ブログとWebsiteを統合しました。このブログはリンクフリーです。(2019年9月26日更新)

コード機能と代理コード【フラメンコ音楽論06】

リズム形式に入る前に、スケール・コードなどの音程関係のことを一通りやっておこうと思います。

今回の内容は『コード機能』と『代理コード』です。

コード機能

一般的な音楽にはコード進行があり、コードにはそれぞれ『コード機能』がついています。

メジャーキー
トニック
ドミナント
サブドミナント

マイナーキー
トニックマイナー
ドミナントマイナー
サブドミナントマイナー

という六種類のコード機能があります。

~マイナーとつく3種はマイナーキーを、つかない3種はメジャーキーを表現します。

マイナーキーの基本音階にはナチュラルマイナーの他にハーモニックマイナーとメロディックマイナーがあって、それらの系統のコードには(~マイナーがつかない)ドミナントやサブドミナントの機能がついているものもあります。

それぞれのコード機能の働き

トニックとトニックマイナー
キーの中心となる響きで、安定感・終止感を伴います。Ⅰ,Ⅰmに解決している進行なら完全終止となりますが、ルートコード以外の代理コードへの終止は不完全終止となります。

ドミナントとドミナントマイナー
安定したトニックコードに対して緊張感を演出してトニックコードへの解決を促します。Ⅴ7とその裏コード(後述)の♭Ⅱ7がもっとも強いドミナント機能をもっています。代理コードやドミナントマイナーはそれに比べるとやや弱くなります。

サブドミナントとサブドミナントマイナー
ドミナント系コードを補佐するコードです。ドミナント系ほど緊張感は高くありませんが、トニックのような終止感が無く、次のさらなる展開を感じさせるコードです。

通常、コード進行はドミナント系コード・サブドミナント系コードからトニック系コードへと向かって流れる性質があります。

代理コードと同主調系コード

同じキーの中でコード機能が同じもの同士は『代理コード』と呼ばれ互換性があります。

例えばCメジャーキーでFとDm7は入れ換えても大丈夫だったりして、知っているとコードワークやアレンジの可能性がぐっと広がります。

裏コード

ドミナント7thコードには『裏コード』と呼ばれる代理コードが存在します。

これは半オクターブ上(♭5,♯11の音程で、下に行っても同じ)のドミナント7thコードで、例えばG7→Cという5度進行があったとします。

これのG7を裏コードのD♭7にしてD♭7→Cという半音下降進行に置き換えるというものです。

ポルアリーバでいうとF7とB7などが裏コード関係になります。
これらはどちらもEコードに対するドミナントになります。

セカンダリードミナントなど、ドミナント進行しているドミナント7thコードには全て適用可能なので、裏コードを考慮に入れるとそのキーで利用できるコードの範囲は一気に広がります。

パッシング・ディミニッシュ

ディミニッシュコードは短三度音程のみで構成されるコードで、短三度で平行移動が可能です。

例えばCdim=E♭dim=G♭dim=Adimの中身は同じコードになります。

またドミナント7thコードのルート音を半音上げるとディミニッシュコードになるので、ドミナント代理として使われます。

パッシング・ディミニッシュはディミニッシュコードのこういう特性を利用して、ドミナント進行(5度進行)などをディミニッシュコードで代理して半音進行に置き換えるものです。
裏コードに近い働きですね。

特筆すべきは、そうやってディミニッシュ変換をすると短3度平行移動が可能になるので、そこを起点にまた違った展開が生まれたりして、作曲上凄く使い勝手がいいんですよね。

ノンダイアトニック系の代理コード

そのほか、慣用句的によく用いられるノンダイアトニック系の代理コードも結構な数存在しています。

ダイアトニックコードに対して構成音変化を伴うので、いつでもどこでも使えるような完全な代理関係ではありませんが、そのキーに対してドミナント系・サブドミナント系のコード機能を持つものです。
詳しくは後述します。

