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カンティーニャス・アレグリアス(Cantiñas,Alegrias)【フラメンコ音楽論11】

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カンティーニャス系の形式概要

形式名としてはアレグリアス(Alegrias)が有名ですが、アレグリアスの系統の歌はカンティーニャス(Cantiñas)という歌から派生しています。

カンティーニャスはアラゴン、バレンシア周辺の民謡・舞踊である『ホタ』の旋律と、ソレアのリズムが組合わさって発生したといわれています。

長調の2コードないし3コードでできた旋律をソレア(ポル・ブレリア)のコンパスにのせて歌います。

この系統の歌はカディスを中心に発展しました。

タンギージョ・デ・カディスなどもそうですが、カディスでは長調が中心になった形式が発展しています。
土地柄でしょうね。

踊りのアレグリアスの最後につくブレリアは通常ブレリア・デ・カディスが歌われます。

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カンティーニャスからの派生形式

カンティーニャスから派生した形式として、アレグリアスのほかにミラブラス(Mirabras)、ロメーラス(Romeras)カラコレス(Caracoles)などがあります。

カンティーニャス系の歌は複数形で呼ばれることのほうが多いですね。
この単数形複数形の使い分けが自分も謎なんですが、言いやすいほうで言ってるだけのような……

形式名としてのカンティーニャス

ちなみに、カンティーニャスは単体形式名としても残っているので、そのあたりちょっとわかりにくいかもしれません。

自分の解釈ですが、アレグリアスならアレグリアス、ロメーラスならロメーラスで、はっきり分類できる曲は固有の形式名がついていて『分類が微妙な伝統的なタイプの歌』をカンティーニャスと呼んでいる、という感じかと。

現在カンティーニャスと呼ばれる歌とアレグリアスは一部ほとんど同じメロディだったりで、歌い手によっても解釈の別れるところと思います。

カンティーニャス系の中心的形式はアレグリアス

このようにカンティーニャス系はバリエーションも多く、全部の解説は物凄い文章量になるのでここではカンティーニャス系で一番演奏頻度が高いアレグリアスを中心に扱います。

カンティーニャス系の形式のなかでアレグリアスがメジャーになったのは、踊りの様式がはっきり確立されていて、レパートリーに加える踊り手が圧倒的に多かったのが要因としてあると思います。

踊りの展開・様式がはっきりした形式なので、12拍子系の中では初心者でも取り組みやすい形式とされています。

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カンティーニャス系形式のコンパス

ソレアがベースとなっていますが、ソレアよりかなり速いテンポです。

リズムパターンとしてはソレア・ポル・ブレリアとほぼ同様です。

1 2 ③ 4 5 6 ⑦ ⑧ 9 ➉ 11 ⑫

リズムパターンとしてはソレポルと同じですが、カンティーニャス系のほうがより軽快な感じで、テンポもソレポルよりやや速めの場合が多く、ゆっくりしたブレリアくらいのテンポで演奏されることもあります。

中心になるテンポは140~180BPMくらいです。

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カンティーニャ系で使われるキー

アレグリアスは普通Eメジャーで演奏されます。

Eメジャーは、メジャーキーの中ではギターの音域が最も広く使えるので、華やかな表現ができます。

Eメジャーの場合のカポタストの位置は
女性→4カポ(実音A♭メジャー)
男性→カポ無し(Eメジャー)
あたりが多いです。

アレグリアスでも場合によっては、AメジャーやCメジャーを使うこともあります。

他のカンティーニャ系は歌によりますが、やはりEかAかCが多いです。

カラコレスは基本的にCメジャーキーですが、歌い手の音域によってGメジャーキーも使います。

そして、歌によっては平行調のミの旋法が入ってきます。

  • Eメジャー→G#スパニッシュ
  • Aメジャー→C#スパニッシュ
  • Cメジャー→Eスパニッシュ(ポルアリーバ)

という具合です。

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アレグリアスの踊りの様式

アレグリアスは踊り曲としても凄くメジャーですが、スタンダードなアレグリアスの踊りの様式は以下の通りです。

  1. レトラ
    通常、9コンパスか11コンパス。2つくらい入ることが多い。
  2. シレンシオ
    踊りのソレアくらいのテンポでマイナーキーに転調。通常、6コンパスか10コンパス。
  3. カスティジャノ
    シレンシオから一転して軽快なテンポに戻る歌。通常4コンパス+ジャマーダ。
  4. エスコビージャ
    踊りの足のパート。教室で最初に教えられるのは三連符で1拍目から入る定型フレーズのものが多い。
  5. ブレリア
    エスコビージャの途中からブレリアのコンパスに変化することが多く、抜けたらそのままブレリア・デ・カディスが歌われて締めに突入。

