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フラメンコ音楽論22~自由リズムのファンダンゴ(マラゲーニャ、グラナイーナなど)

ファンダンゴはもともと三拍子の民謡ですが
フラメンコに取り入れられて以降
カンテの技巧を聴かせるために
リズムを崩して歌われるようになります。

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自由リズム(リブレ)のファンダンゴの概要

ファンダンゴ・デ・ウェルバやファンダンゴ・アバンドラオは
民謡としてのファンダンゴの原形を残していますが
自由リズム化したファンダンゴは
フラメンコのオリジナルなものに変化している
と言ってもいいと思います。

自由リズム=リブレのファンダンゴはカフェ・カンタンテの時代を通して
大発展して歌い手個人によるバリエーションが多数できてきます。

後述するマラゲーニャ、グラナイーナなどは
マラガ、グラナダなどの
ファンダンゴ地方バリエーションが元ネタになり
フラメンコの歌い手によってアレンジされたものです。

リブレのファンダンゴはカンテのための形式で踊りは入りませんが、
踊りの中に演出として
リブレのパート(ファンダンゴとは限りませんが)を入れることはよくあります。

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自由リズムのファンダンゴ形式の歌伴奏について

ここでは、カンテの細かい内容までは深入りせず
伴奏者の視点から音楽的なことに絞って解説していきます。

まず、自由リズムのファンダンゴに共通する歌伴奏の基本について解説します。

自由リズムのファンダンゴは展開とやるべきことがだいたい決まっているので
それを覚えるのが大事です。

自由リズムのファンダンゴ系形式のコード進行

ファンダンゴ・デ・ウェルバのときに解説した6コンパスのコード進行が基本になりますが
セクションごとにギターでオチをつけて(合いの手をいれて)
最後のF→Eをとらえて締めくくります。

表にすると以下のようになります。
キーはポルアリーバで書きますが
グラナイーナの場合は五度上に移調します。
サリーダの部分は省略してます。

G7→C(Cに音が落ちたら合いの手)
C→F(またはG7)
G7→C(Cに音が落ちたら合いの手)
C→G7
G7→C
C7→F(Fに音が落ちたら締めくくり態勢に)
F→E(歌がEに落ちるタイミングに合わせて締めくくる)

※合いの手に関しては
書いていない段も歌の間の取り方などによっては入れていく

歌詞も聴きながら判断する

自由リズムの歌は歌い手が自由に伸縮させながら歌われるため
コード進行がわかっていたとしても
コードを変えるタイミングや
落ちをつけるタイミングが微妙だったりします。

音程だけ聴いていても、遊びも多いので迷うことがあります。
そういう場合、もう1つの判断基準として歌詞があります。
歌詞の位置でどのへんまで来てるか判断します。
歌詞的にオチがつく前に
ギターが先にオチをつけてしまうのはおかしいので
音程が落ちたかな?と思っても
歌詞(音節)が切れるところまで待ってから
合いの手を入れたほうがいいでしょう。

――大基本は以上ですが、
形式ごとにもう少し細かく見ていきます。

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ファンダンゴ・ナトゥラル(Fandango Natural)

単にファンダンゴと言う場合が多いですが
ファンダンゴ・デ・ウェルバなどと差別化させる意味で
ファンダンゴ・ナトゥラルとよびます。

後で解説するマラゲーニャやグラナイーナも
ファンダンゴ・ナトゥラルの一種なんですが
ここではそれらに分類されない
もっとファンダンゴの原形に近いものを
『ファンダンゴ・ナトゥラル形式』として扱います。

ファンダンゴ・ナトゥラルは
後述のマラゲーニャなどと比べると
短い歌い回しで簡潔に歌われることが多く
上で書いた基本コード進行通りの場合が大半です。

主にポル・アリーバで演奏されます。

カポの位置はファンダンゴ・デ・ウェルバ等と同様で

女性~6カポ(実音Bbスパニッシュ)
男性~3カポ(実音Gスパニッシュ)
くらいです。

ファンダンゴ・ナトゥラルのファルセータ

ファンダンゴ・ナトゥラルの場合
前奏、間奏などのファルセータ部分は
ファンダンゴ・ウェルバと同じような3拍子
または三拍子を少し崩したリブレで演奏される場合が多いです。
ファンダンゴ・デ・ウェルバの間奏に弾かれるものをそのまま使用したりします。

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マラゲーニャ(Malagueña)