同主調系コードについて

平行調(CメジャーとAマイナーとポルアリーバなど)のコードやスケールは構成音が同じなのでほぼ完全な互換性がありますが、同主調(CメジャーとCマイナーなど、ルート音が同じもの)も『一定の』互換性があります。

例えばCメジャーキーの曲にCマイナー系のコードであるFm7などがでてくることがありますが、これ単発であれば『転調』というほどではなく『Cメジャーキーに対するサブドミナントマイナーコード』ととらえることができます。

同主調系の同機能コードの互換性

ルート音が同一のキーにおいて

  • トニックとトニックマイナー
  • サブドミナントとサブドミナントマイナー
  • ドミナントとドミナントマイナー

これらの同主調系の同機能コードは前述のように『一定の』互換性がありますが、構成音の変化を伴うので完全な代理関係ではありません。

同じような働きをするけれど、そのままで代理コードとしての使用はできないということです。

メロディーラインによってはokの場合もありますが、代理コードというよりアレンジという範疇になってきます。

フラメンコ音楽での例

フラメンコの音楽でも同主調が混在するものは多いです。

形式でいうと『タンギージョ・デ・カディス』など、メジャーとマイナーを混ぜて歌われますが、ああいうイメージです。

特筆すべきはメジャー・マイナーだけでなく、フラメンコ的同主調転調としてミの旋法も加わるので、例えばタンギージョでよく使うAのキーだと

  • Aメジャー
  • Aマイナー
  • Aスパニッシュ=ポルメディオ

さらには、Aマイナー平行調のEスパニッシュ=ポルアリーバといったキーが入り乱れることになります。

タンゴやブレリアでもこういう転調遊びが多いですが、場合によっては上記に加えて、Aメジャー平行調のC♯スパニッシュなども入ってきたりします。

転調を絡める歌は以外と多いので、そういう歌の伴奏は注意が必要です。

メジャー・マイナーで使用するコード一覧

今まで、一般的なメジャーキー・マイナーキーのダイアトニックコードなどは省略してしまっていたので、ここでメジャースケール、ナチュラルマイナースケール、ハーモニックマイナースケール、メロディックマイナースケールの各ダイアトニックコードと、よく使うノンダイアトニック系の代理コードをコード機能、コードスケールとともに一覧にしておきます。

セカンダリードミナントや裏コードは代表的な一部のものしか記載していません。
フラメンコではメジャーキー、マイナーキーの形式にはそのまま適用できます。

このなかで実際にフラメンコで使われるものは限られてきますが、可能性としては全て使用可能です。

未解説のコードやスケールもありますが、そのうちやろうと思いますので!

略号
トニック→T
トニックマイナー→TM
ドミナント→D
ドミナントマイナー→DM
サブドミナント→SD
サブドミナントマイナー→SDM

理解しやすいように例として、同主調のCメジャー・Cマイナーで書きます。

Cメジャー

CM7 ⅠM7(T) イオニアン
Dm7 Ⅱm7(SD) ドリアン
Em7 Ⅲm7(T) フィリジアン
FM7 ⅣM7(SD) リディアン
G7 Ⅴ7(D) ミクソリディアン
Am7 Ⅵm7(T) エオリアン
Bm7♭5 Ⅶm7♭5(D) ロクリアン

Cナチュラルマイナー

Cm7 Ⅰm7(TM) エオリアン
Dm7♭5 Ⅱm7♭5(SDM) ロクリアン
E♭M7 ♭ⅢM7(TM/SDM) イオニアン
Fm7 Ⅳm7(SDM) ドリアン
Gm7 Ⅴm7(DM) フィリジアン
A♭M7 ♭ⅥM7(TM/SDM) リディアン
B♭7 ♭Ⅶ7(DM/SDM) ミクソリディアン

