シギリージャ系サイクル【フラメンコ音楽論43】

フラメンコ音楽論では、フラメンコのコンパスを直感的に把握する方法として『コンパス=サイクル理論』を解説していますが、これまでに『4サイクル』と『6サイクル』についてやりました。

4サイクルと6サイクルが身につけば、ほぼ全てのコンパスに対応可能なのですが、一つだけ例外があります。

それが、シギリージャ系のコンパスです。

シギリージャ系形式には、多くの古い歌のレパートリーがありますが、シギリージャ系でシビアなBPMキープが求められるのは主に踊り伴奏です。

シギリージャ系も、6サイクルでとれないことはないのですが、フレーズとのシンクロ感がイマイチな場合が多いので、自分はこれだけは別枠で考えています。

シギリージャ系コンパスの特徴

シギリージャ系のコンパスは2.2.3.3.2という変則的なものです。
詳しくはシギリージャ形式解説をご覧ください。

シギリージャ(Siguiriya)とその関連形式【フラメンコ音楽論18】
フラメンコ音楽論 第18回はフラメンコのリズム形式の中で最も古い歴史を持ち、また、最も難解と言われるシギリージャとその関連形式の解説です。

形式解説の中でも少し触れていますが、実際にシギリージャ系形式を演奏する上でポイントになりそうなことをもう少し詳しく解説しておきます。

シギリージャのフレーズの解決拍

シギリージャのフレージングの特徴として、フレーズの解決拍が変則5拍子で数えたときの4拍目に来る、ということが挙げられます。

●○●◯●◯◯●◯◯●○
1.2.3..4..5.

このカウントでいうと『4』のところですね。

ジャマーダなどでの締めくくりの拍は、変則5拍子でいう5拍目なので、フレーズ解決→締めくくり、と二段階になってるのがミソです。

最初の2.2.を出さないフレージング

最初だけ変則5拍子でいう1拍目、2拍目を音を出さずに、3拍目から入るフレージングもあります。

2.2.3.3.2の『最初の2.2.を出さない』ということです。

そのままコンパスを回し続けると3.3.2.2.2型みたいになりますが、最終的なフレーズの解決拍が『2回目の3の頭』になることで、シギリージャの感じが強くなります。

シギリージャ系コンパスに使うサイクルパターン

シギリージャ系のサイクルは12拍として、コンパスの持つアクセントを、そのままサイクルパターンとして使います。

●は足を踏む拍、◯は足は踏まずに頭の中で感じるだけの拍です。

●◯●◯●◯◯●◯◯●◯

これで1サイクルです。
これをシギリージャサイクルと呼ぶことにします。

シギリージャサイクルで難しいのは、2拍の長さと3拍の長さを正確にとれないとBPMが崩れやすいことです。

6サイクルの複合型でも同じことが言えますが、2拍の長さと3拍の長さを正確にするというのは、フラメンコを演奏する上ではかなり重要なポイントです。

BPM重視のとりかた

シギリージャ系でBPMのキープを重視する場合、全拍ベタ踏みでとります。

頭の中で2.2.3.3.2のアクセントを感じながら、足で全拍踏むことになります。

これなら常に2拍の長さと3拍の長さを正確にとることが出来ますが、共演者等にはアクセントの位置が伝えずらくなります。

シギリージャ系への6サイクル適用

上のほうでシギリージャ系を6サイクルでとる場合もあると言いましたが、6サイクルでとる場合は全拍ベタ踏みと同様にBPM重視のとりかたになります。

BPMキープを優先したいけれど、全拍ベタ踏みがしんどいテンポの場合に、強拍スタート2拍×3パターンの6サイクルを適用します。

2拍×3の6サイクル二回でシギリージャの1コンパスになりますが、並べて比較してみると下のようになります。

●◯●◯●◯/●◯●◯●◯(6サイクル×2)
●◯●◯●◯/◯●◯◯●◯(シギリージャのアクセント)

シギリージャで重要になる解決拍が、6サイクルでとると2サイクル目の2拍目という、とりずらい位置にきて、フレーズによってサイクルが分断される感じになります。

このとりかたは、速いテンポでもBPMを安定させやすいですが、フレージング的には少しとりにくくなるため慣れが必要です。

また、このサイクルのとりかたで即興をすると、どうしてもブレリアに寄っていってしまう傾向があります。

――以下にテンポごとの特性を解説していきますが、シギリージャ系はテンポが変わっても構造的にそんなに変化しないのが特徴です。

スローテンポのシギリージャ系

90~130BPMのテンポです。
シギリージャ系のコンパスは1コンパス=12拍でとった場合、100BPM程度でも凄くゆっくりなので、このテンポより遅くなることはほとんど無いです。

このテンポなら、全拍ベタ踏みのほうが安定します。

アクセントをハッキリさせたいなら、シギリージャサイクルを使います。

ミドルテンポのシギリージャ系

130~180BPMで、カンテソロや速めの踊りのレトラ、エスコビージャなどで良く出てくるシギリージャの中心的なテンポ帯です。

足でサイクルをとるならシギリージャサイクルが基本ですが、BPMをシビアにキープしたいときは全拍ベタ踏みを併用します。

ハイテンポのシギリージャ系

190~250BPMで、主に踊りのエスコビージャで出てくるテンポです。

基本はシギリージャサイクルですが、場合によって2拍×3の6サイクルでとるのもありです。

超ハイテンポのシギリージャサイクル

250BPM以上のテンポで、エスコビージャのスビーダ部分やマチョの部分がこのテンポになることがあります。

シギリージャサイクルが基本ですが、2拍×3の6サイクルもありです。

他の形式もマチョはテンポが上がるんですが、とくにシギリージャのマチョは、超ハイテンポの領域までテンポが上がる頻度が高いです。

他の音楽ジャンルでこのテンポで演奏することはほとんど無いと思うので、最初は頭と体がついてこないと思いますが、例えばギターなら150BPMで16分音符のカッティングが出来れば物理的には300BPMで8分音符の刻みができるはずなので、あとはコンパスサイクルを意識できればできるはずです。

――ここまでで4サイクル、6サイクル、シギリージャサイクルでのフラメンコのリズムのとりかたをやりましたが、これはフラメンコのリズムをマスターするための一つの提案として自分の考え方を言語化してみたものであって、『こうしなければならない』というものではありません。

そして、コンパスの構造を理解してコンパスから外れないように演奏できるようになったとして、そこがスタートラインと思います。

フラメンコのリズムのニュアンスは独特なので、そこから先が難しいんですが、次回からはフラメンコのリズムの特性を掘り下げてみます。

フラメンコ音楽論 前回

6サイクルコンパス【フラメンコ音楽論42】
今、フラメンコ音楽論では『コンパス=サイクル理論』を解説中ですが、今回はフラメンコを演奏する上で最も重要かつ、鬼門となりやすい6サイクルのとりかたです。

フラメンコ音楽論 次回

フラメンコのリズムのニュアンスとアンサンブル【フラメンコ音楽論44】
フラメンコ音楽論 第44回は、フラメンコのリズムが持つ独特のニュアンスや、フラメンコのリズムアンサンブルの方法について解説します。

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