今回のファルセータ動画はブレリアPart9です。
前々回のブレリアPart8に続いて自作曲「Individual Flamenco」からの抜粋で、長いファルセータ(19コンパス!)を1つ演奏します。
ブレリア形式解説
元ネタの「Individual Flamenco」についてはIndividual Flamencoの解説ページと前々回のブレリアPart8の記事内でお話していますので、そちらを参照してください。
Individual Flamenco
ブレリアPart8
今回はポルタラントのブレリア
「Individual Flamenco」の記事中で詳しく解説していますが、この曲は転調が激しく、曲中3回ほど転調が入ります。
曲の冒頭はAマイナー/ポルアリーバで入って、次のセクションでポルタラント(F♯スパニッシュ)のキーに転調して今回のファルセータが登場。
このファルセータの最後はEメジャーキーに転調して終わりますが、原曲では、この後すぐにポルアリーバ(Eスパニッシュ調)に転調して「ブレリアPart8」で弾いているファルセータに繋げるという、ちょっとややこしい展開ですね。
F♯スパニッシュ調はタラント/タランタを始めとしたカンテ・レバンテに使われるキーで「ポルタラント」とも呼ばれます。
ポルタラントは基本コードに解放弦を絡める事でギターならではのテンション感を出せる調性で、他の形式(原則、ミの旋法系の形式なら何でも可能)でもカンテ・レバンテ的なドロっとした響きが欲しくて使われる事があります。
カンテ・レバンテやタラント形式については、以下の記事も参考にしてください。
カンテ・レバンテの解説
タラント形式解説
今回のファルセータ詳細
今回のファルセータは大まかに2つのセクションに分けられます。
1つ目のセクションは11コンパス半の長さで、最後(ラスゲアードで6拍目に抜けている所)はBm11のコードに解決するため、後半は平行調であるBマイナーキー寄りになっています。
その後、間髪入れずに入る2つ目のセクションは7コンパスのサイズで、4拍半アウフタクトして入るのがポイントですね。
最後はFM7→Eadd9となって、Eメジャーキーに転調して終わります。
2つのセクションを合わせると19コンパスの長いファルセータになるので、伴奏などで実用する時(伴奏でF♯調のブレリアを要求される機会はあまり無いと思いますが)は、2つに分割したほうが使い勝手は良いでしょう。
テクニック面のポイント
テクニック的には、このファルセータの主役はアルペジオで、それに音階や親指が絡んでいきます。
そして、アルペジオしながらのシンコペーションを多用していますが、この時に右手の指の順番が変わったりするので、基本テクニックが安定していないとリズムがグチャグチャになるやつです。
でも、こういう作りのファルセータって、なるべくアウフタクトやシンコペーションを使ってリズムを複雑化しないとフラメンコらしいフィーリングにならないですよね。とくにブレリアは。
ちなみに、シンコペーションさせる所は全部決めて弾いているわけではなく、ある程度成り行き的に処理しています。
速いテンポで即興的かつ正確にシンコペーション・アウフタクトを入れていく事に慣れるのは、フラメンコギターを練習する上で非常に重要なポイントです。
そういうフラメンコ的なリズム感を養う練習方法としては、色んなタイプのシンコペーションフレーズをコピーして、ソロコンパスやメトロノームに合わせて、ひたすら反復して体に入れていくしか無いのですが、感覚をおぼえてしまえば自然と指が動くようになります。
ファルセータの経年変化について
このファルセータは作ったのは2004年頃ですが「Individual Flamenco」の中でもお気に入りのもので、17年かけて少しずつブラッシュアップして今の形になりました。
2018年の録音の「Individual Flamenco」と今回のバージョンでも何か所か違う所があるので、聴き比べてもらえると嬉しいです。
自作ファルセータでも、他人が作ったものでも、その時その時の自分の感性や技巧に合わせてアレンジするのは、フラメンコギターの醍醐味の一つだと思います。
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