フラメンコの踊りでは、通常、セクションごとの境目にサパテアード→ジャマーダが入ってきますが、そういうのは省略してあります。

イントロ(サリーダ)やファルセータ部分も省略していますが、レトラが2つある場合は間奏にファルセータが来るパターンが多いです。

なお、これは教室で教えられるような基本的な展開の仕方ですが『こうしなければいけない』ということはなく、シレンシオやカスティジャノが無い場合もあるし、エスコビージャもいきなりブレリアのテンポから入ってもいいわけです。

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アレグリアスの歌のコード進行

アレグリアスの歌の基本的な形は2コードないし3コードですが、メジャーキーなので普通のコード理論を当てはめて代理コードや経過コードを使いやすいです。

歌によって様々な展開のしかたをしますが、ここでは、最もシンプルな形をご紹介します。

  1. 前フリ1コンパ(歌詞の2行目を歌う)
  2. 歌の本体4コンパスか6コンパス(1行目から入りなおす)
  3. エストリビージョ(コレティージョ)4コンパス

以上で合計9コンパスか11コンパスの歌が多いです。
以下に代表的なコード進行で例を書いておきます。
ソレアのコンパスでいう1拍目を頭に3拍子で記載、1段1コンパス、○はコードチェンジ無しの拍です。
キーはEメジャーキーで書きます。

前フリ
|E ○ ○|B7 ○ ○|○ ○ ○|E ○ ○|

歌本体
|E ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|B7(A) ○ ○|
|B7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|E ○ ○|
|E ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|B7(A) ○ ○|
|B7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|E ○ ○|
|E ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|B7(A) ○|(短い歌はこの段が無い)
|B7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|E ○ ○|(短い歌はこの段が無い)

エストリビージョ、サビ部分
|E ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|B7 ○ ○|
|B7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|E ○ ○|
|E ○ ○|(E7) ○ ○|○ ○ ○|B7(A) ○ ○|
|B7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|E ○ ○|

ディグリー(度数)表記版

前フリ
|Ⅰ ○ ○|Ⅴ7 ○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|

歌本体
|Ⅰ ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅴ7(Ⅳ) ○ ○|
|Ⅴ7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|
|Ⅰ ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅴ7(Ⅳ) ○ ○|
|Ⅴ7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|
|Ⅰ ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅴ7(Ⅳ) ○|(短い歌はこの段が無い)
|Ⅴ7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|(短い歌はこの段が無い)

エストリビージョ、サビ部分
|Ⅰ ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅴ7 ○ ○|
|Ⅴ7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|
|Ⅰ ○ ○|(Ⅰ7) ○ ○|○ ○ ○|Ⅴ7(Ⅳ) ○ ○|
|Ⅴ7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|

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アレグリアスの伴奏パターン

  1. コンパス単位でのマルカール
    E→B7→B7→E
    最も基本的なベースパターンで3拍目と10拍目でコードが変わる。
  2. コンパス単位でのマルカール
    E→E→E→B7
    B7→B7→B7→E
    1.のパターンが2コンパスに引き伸ばされたもの。とくに踊りの伴奏で2コンパス単位の構成になっている部分に使用される。10拍目でコードが変わる。
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アレグリアスのコードワーク

カンティーニャ系は長調がベースですがミの旋法の形式と比べると、コードワークは一般的な音楽に近いです。

伝統的スタイルだとⅠとⅤの2コード展開+たまにⅣというシンプルなものですが、代理コードやセカンダリードミナントなどは普通に使用可能です。

モデルノ系だともっとバリエーションを持たせる傾向が強いです。
一般的な理論が適用できるので、ミの旋法の形式に比べると、かなり自由に作れますが、以下のような処理が多用されます。

  • ドミナント系コードにオルタード系テンションを入れる
  • ♭5や♯5といった5度音の変化を使う
  • サブドミナントマイナーのコードを活用する
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シレンシオについて

