リライト・改装作業完了しました!このブログはリンクフリーです。(2019年9月9日更新)
スポンサーリンク

シギリージャ(Siguiriya)とその関連形式【フラメンコ音楽論18】

今回は変拍子系形式解説のメインイベントというべきシギリージャと、その関連形式をご紹介いたします。

スポンサーリンク

シギリージャ形式概要

単数形 Siguiriya
複数形 Siguiriyas

シギリージャ系の歌はフラメンコ形式のなかでも最も古い系統です。

カンテ・ホンド(深い歌)とカテゴライズされるカンテの中心的レパートリーですが、リズムや節回しの難解さもあって、フラメンコを勉強する上で鍵になってくる形式です。

トナと無伴奏形式について

シギリージャ系の歌は『トナ』と言われる無伴奏の歌から派生したものです。

トナのグループにはデブラマルティネーテカルセレーラといったシギリージャ系コンパスの形式が含まれます。

これら無伴奏形式は現在も存続していて、カンテの原初の形を伝えています。

宗教歌のサエタも無伴奏シギリージャ系コンパスです。

トナの系統は原始的なものになるほど、リブレ~自由リズムに近くなる傾向です。

シギリージャ系を含むトナの歌は、元々ヒターノの日常で歌われていた仕事歌などが起源といわれていますが、いったい何をどうやったら、こういうリズム・節回しになったのか?謎が多いです。

ソレアとの関係

シギリージャとソレア、どちらも古い起源をもつフラメンコの基本形式ですが、起源はシギリージャ系のほうが古いようです。

両形式ともに原初の無伴奏形式『トナ』から発生している、という説が有力ですが、ソレアもシギリージャも元は同じ歌で、リズムのとりかたや節回しを変えていく過程で枝分かれした、ということでしょうか。

確かにソレアもシギリージャも、アクセントが5つで12拍で数えることができる、ということは共通しています。

このあたりは録音はおろか、文献もほとんど無いので不明な点が多いですが、そのへんがまたフラメンコの神秘性を高めているんでしょうね。

スポンサーリンク

シギリージャ系形式のキー

シギリージャ系の形式は形式ごとに演奏されるキーがだいたい決まっています。
以下にシギリージャ系形式の一覧をあげておきます。

  • シギリージャ ポル・メディオ
  • セラーナ ポル・アリーバ
  • リビアーナ ポル・メディオ
  • カバーレス(単数形 カバル) Aメジャーキー
  • マルティネーテ 無伴奏
  • カルセレーラス 無伴奏
  • トナ 無伴奏
  • デブラ 無伴奏
  • サエタ(起源は宗教歌) 無伴奏

ポル・メディオのシギリージャの場合、カポタストの位置は
女性 4カポ(実音C♯スパニッシュ)
男性 カポ無し(Aスパニッシュ)
このあたりが中心です。

リビアーナとセラーナについて

リビアーナとセラーナはポル・アリーバで演奏されますが、原則この2つの歌は組にして歌われます。
セラーナにはカーニャのようなラメントがあります。

スポンサーリンク

シギリージャのコンパス 2.2.3.3.2型

同じ変則5拍子系のグワヒーラが
3.3.2.2.2
なのに対して

シギリージャ系は
2.2.3.3.2
という形です。

慣れないと、つかみどころが無いリズムに感じますが、いくつかの捉え方があります。

3拍目と4拍目が長い変則5拍子

単純化して5拍でとるやりかたです。

① ○ ② ○ ③ ○ ○ ④ ○ ○ ⑤ ○

スペイン人はこの数えかたが多いです。

12拍子に変換したカウント

① 2 ③ 4 ⑤ 6 7 ⑧ 9 10 ⑪ 12

または12を頭にして
⑫ 1 ② 3 ④ 5 6 ⑦ 8 9 ⑩ 11

とりかたとしてはあると思いますが、これの拍数を言われても、あまりピンとこないですよね。

ソレア・ブレリアを基準にしたカウント

ソレア・ブレリアのカウントの頭拍をずらしたものです。

⑧ 9 ⑩ 11 ⑫ 1 2 ③ 4 5 ⑥ 7

12拍子を8拍目からはじめるカウントで、ソレア・ブレリアとアクセント位置のカウントが同じなので、理解しやすい面もあるかもしれませんが、実用される機会は少ないように思います。

