ブログとWebsiteを統合しました。このブログはリンクフリーです。(2019年9月26日更新)

ファンダンゴ・アバンドラオ【フラメンコ音楽論21】

フラメンコの3拍子形式としてファンダンゴ・デ・ウエルバとセビジャーナスに使用されているコンパスをやりましたが、ファンダンゴ系にはもうひとつ代表的なリズムパターンがあります。

今回取り上げる『アバンドラオ』とカテゴライズされるものです。

ファンダンゴ・アバンドラオの概要

ウエルバ系のファンダンゴがアンダルシア西側で発展したのに対して、アバンドラオ系のファンダンゴは、マラガ、ロンダ、コルドバ、グラナダなどのアンダルシア東部寄りの地域で発展してきました。

具体的な形式としてはベルディアーレスやロンデーニャなどです。

アバンドラオのコンパスで演奏されるファダンゴ曲種を総称して『ファンダンゴ・アバンドラオ』と呼びます。

また、12拍子系として解説しましたが、ハレオス、ロマンセなどの歌もこのコンパスで演奏されることがあります。

アバンドラオのリズムの特徴

ファンダンゴ・デ・ウエルバを遅回しでやったようなリズムですが、コンパスの頭を強く出すことが多いので、ファンダンゴ・デ・ウエルバやブレリア系より分かりやすいビートです。

ギターは勇壮に掻き鳴らすスタイルで演奏されます。
そのため、フラメンコの『情熱』というイメージにマッチするのか、日本でフラメンコというと、このリズムがイメージされる場合も多いです。

じゃんじゃか じゃんじゃか じゃんじゃん、ていう。

アバンドラオの拍のとりかた

普通に頭にアクセントがついた三拍子でとれます。
テンポは85~130BPMくらいです。

ウエルバ系より分かりやすい3拍子で、フレージングやコードの変わり目も三拍で区切れるものが多いです。

ただ、次に述べますがブレリアのコンパスとミックスされたりするので、それは頭に入れておいたほうがいいです。

ブレリアとの関係性

ファンダンゴ・アバンドラオはファンダンゴ・デ・ウエルバを半速近くまで遅くしたものですが、倍タイムのブレリアのリズムがミックスされたようなリズムで演奏されることがあります。

120BPMのアバンドラオなら240BPMのブレリアの語彙を入れていく感じです。

フラメンコでは、こうやってリズムを複雑化させていくんですが、カウントは混乱しそうです。

ソレアでも、ゆっくりテンポのサパテアード伴奏やファルセータに倍タイムのブレリアの語彙が入るし、ティエントやタラントだと倍タイムのタンゴの語彙になります。

対応表にするとこんな感じです。
アバンドラオにブレリアを当てる場合、主に6/2拍子のパターンが使われるのでそれで表記します。

アバンドラオ
① ○ 2 ○ 3 ○ ④ ○ 5 ○ 6 ○
ブレリア
⑫ 1 ② 3 ④ 5 ⑥ 7 ⑧ 9 ⑩ 11

表示具合によってズレてそうですが、アバンドラオ6拍に対してブレリア12拍を当てはめます。

ファンダンゴ・アバンドラオのコードワーク

ファンダンゴ・アバンドラオの代表的なマルカールパターンです。
1小節3拍の3拍子で記載、○はコードチェンジ無しの拍です。

通常表記版
|E ○ ○|F ○ ○|G G♭ F|E ○ ○|

ディグリー(度数)表記版
|Ⅰ ○ ○|♭Ⅱ ○ ○|♭Ⅲ Ⅱ ♭Ⅱ|Ⅰ ○ ○|

歌の締めくくりでもこのパターンが弾かれます。
ファンダンゴ・デ・ウエルバのマルカールをゆっくり演奏したものと考えられます。

ファンダンゴ・アバンドラオの歌のコード進行

歌のコード進行はファンダンゴ・デ・ウエルバでやったCメジャー基調の6コンパスのものが基本になりますが、歌の種類や歌いかたによって伸縮します。

基本的な進行をあげておきます。
進行自体はファンダンゴ・デ・ウエルバの基本パターンと同じものです。

(G7→)C
C→F(またはG7)
G7→C
C→G7
G7→C
C7→F→G/G♭/F→E

ディグリー(度数)表記版

(♭Ⅲ7→)♭Ⅵ
♭Ⅵ→♭Ⅱ(または♭Ⅲ7)
♭Ⅲ7→♭Ⅵ
♭Ⅵ→♭Ⅲ7
♭Ⅲ7→♭Ⅵ
♭Ⅵ7→♭Ⅱ→♭Ⅲ/Ⅱ/♭Ⅱ→Ⅰ

アバンドラオで演奏される主な形式

ファンダンゴ・アバンドラオの代表的な形式をあげていきます。

ベルディアーレス(Verdiales)

フラメンコでは主にマラゲーニャの後歌として歌われます。

本場のマラガではフラメンコ形式としてではなく、民謡としてのベルディアーレスが現在でも演奏されていて、バイオリン・太鼓・カスタネットが入ったりしてフォークミュージック色が強いものです。

主にポル・アリーバで演奏されます。

ロンデーニャ(Rondeña)

ロンデーニャはロンダのファンダンゴですが、以下の二種類の演奏形態があります。

  • 古典的なアバンドラオで演奏されるもの
    元々の形。踊りが入る場合はこちらです。主にポル・アリーバで演奏されます。
  • ラモン・モントージャがはじめたギターソロのもの
    自由リズムで変則調弦(6弦をD、3弦をF♯に下げる)が特徴。次回リブレのファンダンゴの解説でもう少し詳しくやります。

ハベーラスとハベゴーテス(Jaberas,Jabegotes)

マラガのファンダンゴ・アバンドラオです。
ハベーラスは豆売りの、ハベゴーテスは漁師の仕事歌が起源といいます。

バンドラス(Bandolas)

『山賊の歌』といわれる歌です。
マラガ山間部からコルドバあたりで歌われていたファンダンゴで、アバンドラオのコンパスで演奏されます。

ファンダンゴ・デ・ルセーナ(Fandango de Lucena)

コルドバのファンダンゴ・アバンドラオです。

ファンダンゴ・デ・グラナダ(Fandango de Granada)

グラナダのファンダンゴ・アバンドラオでカスタネットを使った踊りが入ります。
セビジャーナスに似た踊りです。

その他のファダンゴ・アバンドラオ

これ以外でもファンダンゴ系の歌はアバンドラオで演奏されることがあります。

ファンダンゴを3拍子コンパスで演奏する場合、原則的に

歌い回しの速いファンダンゴ系→ファンダンゴ・デ・ウエルバのコンパス

歌い回しがゆっくりのファンダンゴ系→アバンドラオのコンパス

という感じですが、ウエルバとアバンドラオの中間的なコンパスもあったりして曖昧な部分もあります。

――次回からはファンダンゴ系の発展形として
リブレ(自由リズム)形式へと入っていこうと思います!

フラメンコ音楽論 前回

セビジャーナス(Sevillanas)【フラメンコ音楽論20】
フラメンコ音楽論 第20回は、踊りの入門形式であるセビジャーナスです。フラメンコの踊りとしては入門用ですが、音楽的にはイレギュラーで難解な面もある形式です。

フラメンコ音楽論 次回

自由リズムのファンダンゴ(マラゲーニャ、グラナイーナなど)【フラメンコ音楽論22】
フラメンコ音楽論 第22回はリブレ(自由リズム)のファンダンゴです。これらはカンテソロの形式群ですが、今回はマラゲーニャ、グラナイーナを中心に紹介します。

コメント