※メジャーキー上で♭ⅢM7、♭ⅥM7、♭Ⅶ7が出てきたときはSDMとして働く場合が多いです。

Cハーモニックマイナー

ナチュラルマイナーから変化するコードのみ記載

CmM7 ⅠmM7(TM) ハーモニックマイナー
E♭M7♯5 ♭ⅢM7♯5(TM/SDM) イオニアン♯5(リディアンオーギュメントでもok)
G7 Ⅴ7(D) HMP5B
Bdim7 Ⅶdim7(D) オルタード♭7(ディミニッシュスケールでもok)

※メジャーキー上で♭ⅢM7♯5が出てきたときはSDMとして働く場合が多いです。

Cメロディックマイナー

CmM7 ⅠmM7(TM) メロディックマイナー
Dm7 Ⅱm7(SD) ドリアン♭2(メジャーキーへの一時転調としてドリアンでもok)
E♭M7♯5 ♭ⅢM7♯5(TM/SDM) リディアンオーギュメント
F7 Ⅳ7(SD) リディアン7th
G7 Ⅴ7(D) メロディックマイナーパーフェクト5thビロウ(HMP5Bでもok)
Am7♭5 Ⅵm7♭5(TM/SDM) オルタードドリアン=スーパーエオリアン(ロクリアンでもok)
B7♭5 Ⅶ7♭5(D/SDM) オルタード=スーパーロクリアン

※メジャーキー上で♭ⅢM7♯5、Ⅵm7♭5、Ⅶ7♭5が出てきたときはSDMとして働く場合が多いです。

CメロディックマイナーはCメジャーと一音しか違わず、3rdがm3かM3かという違いだけなのでメロディックマイナーのダイアトニックコードは同主調転調の繋ぎとしてよく使われます。

Cルートのキーで使われるノンダイアトニック系の代理コード

一般的によく使われるものを記載します
D♭M7 ♭ⅡM7(SDM) リディアン
D♭7 ♭Ⅱ7(D) リディアン7th
Em7♭5 Ⅲm7♭5(SD) ロクリアン
FmM7 ⅣmM7(SDM) メロディックマイナー
F♯m7♭5 ♯Ⅳm7♭5(SD) ロクリアン
A♭m7 ♭Ⅵm7(SDM) ドリアン
B♭M7 ♭ⅦM7(SDM) リディアン

ドミナント・サブドミナント代理の分数コード(onコード)

ポップスでは多用されていて、フラメンコでもたまに出てきます。

Dm7(onG) Ⅱm7(onⅤ)(D/SD) Ⅴミクソリディアン
FM7(onG) ⅣM7(onⅤ)(D/SD)  Ⅴミクソリディアン

これらはメジャー系のドミナント・サブドミナント代理コードで、ドミナントとサブドミナントの中間的な響きをもっています。

構成音的にメジャーダイアトニックの範囲内なので、Ⅱm7、ⅣM7、Ⅴ7、Ⅶm7♭5に対して代理コードとして用いることができます。

ミの旋法にコード機能と代理コードを設定してみる

ミの旋法にコード機能を設定するとどうなるでしょうか?
前回までにやったポルアリーバのダイアトニックコードとコードスケールをベースに考えてみます。

ベースになるフィリジアンスケールはマイナー系なので、マイナー系のコード機能が中心になります。
キーはポルアリーバで書きます。

♭ⅡとⅤはドミナント7th化したものが普通に出てくるので併記します。

E7(T) Ⅰ7 スパニッシュ
Em7(DM) Ⅰm7 フィリジアン
FM7(SDM)♭ⅡM7 リディアン
F7(D) ♭Ⅱ7 リディアン7th
G7(DM) ♭Ⅲ7 ミクソリディアン
Am7(TM) Ⅳm7 エオリアン
Bm7♭5(SDM)Ⅴm7♭5 ロクリアン
B7(D)Ⅴ7 HMP5B
CM7(TM) ♭ⅥM7 イオニアン
Dm7(SDM)♭Ⅶm7 ドリアン

