一時廃止していたコメント欄を復活させました。このブログはリンクフリーです(2020年8月23日更新)

パルマのリズムパターン【フラメンコ音楽論45】

前回までで、フラメンコのコンパスを把握するための一つの方法として『コンパス=サイクル理論』そして『フラメンコのリズムのニュアンス』『リズムアンサンブルの方法』など、フラメンコのリズム面にフォーカスした内容をやってきました。

今回はフラメンコのリズムアンサンブルの中で鍵となるパルマ=手拍子のリズムパターンについて学習します。

フラメンコでは担当パートが何であれ、基本的なパルマのパターンを理解していないとリズムアンサンブルに支障をきたすことになるので、重要なポイントです。

二種類のパルマの叩き方

パルマの叩き方には、大雑把に言って下記の二つの傾向があります。

  1. コンパスの持つ抑揚を表現する叩きかた
  2. 演奏サポートのためのメトロノームのようなフラットな叩きかた

歌やギターのCDなどで聴かれるパターンは1.のほうに寄っています。
現場でのリズムアンサンブルのしやすさよりも、音楽作品として聴いたときの完成度を優先しているためです。
普通はレコーディングではBPMキープにはクリック音を使います。

ライブでは、2.のパターンも多用されます。
パルマは表のみ、または表裏分担で、明快に均等に叩いて、アクセントは足で踏んでコンパスサイクルを共有します。

これらはハッキリと分けられるものでもなく、中間的な叩き方もありますので、『パルマの叩き方には、大雑把に2つの方向性がある』ということだけ意識しておいてください。

パルマのパターンについて

パルマのパターンは、他の打楽器の演奏パターンと同じように、それこそ無限にあるんですが、ここでは一般的によく使われる基本パターンを『コンパス=サイクル理論』も使って解説していきます。

●はパルマ(強)
◯はパルマ(弱)
・は無音か足のみの拍

実際はパルマは複数人でやることが多いので、裏拍でオカズが入ってきたり、違うパターン同士を複合させたりしますが、ここではベースとなる表拍のみのリズムに限定します。

今回は形式ごとの解説はせずに、サイクルパターンの種別を基準にしてパルマの基本パターンの解説をしていきます。

4サイクル、6サイクル等の『コンパス=サイクル理論』の用語は本講座の第40回~第43回の『コンパス=サイクル理論』解説を参照してください。

コンパス=サイクル理論【フラメンコ音楽論40】
フラメンコ音楽論は今回から新展開。これから、フラメンコを演奏する上で最も難しい部分である『コンパス』を独自の『コンパス=サイクル理論』を用いて攻略していきます。
4サイクルコンパス【フラメンコ音楽論41】
フラメンコ音楽論 第41回です。前回『コンパス=サイクル理論』の概要を解説しましたが、今回はその中の『4サイクル』のリズムサイクルをやります。
6サイクルコンパス【フラメンコ音楽論42】
今、フラメンコ音楽論では『コンパス=サイクル理論』を解説中ですが、今回はフラメンコを演奏する上で最も重要かつ、鬼門となりやすい6サイクルのとりかたです。
シギリージャ系サイクル【フラメンコ音楽論43】
前回までで『コンパス=サイクル理論』のうち、4サイクルと6サイクルを解説しましたが、今回は別枠扱いにしたシギリージャ系のサイクルについて解説します。

セコとバホ(ソルダ)について

パルマの叩き方には『セコ』と『バホ』(ソルダ)の二種類があって、それぞれ音質が違います。

セコ
ピンと伸ばした手の平の上半分くらいを使って、もう片方の手の平の下半分あたりを打って、パーンという高い音を出すパルマ。

バホ(ソルダ)
手の平を少し丸めて空気が入るスペースを作り、もう片方の手と縦横に組み合わせるような形で打つパルマ。ボソボソと低い音が出る。

一般的にはセコのほうが強い音になりますが、では、アクセント拍だけをセコで打つのか?というと、普通はそういう細かい叩き分けはせずに(意図的にやる場合もある)、一定区間をセコならセコ、バホならバホで通して、曲展開に合わせてメリハリをつけるような使い分けをします。

セコとバホの使い分けは、盛り上げたいセクションをセコで、というのが無難な選択ですが、厳密な使い分けのルールがあるわけではなく、最終的には叩く人のセンス次第です。

パルマをやっていて、サイクルやコンパスのアクセントを出したかったら足を踏んで出し、強弱をつけたかったら、音量で調整するのが普通です。

なので、ここで表記してある◯(弱い音)と●(強い音)は、セコとバホの叩き分けということとは関係ありません。

●と◯の叩き分けについて

●と◯の叩き分けについてですが、以下のようになります。

  1. 足を使わずパルマの音量差で強弱表現する場合
  2. 手のほうは平坦に叩いて●の拍でパルマと同時に足を踏む場合

これらを用途によって使い分けますが、両方併用の場合もあります。

サイクルの頭を強調するパルマのパターン

フラメンコのリズム表現はサイクルの頭を抜くことも多いですが、アンサンブルの中でパルマがサイクルキーパーの役割を負う場面が多いため、パルマに関してはサイクルの頭拍を含めたアクセント拍を強く出すパターンも多用されます。

