ペテネーラ(Petenera)【フラメンコ音楽論17】

フラメンコ音楽論では、前回から変拍子系コンパスの形式の学習に入って、まず3.3.2.2.2型コンパスの概要と、その代表形式であるグアヒーラの解説をしました。

今回は3.3.2.2.2型のコンパスをもつ形式をもう一つご紹介します。

踊りの形式としてはややマイナーですが、とても美しくドラマチックな節回しをもつペテネーラです。

ペテネーラ形式概要

単数形:Petenera
複数形:
Peteneras
主な調性:
ポルアリーバ(Eスパニッシュ調)
テンポ:
90BPMから150BPM

ペテネーラは、ヒターノの間では「不幸を招く歌」として敬遠されている、いわくつきの歌です。

言い伝えによると、この曲を歌った後、不幸に見舞われるという事例が何度も重なったそうですが……。

ペテネーラの起源はラ・ペテネーラという女性歌手によって創作されたと言われていますが諸説あります。

ちなみにそのラ・ペテネーラも嫉妬に狂った彼氏に殺されてしまう、というなんともフラメンコチックな亡くなりかたをしたそうで、そういうエピソードやヒターノ社会で根強く残る忌避感が、この形式の神秘性を高めているところはあるんじゃないでしょうか。

とても良い歌なので、演奏や発展の機会が奪われているのはもったいないとは思いますが。

メロディー的にはヒターノ系ではなく民謡系に聴こえますが、録音に残っている初期のスタイルでは、ニーニャ・デ・ロス・ペイネス(La Niña de los Peines)の歌唱が有名です。

ペテネーラのキー

ペテネーラの演奏キーはポルアリーバ(Eスパニッシュ調)です。

ただし曲の部分部分でルートコードがAmやCに移り変わっているような感じです。

そのへんは民謡系12拍子のバンベーラなどと同様です。

カポの位置は歌によって結構音域が違うようで、女性歌手は4カポ(実音G♯スパニッシュ調)から6カポ(実音B♭スパニッシュ調)、男性歌手はカポ無し(Eスパニッシュ調)から2カポ(実音F♯スパニッシュ調)あたりが中心です。

ペテネーラのテンポ

ペテネーラは、グアヒーラよりゆっくり演奏するイメージですが、歌のみの場合かなり速いテンポの演奏もあり、概ね90BPMから150BPMくらいの範囲です。

カンテソロの場合、最後のリフレイン以外の部分は自由リズムにして歌うことが多いです。

ペテネーラのコードワーク

ペテネーラのギターのマルカールは、以下のような2コンパスサイクルの進行がベースとなります。

E7 E7 Am Am
G F E7 E7

踊りの伴奏ではソレアソレア・ポル・ブレリアと同様のパターンも使われますが、要所要所で上記の2コンパスパターンを入れることでペテネーラ形式であることが強調されます。

ペテネーラの歌

ペテネーラの歌の調性の基本はポルアリーバ(Eスパニッシュ調)ですが、途中、平行調のAマイナーキーやCメジャーキーに寄り道するような動きをします。

ペテネーラの歌には、概ね決まった様式があって4つのセクションに分けられます。

原則的に3コンパスひとかたまりで進行しますが、歌の伸ばし方によってメディオコンパス単位で伸縮します。

カンテソロの場合は最後のリフレイン以外は、自由リズムになることも多いです。

以下のような構成になります。

  1. 前フリ(1コンパス)
  2. Aメロ(3コンパス)
    メインメロディーの提示部だが、最後のリフレインよりサラッと歌われる。出だしは歌詞を入れずにスキャット(アーとかイーとか)で歌われることが多い
  3. Bメロ(3コンパス)
    Cメジャーキーから入る展開パートでカンテソロの場合、ファンダンゴのような感じの自由リズムになったりする
  4. リフレイン(3コンパス)
    ハッキリしたコンパスでメインメロディーを歌う。Aメロよりドラマチックに歌い上げる

ペテネーラの歌のコード進行

ペテネーラの歌伴奏は同じメロディーでもギタリストによってコード付けが違ったりしますが、ここではスタンダードと思われる進行を書きます。

コンパスの頭拍から入る3拍子で記載。コードネーム1つで3拍、1段で1コンパス。キーはポルアリーバ=Eスパニッシュ調です。

前フリ
F F E E

コンテスタシオン(無い場合もある)

Aメロ(メインメロディ提示)
Am E Am Am
Am D7 G7 G7
G F E E

Bメロ(リブレになることもある)
C G C C
Am G F E
G F E E

リフレイン(ハッキリしたコンパスで演奏)
Am E Am Am
Am D7 G G
G F E E

ディグリー(度数)表記版

前フリ
♭Ⅱ ♭Ⅱ Ⅰ Ⅰ

コンテスタシオン(無い場合もある)

Aメロ(メインメロディ提示)
Ⅳm Ⅰ Ⅳm Ⅳm
Ⅳm ♭Ⅶ7 ♭Ⅲ7 ♭Ⅲ7
♭Ⅲ ♭Ⅱ Ⅰ Ⅰ

Bメロ(リブレになることもある)
♭Ⅵ ♭Ⅲ ♭Ⅵ ♭Ⅵ
Ⅳm ♭Ⅲ ♭Ⅱ Ⅰ
♭Ⅲ ♭Ⅱ Ⅰ Ⅰ

リフレイン(ハッキリしたコンパスで演奏)
Ⅳm Ⅰ Ⅳm Ⅳm
Ⅳm ♭Ⅶ7 ♭Ⅲ ♭Ⅲ
♭Ⅲ ♭Ⅱ Ⅰ Ⅰ

別パターンの歌

ペテネーラの歌はいくつかのバリエーションがありますが、上の進行の他によくあるパターンを挙げてみます。

Aメロのバリエーションとしては、以下の2つがよく演奏されます。

  1. Am F E E(Ⅳm ♭Ⅱ Ⅰ Ⅰ)
    E D7 G G(Ⅰ ♭Ⅶ7 ♭Ⅲ ♭Ⅲ)
    G F E E(♭Ⅲ ♭Ⅱ Ⅰ Ⅰ)
  2. Am G C F(Ⅳm ♭Ⅲ ♭Ⅵ ♭Ⅱ)
    E E(Ⅰ Ⅰ)
    G F E E(♭Ⅲ ♭Ⅱ Ⅰ Ⅰ)

また、リフレインのバリエーションとして以下のようなものがあります。

Am F E E(Ⅳm ♭Ⅱ Ⅰ Ⅰ)
C G G C(♭Ⅵ ♭Ⅲ ♭Ⅲ ♭Ⅵ)
G F E E(♭Ⅲ ♭Ⅱ Ⅰ Ⅰ)

これらのバリエーションも、奏者によってコード付けやサイズが異なるので注意して下さい。

フラメンコ音楽論 前回

3.3.2.2.2型コンパスとグアヒーラ(Guajira)【フラメンコ音楽論16】
フラメンコ音楽論では、今回から変拍子=変則5拍子系の形式解説に入りますが、まずは3.3.2.2.2型コンパスの概要と代表形式であるグアヒーラの解説をします。

フラメンコ音楽論 次回

シギリージャ(Siguiriya)とその関連形式【フラメンコ音楽論18】
フラメンコ音楽論第18回は、フラメンコの形式の中で最も古い歴史を持ち、最も難解なコンパスを持つと言われるシギリージャ系形式の解説です。

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