複数形~Malagueñas

マラガのファンダンゴが元ネタになった
ファンダンゴ・ナトゥラルのバリエーションです。
歌は技巧を凝らして
たっぷりと間を開けて歌われます。

マラガ産のファンダンゴ曲種は他に
ベルディアーレス、ハベーラス、ハベゴーテスなどがありますが

民謡のファンダンゴの原形に近い三拍子でやっているのがベルディアーレスやハベーラス

カフェカンタンテで聴かせるために
フラメンコの歌手がマラガのファンダンゴを元に作り上げたリブレ形式がマラゲーニャです。

ちなみにラテンの有名曲であるマラゲーニャはまたぜんぜん別物です。

マラゲーニャの後歌にはアバンドラオのベルディアーレスなどが歌われます。

主にポル・アリーバで演奏され
カポの位置もファンダンゴ・ナトゥラルと同様です。

代表的なバリエーションとして
エンリケ・デル・メジーソが創作したスタイルがあります。
メジーソのスタイルはAmコードに寄り道するのが特徴的です。

マラゲーニャの歌のコード進行

マラゲーニャのコード進行は
6コンパスのファンダンゴ基本進行に経過コードを入れて引き伸ばしたものです。

マラゲーニャの特長として
ファンダンゴ基本進行の最初のFコードはG7で代理する場合が多いです。

メジーソのマラゲーニャ(Amに行くタイプ)では
ファンダンゴ基本進行のFコードが入る位置にAmコードを使います
メジーソのマラゲーニャのコード進行例を以下に書いておきます。

メジーソのマラゲーニャ(Amに行く長いタイプ)

自由リズムなのでコードの長さは不定形ですが、
歌の一段落を一段で書きます。
G7→C
C→Am(合いの手)
Am→D7→G7
G7→C(合いの手)
C→C(ア~~イ~~、じゃじゃん~)
C→D7→G7
G7→C(合いの手)
C→Am(合いの手)
Am→D7→G7
F→E

マラゲーニャのファルセータ

マラゲーニャのファルセータ部分ですが、ファンダンゴ・ナトゥラルと同様に
比較的ハッキリした3拍子になることが多いです。

ファンダンゴ・ナトゥラルの場合はファンダンゴ・デ・ウェルバと同じネタを使ったりして
二拍単位フレージングも多用しますが
マラゲーニャのファルセータはノーマルな三拍子に近いものが多く
フレージングは三拍単位、コードも三拍子の頭で変わるものが多いです。
アルペジオやトレモロを多用した繊細な表現が多用されます。

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グラナイーナ(Granaina)

複数形~Granainas

グラナダのファンダンゴが元ネタになって
アントニオ・チャコンによって確立されました。

前回解説したファンダンゴ・デ・グラナダと紛らわしいですが
ファンダンゴ・デ・グラナダは三拍子の民謡色が強いものです。

Bスパニッシュによるギター伴奏スタイルは
チャコンの相方であったラモン・モントージャが現在の形を作りました。

グラナイーナには
グラナイーナとメディア・グラナイーナがありますが、歌の長さが違います。

グラナイーナのキー

ギター伴奏はBスパニッシュで演奏され
独特の叙情的な響きがあるのでギターソロ曲としても人気があります。

歌の部分は
ファンダンゴ・ナトゥラルを
Bスパニッシュに移調したものが基本ですが(かなりキーが上がります)
歌は修飾音符やメリスマ(小節し)が多いです。

メロディーライン自体はマラゲーニャに似た雰囲気ですが
コード進行はファンダンゴの基本進行に近く
経過コードや変化はマラゲーニャほどは多く無いです。

曲の一番最後の締めくくりはEマイナーコードで終わることがあります。

グラナイーナのファルセータ

Bスパニッシュキーでのギター演奏はラモン・モントージャが編み出したもので
ファルセータも彼がやっていたスタイルがベースになっています。
フレージング的にはマラゲーニャに近いですが

・たまに2拍子的になったりもする
・細かく複雑なアルペジオを多用
・解放弦を使った半音ぶつかりを多用

という特徴があり幻想的に響きます。
この特徴をさらに突き詰めたのが
次に紹介するギターソロ版のロンデーニャです。

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ギターソロのロンデーニャ(Rondeña)

複数形~Rondeñas

ロンデーニャはロンダのファンダンゴ地方バリエーションです。
本来は前回解説したようにアバンドラオのリズムを持つファンダンゴです。

ロンデーニャにはもうひとつ、
変則調弦で演奏するギターソロのスタイルが存在します。
6弦をD、3弦をF#に下げて
Dスパニッシュの自由リズムで演奏されます。

ラモン・モントージャが創作したものですが
現代のギタリストもロンデーニャのギターソロは
ラモン・モントージャのスタイルをベースにして演奏しています。
ベースは3拍子ですが部分的に2拍子的なリフが混じったりします。

このラモン・モントージャという人は
現在のフラメンコギターの語彙の三割くらいはこの人一人で作ったんでは?
と思えるくらいだし
数百年に一人というレベルの
凄まじい天才だったのだな~と感じます。

――リブレ系ファンダンゴは二回に分けて解説します。
次回はカンテ・レバンテをやろうと思います!

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関連リンク

フラメンコ音楽論21~ファンダンゴ・アバンドラオ

フラメンコ音楽論23~カンテ・レバンテ(タランタ、ミネーラなど)

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