実際の運用上は、シギリージャを数字のカウントでやることってあまり無いように思いますが、この中だと一番上の5拍子の数えかたがシンプルで使いやすいんではないでしょうか。

シギリージャ系のコンパスのバリエーション

最後のアクセントをひとつ後ろにずらしてパルマを叩くことがあります。

● ○ ● ○ ● ○ ○ ● ○ ○ ○ ●

これはソレアの6拍目のアクセントを7拍目にずらすのと同様の感覚ですが、重くなりがちな締めくくりの拍をスキップすることでコンパスの推進力を増す感じですね。

テンポが速くなるとこのリズムの比率が上がります。

シギリージャのテンポ

ここからは、シギリージャ系で最も演奏頻度が高いシギリージャ(単体形式) を想定して解説します。

シギリージャは踊りの場合、レトラのテンポに幅がありますが、100~160BPMくらいです。

マチョの部分は高速になることが多く、250BPM~300BPMくらいになることも。

歌のソロだと踊りのレトラよりテンポが速い場合が多いです。

それからカンテソロの場合、かなりテンポを揺らすことがあって、揺れ幅が大きいとリブレに近いような感じになります。

スポンサーリンク

シギリージャのフレージング

シギリージャのフレージングですが、5拍子で解説すると以下の特徴があります。

  • 基本は1から入って5で締めくくる。
  • コンパスの締めくくりは5拍目で、ジャマーダも普通5拍目で止まる。
  • フレーズは4に解決していくものが多い。
  • コードの変わり目も1拍目と4拍目が多い。
  • 1拍目、2拍目を休んで3拍目から入るフレージングもある。この場合、ブレリアのフレージングがそのまま流用できることもある。
スポンサーリンク

シギリージャのコードワーク

ファルセータやエスコビージャの伴奏などはコードを展開させたりもしますが、歌とマルカール部分はコードはほとんど動かしません。

基本、B♭とAの2コードで、それに慣用句的なベースラインがついたり、歌の最後のほうでFにいくことがあったり、その程度です。

逆にいろいろやってしまうと、シギリージャの厳格な感じを損ねてしまうので、あえてやらないのが通例です。

シギリージャでもソレポルのときに紹介したようなオンコードを多用しますが、重要なのはB♭6(onG)でしょうか。

シギリージャでは、とくにこのコードの重さを重視します。

具体的には3拍目にこのコードがきて、親指で強く弾き下ろすことが多いんですが、そのさいに親指が2弦まで来たら1弦は弾かずに1弦上で止める、という弾きかたをします。
2弦のD音を強調するということです。

細かいところですが、こういうのが大変重要だったりします。

シギリージャのマルカール

一般的なギターのマルカールの例ですが、アクセントごとにコードを書くとこうなります。

①B♭(onD)
②B♭9(onC)=C9
③B♭6(onG)
④A
⑤A

煩雑になるので、次のカンテのコード進行では、こういうオンコードは全てB♭として扱います。

逆に言うとコードネームでB♭と書いてあっても、上のようなオンコードで演奏するわけです。

同じポル・メディオのタンゴやソレポルも同様のコードワークをしますが、シギリージャは上に書いたように、通常マルカールのパターンがオンコードクリシェ込みになっているために、頻繁に登場します。

スポンサーリンク

シギリージャの歌

シギリージャの歌は4行の歌詞を引き延ばして歌います。

引き延ばしすぎて、スペイン語がわかったとしても何を言ってるかわからない、みたいなことになっていますが、大抵、嘆き節・恨み節です。
まあ、そういう形式です……

シギリージャの歌の構成

踊りの場合は大抵、歌2つで一組にして歌われ、間に中締めのジャマーダが入ります。

シギリージャの歌はバリエーションが多く、長さもいろいろだし、同じ歌でも歌い方で変わるので、かなりイレギュラーなものと思ってください。

伴奏側からの簡単な捉え方としては以下のように考えるとシンプルです。

  1. 歌の最後のほうまでは、ひたすらB♭→Aで待ち
  2. C→G7→CとかC7→Fの中オチが来る歌であれば
    もうすぐ締めくくりが来るから分かりやすい。
  3. 歌の最後(ジャ~ジャ~~とかが入ればわかりやすい)をとらえてジャマーダを入れて締めくくれればok。