踊りの中でグッとテンポが落ちてマイナーキー(じゃない場合もあり)になるギターのファルセータパートがあり、シレンシオと呼ばれます。

シレンシオは一定の基本形があって、それを踏襲して演奏されることがほとんどです。
一般的には下記のいずれかです。

  • マイナーキー6コンパス
  • マイナーキー6コンパス+メジャーキー4コンパスの計10コンパス

たまに違うサイズのものもありますが、打ち合わせ無しでやる場合は、ほぼこのどちらかです。

シレンシオのテンポは幅があって、70~120BPMくらいですが、ほぼソレアのテンポと一致します。

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シレンシオのコード進行

最も基本的な進行を書いておきます。
ソレアのコンパスでいう1拍目を頭に3拍子で記載、1段1コンパス、○はコードチェンジ無しの拍です。
キーはEマイナーキーで書きます。

マイナー6コンパス
|Em ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|B7 ○ ○|
|B7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Em ○ ○|
|Em ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|B7 ○ ○|
|B7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Em ○ ○|
|Em ○ ○|○ ○ ○|(E7) ○ ○|Am ○ ○|
|Am ○ ○|Em ○ ○|B7 ○ ○|Em ○ ○|

メジャー4コンパス
|E ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|B7 ○ ○|
|B7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|E ○ ○|
|E ○ ○|○ ○ ○|(E7) ○ ○|A ○ ○|
|A ○ ○|E ○ ○|B7 ○ ○|E ○ ○|

ディグリー(度数)表記版

マイナー6コンパス
|Ⅰm ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅴ7 ○ ○|
|Ⅴ7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅰm ○ ○|
|Ⅰm ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅴ7 ○ ○|
|Ⅴ7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅰm ○ ○|
|Ⅰm ○ ○|○ ○ ○|(Ⅰ7) ○ ○|Ⅳm ○ ○|
|Ⅳm ○ ○|Ⅰm ○ ○|Ⅴ7 ○ ○|Ⅰm ○ ○|

メジャー4コンパス
|Ⅰ ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅴ7 ○ ○|
|Ⅴ7 ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|
|Ⅰ ○ ○|○ ○ ○|(Ⅰ7) ○ ○|Ⅳ ○ ○|
|Ⅳ ○ ○|Ⅰ ○ ○|Ⅴ7 ○ ○|Ⅰ ○ ○|

マイナー6コンパス部分は、アレグリアスの歌本体部分の進行を同主調でゆっくり演奏したもの、メジャー4コンパス部分はエストリビージョの部分をゆっくり演奏したものです。

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アレグリアス以外のカンティーニャス系形式について

アレグリアスの形式名がつくものは伝統的なラインにこだわらずに、どんどん創作されていく傾向があります。

それに対して、アレグリアス以外のカンティーニャス形式は特定の型の歌を指していたりして、コード進行も3コードで似通っているし、あまりアレンジしてしまうと形式分けの意味がなくなってくるため、伝統的なラインで演奏されることが多いです。

ミラブラスとロメーラス

ミラブラスとロメーラスは時折踊りでも取り上げられます。

踊りに関しては、アレグリアスのレトラの部分が該当の歌になるだけ、という場合もありますが、アレグリアスほど決まった様式はありません。

歌の伴奏は原則、メジャー3コードで演奏されますが、コードの回り方が歌によって異なります。

歌い手によってもサイズが変わるので、歌詞の位置や音程を聴きながら判断します。

カラコレス

カラコレスはそのキャッチーなメロディーから日本でも踊りの教室用レパートリーとして人気があり、群舞用振り付けの定番曲です。

習慣的にCメジャーで演奏されますが、男性歌手の場合はGメジャーも使います。

カラコレスは一つの歌がかなり長く、サイズもイレギュラーなところがあるので、これも歌詞の位置と音程で判断します。

歌の途中にCメジャー平行調となるポルアリーバへの転調が入ったりします。

アレグリアス・デ・コルドバ

アレグリアスのバリエーションですが、マイナキーを主体に演奏されます。

フラメンコ音楽論 前回

ソレア・ポル・ブレリア(Solea Por Buleria)【フラメンコ音楽論10】
フラメンコ音楽論 第10回はソレア・ポル・ブレリアの解説。ソレアとブレリアの中間的な特徴をもつ形式です。リズムパターンやコードワークの解析を行っています。

フラメンコ音楽論 次回

ブレリア(Buleria)【フラメンコ音楽論12】
フラメンコ音楽論 第12回はブレリアです。ブレリアは12拍子系の中でも最も自由度が高く、理論化は至難ですがコンパス=リズムやコードワークの解析に挑戦しました。

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