フラメンコ音楽論は約半年ぶりの再開となります。
直近の第46回から第49回では「日本人としてのフラメンコへの取り組み」というテーマを書きました。
この4つの記事で書いた「日本人としてのフラメンコへの取り組み」の内容をまとめると、以下の4つの目的に集約されてくると思います。
- スペイン人のフラメンコに近付きたい
- 日本国内でのフラメンコ普及させたい
- 日本のフラメンコの音楽面を充実さたい
- 新型コロナ等に対処して活動を継続したい
今回からの新シリーズでは、第46回から第49回の内容を踏まえつつ、これら4つの目的に近づくためのアイデアを考えていきたいと思いますが、今回ご提案するのは「フラメンコの裾野を広げるコンテンツ戦略」というものです。
これは上記4つの目的のうち、2.3.4.に深く関わるものですね。
フラメンコ系コンテンツを作る上では「1.スペイン人のフラメンコに近付きたい」という事も非常に大切なのですが、これは日本のフラメンコにとっては普遍的な課題であり、このブログの全体テーマでもあるので、今回は上記2.3.4.の目的達成に絞った「コンテンツ戦略」を執筆する事としました。
「コンテンツ」「メディア」とは?
今回のテーマでは「コンテンツ」と「メディア」という言葉を多用することになると思うのですが、この2つの言葉は混同されやすいものなので、最初に定義しておきましょう。
コンテンツとは「情報の中身」の事ですが、例えば、このブログの文章もそうですし、動画、静止画、音源、さらには会場でのライブ演奏や現物商品なども「コンテンツ」ということになります。「作品形態」「商品形態」と言いかえることも出来ます。
もう一方のメディアとは「発信媒体」の事で、TV、ラジオ、インターネット、書籍、CD・DVDなどの他、会場への直接集客もアナログメディアの一つと言えます。「視聴形態」と言いかえることも出来ますね。
そして、コンテンツとメディアの組み合わせによって様々な形態が生まれてきます。
これから、フラメンコの普及・発展に役立ちそうなコンテンツと、その発信方法を考えていこうと思いますが、今回はこれから展開していくコンテンツ戦略の全体像についてお話しようと思います。
今後はどんなコンテンツが好まれるのか?
今回の「フラメンコの裾野を広げるコンテンツ戦略」の目的は、新規ファン層を獲得すると同時に、的確な啓発も行ってライブや教室に足を運んでくれるコア層も増やしていく事です。
良質なコンテンツの安定供給がファン獲得の絶対条件である事は今も昔も変わりありませんが、その供給方法はどんどん変わってきていて、それに伴って「どういうものがウケるのか?」という方法論も急激に変化しています。
日本の場合、前世紀まではCDやライブチケットを大量に売ろうと思ったらマニアックなものは敬遠されて、単純明快な分かりやすいものが好まれる傾向がありました。
制作側も、使い古された「売れるパターン」の分かりやすいものを作って、あとはTVで煽って売るほうが圧倒的に楽だったために、画一的なコンテンツが量産されてきた歴史があり、ハッキリ言って本格的なフラメンコとは全く相容れないものでした。
ですが、近年の動画サイトの普及により、そういう状況が変化しつつあります。
今はTVをつけなくても手元にあるスマートフォンなどであらゆるコンテンツを視聴できる環境ですので、視聴者の傾向が変わるのも当然で、とくに若い世代はその変化が顕著です。
変化の傾向としては、視聴者が成熟してマニアックなものも評価されるようになってきているので、フラメンコなどのマニアックなジャンルの人間にとってはやりやすい環境になりつつあると感じます。
今後はしっかりした芯のあるコンテンツ(フラメンコ系であれば、本格的なフラメンコのバックボーンが感じられるコンテンツ)が評価されてくるのかな?と思うし、逆に「売りたい」「ウケたい」と思って前世紀的なステレオタイプなものをやっても、バックボーンがしっかりしていないと視聴者に見抜かれて、結局「ダサい」ということになるんではないかと。
これからは「どうせ一般大衆にはわからない」という姿勢ではダメなんだと思います。
ただ、こういう「良いコンテンツとは?」みたいな話は個人の主観で左右される難しい問題をはらんでいますよね。
自分個人的には、フラメンコを良く分かっている人が必要に応じてフラメンコ要素の濃淡を調整してオリジナルなものを作るのは歓迎されるべきことだと思うし、あとは他ジャンルのコンテンツと競合して選ばれるだけのクオリティーを確保出来るか?の問題になってくると考えています。
鍵になる4つのテーマ
「フラメンコの裾野を広げるコンテンツ戦略」ですが、扱う話題も多岐に渡ってきますので、以下の4つの小テーマに分けて書いていこうと思います。
①フラメンコのポップ化・フュージョン化
フラメンコのポップ化・フュージョン化はフラメンコ音楽の普及という事では鍵となるものだと思います。
この音楽ジャンルはスペインでは1970年代頃から演奏され始め、純フラメンコと渾然一体となりながら現在進行形で発展中ですが、ヒット曲一発で爆発的な普及効果が見込めるし、他ジャンルとの敷居を低くすることで新規のリスナーが入って来やすくなるでしょう。
②フラメンコギターのギター音楽化
フラメンコギターを「ギター音楽」としてギターファンにアピールしていく道です。
日本人はギター好きな国民性なので、他ジャンルのギター人口をフラメンコに取り込む事を考えます。
③バイレのコンテンツ化
日本のフラメンコ人口の80%以上を占めるバイレ(舞踊)のコンテンツ化も考えてみたいです。
その一つは、バイレをフラメンコ系の音楽コンテンツに組み込むというアイデアです。
「三位一体の純フラメンコを動画コンテンツ化する」というのをさらに一歩進めて、フラメンコ系MVのビジュアルとしてバイレを入れたり、逆にバイレがメインの動画に作り込まれた音楽を付けたり、といったコラボレーションはフラメンコの魅力を最大限に引き出すのではないでしょうか?
④メディアミックス戦略
メディアミックスというのは「一つのコンテンツを様々な形に作り替えて、複数のメディアに乗せて発信することで、様々な層へアピールしよう」というものですが、これのフラメンコへの応用を考えてみます。
様々な可能性が考えられますが、フラメンコをテーマにしたアニメや漫画がヒットしたら面白い事になりそうですよね!
――次回から、上記4つのテーマを個別に書いていこうと思っていますので、どうぞお楽しみに!
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