2か月半ぶりのファルセータ動画をアップいたします。
形式は今回もブレリアで、自作ファルセータ1つと、スペインでパコ・クルス(Paco Cruz)に教わったファルセータを1つ弾いています。
ブレリア形式解説
ブレリア3連発!
ここ最近、ブレリアのファルセータ動画が3回連続していますが、自分の手持ちファルセータ数の関係からそうなっています。
以前、形式ごとに手持ちファルセータ数を数えてみた事があるんですが、メジャーキーやマイナーキーのものを入れると全体の1/3くらいがブレリアのファルセータで占められていました。
次点はタンゴ、アレグリアス、ソレア・ポル・ブレリアあたりですが、ブレリアはそれらと比べても2倍以上の量があって、ぶっちぎりのトップです。
ブレリアはフラメンコの音楽的な特徴が最も良く出る形式であり、ブレリアをどれだけ自在に弾けるか?というのはフラメンコギタリストとしての力量のバロメーターですよね。
そういうわけで、ここにアップしてあるファルセータ動画もブレリアの比率がかなり高くなっています。
では、今回演奏している2つのファルセータを個別に解説しますが、今回は2つともノーマルなポルメディオ(Aスパニッシュ調)です。
1つ目のファルセータ【オリジナル】
1つ目のファルセータは2005年頃に自作したもので、自分がやっていたフラメンコポップグループ、Galeria RosadaのCD『Secrets of the world』に収録されている「Clear Blue」という曲のイントロで弾いているものです。
Galria Rosadaの活動
「Clear Blue」は実験的なボーカル曲として作りましたが、ポップなボーカルラインと、複雑なコンパスの両立ということを狙っていったもので、なんというかボーカリスト殺しの曲でした(笑)
ちなみに、このブログで「Clear Blue」のインストバージョンも公開していますので、聴き比べてみてください。
今回演奏しているファルセータは、曲の冒頭に流れる看板的なもので、歌詞を作った後に歌詞のイメージに合わせて作りました。
このファルセータは2拍×3で6拍とするフレージングを多用していて、5コンパス目・6コンパス目のアルペジオ以外は、ほぼ2拍×3のフレージングです。
ですので、コンパスカウントで言うところの2拍目・4拍目・8拍目・10拍目などがフレーズやコードの変わり目になる場合もあって、3拍子系のとり方だと演奏しずらいかも知れません。
リズム的に引っ掛かりができて面白くなるので、自分はこういう作り方が好きなんですが。
「2拍×3」などのブレリアのコンパスのとり方については、こちらの記事を参考にして下さい。
ファルセータ間のブリッジのコードについて
1つ目のファルセータが終わった後のブリッジ部分で、Gsus4(♯5)というコードが出てきますが、これは作曲の意図としてはE♭6(Cmでも良いですが)の転回形で、一瞬、4度上のDスパニッシュ調へ転調しています。
ちなみに、ポルメディオ(Aスパニッシュ)の時にE♭コードが出て来るのは、ビセンテ・アミーゴ(Vicente Amigo)がエル・ペレ(El Pele)の伴奏をやっていた頃から好んで使っていた転調で、現代フラメンコのスタンダードな展開です。
このポルメディオ中のE♭コードは以下の可能性が考えられます。
- 4度上に転調したDスパニッシュ調の♭ⅡM7
- 次のコードがDmだった場合、Dmコードを修飾するナポリコード(半音上のメジャー7thコード)
- A7の裏コードであるE♭7
これらは本質的には同じような働きかたをするので、どれで解釈しても良いと思いますが、Dスパニッシュ調への転調と考えれば、E♭以外のコードもカバー出来るし(例えばCmならDスパニッシュ調の♭Ⅶmの解釈が可能)、次のコードに何が来たとしても説明が付きやすいです。
2つ目のファルセータ【パコ・クルス】
2つ目のファルセータはスペイン留学時にパコ・クルスに教わったものです。
前回のブレリアPart10でもパコ・クルスのファルセータを弾いていますが、彼にはブレリアだけで30個以上のファルセータを教わっていて、大きな影響を受けました。
全部で9コンパス半とかなり長めのファルセータですが、頭から順を追って解説していきましょう。
まず、最初の入りが2拍先行のアウフタクトで10拍目から入っていて、コードもそこから変わっています。
5コンパス目からの1コンパス半は12拍ではなく、メディオコンパスでとっていますね。
7コンパス目(正確には、ここまで6コンパス半ですが、便宜上7コンパス目とします)でE♭コードが出て来て転調になっていますが、このE♭コードは前述の通り4度上のスパニッシュ調(Dスパニッシュ調)に転調する現代フラメンコの常套句です。
そして9コンパス目でオーギュメント(♯5)系の謎コードが出てきます。
ここのコードは、素直にとるとCaugですが、C7(♭13)かもしれないし、他のコードの転回形かも知れないし、他のスパニッシュ調(Eスパニッシュ調とか)に転調していて、それに属するフラメンコテンションコードかもしれません。
このあたりは、またそのうち「フラメンコ音楽論」でちゃんとまとめようと思いますが、自分の中でまだ完全には解明出来ていない部分の一つです。
ラストのレマーテは、9拍目の表で終わってからのゴルペ2発と、やや変則的ですがカッコいいですよね!
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