とくにシギリージャ系、3.3.2.2.2型などは、このパターンが多用されますが、それ以外の形式もテンポが遅くなるに従って、このパターンが増える傾向です。

頭を強調する4サイクル

4拍パターン
●◯◯◯

2拍パターン
●◯●◯

頭を強調する6サイクル

12拍子は6拍目・12拍目から、3拍子は1拍目から入る。

6拍パターン
●◯◯◯◯◯

3拍×2パターン
●◯◯●◯◯

2拍×3パターン
●◯●◯●◯

フレーズの締めくくりに使う6サイクル

2拍×3 バリエーション(12拍子用)
◯●●◯●◯

頭のアクセントが一拍後ろにずれて頭のアクセントが無くなるが、12拍子の12拍目・6拍目から入って、上でやった頭を強調する6サイクルと組み合わせて使われる。

2拍×3 バリエーション(3拍子用)
●◯◯●●○
3拍目のアクセントが一拍後ろにずれる

頭を強調する複合6サイクル(12拍)

シギリージャ系
●◯●◯●◯◯●◯◯●◯

シギリージャ系バリエーション
●◯●◯●◯◯●◯◯◯●
最後のアクセントが一つ後ろにずれて、次のコンパスの頭をプッシュするパターン

3.3.2.2.2系
●◯◯●◯◯●◯●◯●◯

サイクルの頭を抜くパルマのパターン

今度は、サイクルの頭を抜いて叩くパターンです。
ミドルテンポ(130BPM)以上のテンポ帯で多用されます。

・の所は足を踏むことが多いです。
パルマを打つ拍は全部弱拍の◯で書きましたが、強弱をつけることもあります。

頭抜き4サイクル

・◯◯◯

頭抜き6サイクル

12拍子は6拍目・12拍目から、3拍子は1拍目から入る

頭抜き6拍パターン
・◯◯◯◯◯

頭抜き3拍×2パターン
・◯◯・◯◯

バックビート強調型のパルマのパターン

音楽CDなどで聴かれるのは現在はこのパターンが主流で、フラメンコの代表的リズムパターンと言っていいと思います。

最初に分類したもののうち『1.コンパスの持つ抑揚を表現する叩きかた』に属します。

ミドルテンポ以上の速いBPMの場合(主にタンゴやルンバやブレリアなど)に使われることが多く、12拍子の場合は強拍スタート(12拍目からはじまる)になります。
サイクルの頭は足を踏むこともありますが、基本的にあまり強い音を出しません。

4サイクルと6サイクルは4拍目までが共通のパターンで、6サイクルは4サイクルの後ろに2拍、弱拍を付け足す感じになります。

バックビート強調6サイクルはブレリア専用という感じが強く、ファンダンゴなどの3拍子系には違うパターンを使うことが多いです。

バックビート強調4サイクル

◯●◯●

バックビート強調6サイクル

◯●◯●◯◯
12拍子の6拍目・12拍目から入る

バックビート強調パターンのポイントは、2拍目と4拍目のアクセントのうち、4拍目のほうに一番強いアクセントをつけることです。

一般的なコンパスの数え方で言うと、タンゴなら4拍目・8拍目を、ブレリアなら3拍目・9拍目を一番強く出します。

弱拍スタート6サイクルのパルマのパターン

12拍子では12拍目から入るパターンと1拍目から入るパターンがあるのはコンパス=サイクル理論の6サイクルをやった時に解説しましたが、今まで解説したパルマのパターンは、12拍子の場合12拍目から入る『強拍スタート』のものでした。

ここで、12拍子の1拍目から入る『弱拍スタート』のパターンにも触れておきます。

このパターンはミドルテンポ以下の12拍子、要するにソレア系のコンパスに適用されますが、12拍子の1拍目・7拍目から入ります。

弱拍スタート12拍子の場合は、パルマを叩く時、サイクルの頭=12拍子の1拍目で足を踏むことは少ないです。やる場合もありますが。

弱拍スタート3拍×2パターン
◯◯●◯◯●

弱拍スタート2拍×3パターン
◯●◯●◯●

弱拍スタート12拍パターン
◯◯●○○○/●●◯●○●(12拍子の1拍目から入る)

――今回は基本的なパルマのパターンを学習しましたが、実際にはパルマは複数人で叩くのが普通で、複数のパターンが複合したり、裏打ちなどのオカズが入ったりして、色々変化します。

そして、パルマが出すベースリズムの上で、ギター・踊り・カホン等はまた違ったリズムパターンで演奏されます。

フラメンコは、そういう異なったリズムパターンの重なりを楽しむジャンルとも言えますが、それこそ無限の組み合わせがあるので、言語化は不可能な領域かもしれません。

ですが、今回やったような基本パターンが分かっていると、一見複雑で理解しにくいリズムパターンも、パルマの出すベースパターンに集中することによって体に入りやすくなると思います。

フラメンコ音楽論 前回

フラメンコのリズムのニュアンスとアンサンブル【フラメンコ音楽論44】
フラメンコ音楽論 第44回は、フラメンコのリズムが持つ独特のニュアンスや、フラメンコのリズムアンサンブルの方法について解説します。

フラメンコ音楽論 次回

楽譜の活用法【フラメンコ音楽論46】
今回は楽譜の活用方法について考えます。フラメンコの音楽は独自のフォーマットなので、フラメンコ奏者と他ジャンルの楽器奏者が共演する場合、伝達手段が課題となります。

コメント