCM7については、
フラメンコの原型であるソレアの歌でも

途中一旦Cコードに不完全終止してから

Eにもどっていくのでトニック系に設定。

F系コードについて

F系は悩みましたが、

FM7はサブドミナントマイナー、

F7と裏コードのB7はEに向けて完全なドミナントモーションがかかるのでドミナントとしました。

つまりF→Eの進行はドミナント進行をはらんだサブドミナントマイナー進行、となります。
実用上のF代理になるDm7とBm7b5もサブドミナントマイナーに設定。

G7とEm=ドミナントマイナーについて

G7とEm7は実用上の代理関係にあるように思います。

ですのでこの二つはセットでドミナントマイナーとしました。

G7はCへの、Em7はAmへの五度進行を想定したドミナントマイナー機能です。

EmはImコードですが、

フラメンコのコード進行の中で出てくるとあまり終止感がなくて、

どちらかというとE7よりG7と互換性が強いように思うのでこうしました。

ーーーフレーズによってはトニックマイナーっぽい場合もありますが。

ミの旋法での各種代理コード

ミの旋法上でも、今回の講座の前半に取り上げた

裏コード・パッシングdimなどの代理コードは普通に利用可能です。

同ルートのメジャー・マイナーへの一時的転調を考慮すれば

メジャー・マイナーのダイアトニック系コードの使用も可能でしょう。

ただし、ミの旋法に限らず、構成音変化を伴うコードの使用は

いつでもどこでも、というわけにはいかないので注意が必要です。

特にアンサンブルでどうしても使いたいなら

打ち合わせが必要になる場合があります。

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フラメンコ音楽特有のコードボイシング

以上でフラメンコ音楽で使われるコードとスケールの基本部分をほぼ網羅したと思います。

あとは半音ぶつかりや異弦同音の多用といったフラメンコギター独特のコードボイシングや、

一般の理論に当てはまらないテンションノートなどの問題が残ります。

『フラメンコ・テンション』

最初のほうに少し解説しましたが

カンテでは昔からスパニッシュスケールのM3音を

遊びでいろんなところに入れるので

結果的に半音ズレたようなオルタード系テンションになったりします。

ギターの半音ぶつかり・異弦同音

フラメンコギターでは、

ストレッチフォームやハイポジション+解放弦といった

めんどくさいコードのおさえかたをしてまで、

半音ぶつかり(一般音楽理論ではNGとされてたりします)や異弦同音を作りにいきます。
ギターでの響きにこだわったコードボイシングですが

これがフラメンコ音楽の大きな特徴となっています。

そのあたりは全部一気に解説はできませんので、

今後、形式解説とともに個別に扱っていきたいです。
ここでは予備知識として、
ここ数回でやった一般理論とは異なる発想の響きが多用されて、
それがフラメンコらしさを形づくっている、

ということをおぼえておいていただければ、と思います。

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関連リンク

フラメンコ音楽論05~コードスケールのフラメンコへの応用

フラメンコ音楽論07~フラメンコのリズム形式

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