あくまで自分個人的な解釈ですが、実用上の代理関係などを考慮して設定してみました。

Am=トニックマイナーについて

これをやって改めて気がつきましたが、Eスパニッシュ=ポルアリーバはE7(T)とAm(TM)のダブルトニックじゃないか?と思いました。

ポルアリーバはAmから始まるパターンも多くてAmはトニックマイナーに感じます。

Amへの終止の場合、E7はドミナント的に働きます。

CM7=トニックマイナーについて

トニックマイナーのCM7については、フラメンコの原型であるソレアの歌でも、途中一旦Cコードに不完全終止してからEにもどっていくのでトニック系に設定。

F系コードについて

F系は悩みましたが、FM7はサブドミナントマイナー、F7と裏コードのB7はEに向けて完全なドミナントモーションがかかるのでドミナントとしました。

つまりF→Eの進行はドミナント進行をはらんだサブドミナントマイナー進行、となります。

実用上のF代理になるDm7とBm7♭5もサブドミナントマイナーに設定。

G7とEm=ドミナントマイナーについて

G7とEm7は実用上の代理関係にあるように思います。
ですのでこの二つはセットでドミナントマイナーとしました。

G7はCへの、Em7はAmへの五度進行を想定したドミナントマイナー機能です。

EmはⅠmコードですが、フラメンコのコード進行の中で出てくるとあまり終止感がなくて、どちらかというとE7よりG7と互換性が強いように思うのでこうしました。
――フレーズによってはトニックマイナーっぽい場合もありますが。

ミの旋法での各種代理コード

ミの旋法上でも、今回の講座の前半に取り上げた

裏コード・パッシングdimなどの代理コードは普通に利用可能です。

同ルートのメジャー・マイナーへの一時的転調を考慮すればメジャー・マイナーのダイアトニック系コードの使用も可能でしょう。

ただし、ミの旋法に限らず、構成音変化を伴うコードの使用は、いつでもどこでも、というわけにはいかないので注意が必要です。
特にアンサンブルでどうしても使いたいなら、打ち合わせが必要になる場合があります。

フラメンコ音楽特有のコードボイシング

以上でフラメンコ音楽で使われるコードとスケールの基本部分をほぼ網羅したと思います。

あとは半音ぶつかりや異弦同音の多用といったフラメンコギター独特のコードボイシングや、一般の理論に当てはまらないテンションノートなどの問題が残ります。

『フラメンコ・テンション』

最初のほうに少し解説しましたが、カンテでは昔からスパニッシュスケールのM3音を遊びでいろんなところに入れるので、結果的に半音ズレたようなオルタード系テンションになったりします。

ギターの半音ぶつかり・異弦同音

フラメンコギターでは、ストレッチフォームやハイポジション+解放弦といっためんどくさいコードのおさえかたをしてまで、半音ぶつかり(一般音楽理論ではNGとされてたりします)や異弦同音を作りにいきます。

ギターでの響きにこだわったコードボイシングですが、これがフラメンコ音楽の大きな特徴となっています。

そのあたりは全部一気に解説はできませんので、今後、形式解説とともに個別に扱っていきたいです。

ここでは予備知識として、ここ数回でやった一般理論とは異なる発想の響きが多用されて、それが『フラメンコらしさ』を形づくっている、ということをおぼえておいていただければ、と思います。

フラメンコ音楽論 前回

コードスケールのフラメンコへの応用【フラメンコ音楽論05】
フラメンコ音楽論 第5回。前回まででフラメンコで使うコードやスケールの基本的なことを解説しましたが、今回は『コードスケール』のフラメンコへの応用というテーマです。

フラメンコ音楽論 次回

フラメンコのリズム形式【フラメンコ音楽論07】
フラメンコ音楽論 第7回です。前回までコードやスケール等をやってきましたが今回はフラメンコのリズム形式にはどんなものがあるのか?まずは分類・一覧にしてみます。

コメント