標準的なシギリージャの歌のコード進行

よくやる感じの踊り歌は以下の通りです。
アクセント1つにつき1小節で記載、1段で1コンパスになります。
○はコードチェンジ無しの拍です。
キーはポル・メディオ=Aスパニッシュ調で書きます。

|B♭ ○|○ ○|○ ○ ○|A ○ ○|○ ○|

コンテスタシオン(無い場合もある)

|B♭ ○|○ ○|○ ○ ○|A ○ ○|○ ○|
|B♭ ○|○ ○|○ ○ ○|A ○ ○|○ ○|
|B♭ ○|○ ○|○ ○ ○|A ○ ○|○ ○|
|B♭ ○|○ ○|○ ○ ○|A ○ ○|○ ○|
|B♭ ○|○ ○|C ○ ○|○ ○ ○|(F) ○|(中締め。無い場合もある)
|B♭ ○|○ ○|○ ○ ○|A ○ ○|○ ○|
|A ○|○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|○ ○|(締めのジャマーダ)

※長さはいろいろありますが、この長さプラスマイナス1コンパスくらいが多い。踊りの場合は通常、一つの歌振り(レトラ)に対して、2つの歌を繋げて演奏する。

ディグリー(度数)表記版

|♭Ⅱ ○|○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|○ ○|

コンテスタシオン(無い場合もある)

|♭Ⅱ ○|○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|○ ○|
|♭Ⅱ ○|○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|○ ○|
|♭Ⅱ ○|○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|○ ○|
|♭Ⅱ ○|○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|○ ○|
|♭Ⅱ ○|○ ○|♭Ⅲ ○ ○|○ ○ ○|(♭Ⅵ) ○|(中締め。無い場合もある)
|♭Ⅱ ○|○ ○|○ ○ ○|Ⅰ ○ ○|○ ○|
|Ⅰ ○|○ ○|○ ○ ○|○ ○ ○|○ ○|(締めのジャマーダ)

※長さはいろいろありますが、この長さプラスマイナス1コンパスくらいが多い。踊りの場合は通常、一つの歌振り(レトラ)に対して、2つの歌を繋げて演奏する。

カンテソロの場合は歌い手が自由に歌を伸縮させるので、サイズはさらにイレギュラーになります。

シギリージャのマチョについて

シギリージャの踊りの最後につくマチョは、前述の通りテンポが激速になることが多いです。
マチョのコードの展開は以下のようになります。

  • Fコードから入って
    Dm→C→B♭→A(Ⅳm→♭Ⅲ→♭Ⅱ→Ⅰ)の下降進行にいくパターン
  • 最初からDm(Ⅳm)からの下降進行から入るパターン

この2つの展開がほとんどです。

――最初は難解に感じるシギリージャのコンパスですが、慣れると不思議と馴染むリズムです。

ブレリアと比べるとアクセントもフレーズの乗せかたも固定的なので、最初に受ける印象ほど難解なものではないと思います。

次回からファンダンゴ系を中心とした3拍子系の形式に入る予定です!

フラメンコ音楽論 前回

ペテネーラ(Petenera)【フラメンコ音楽論17】
フラメンコ音楽論 第17回は、前回から引き続き『3.3.2.2.2型コンパス』の形式ですが、今回はポル・アリーバで演奏されるペテネーラを紹介いたします。

フラメンコ音楽論 次回

3拍子系曲種の基本とファンダンゴ・デ・ウエルバ【フラメンコ音楽論19】
フラメンコ音楽論 第19回です。今回は3拍子系形式の概要とファンダンゴ・デ・ウエルバ形式の紹介ですが、この系統はポリリズムの要素もあるコンパスです。

コメント