ブログとWebsiteを統合しました。このブログはリンクフリーです。(2019年9月26日更新)

3拍子系曲種の基本とファンダンゴ・デ・ウエルバ【フラメンコ音楽論19】

今回からファンダンゴを中心とした3拍子系の曲種に入りますが、この系統も12拍子に負けず劣らず広く深いものがあります。

ファンダンゴ系形式の分類

ファンダンゴはもともとアンダルシア地方の民謡ですが、かなり初期の段階からフラメンコに採り入れられて歌われてきました。

ファンダンゴ系の形式は、もともとは三拍子のはっきりしたリズムでしたが、徐々にバリエーションが増えて、カンテの技巧を競う自由リズム形式としても発展していきます。

ファンダンゴ系の形式をコンパス面から大雑把に分類すると以下のようになります。

ウエルバ系

ファンダンゴ・デ・ウエルバに代表される軽いノリの3拍子です。

そして、ベースリズムは3拍子ですがフレーズは2拍で進行したりするのでポリリズムの様相になります。

踊りの初心者用形式の代表である『セビジャーナス』もこの系統のコンパスです。

アバンドラオ系

ベルディアーレスロンデーニャなどに代表されるリズムで、ファンダンゴ・デ・ウエルバ系より重厚な印象です。

フレーズは頭からきっちり3拍子で入ることが多いので、ファンダンゴ・デ・ウエルバ系より分かりやすいかもしれません。

このコンパスで演奏されるファンダンゴ全般をファンダンゴ・アバンドラオと呼びます。

リブレ系

ファンダンゴのメロディをリズムを崩して自由に歌うものです。

カフェ・カンタンテの時代を中心に発展してもので、歌い手個人によるバリエーションが豊富です。

フラメンコの自由リズム形式はファンダンゴだけというわけではなく、シギリージャ系や2拍子系を崩して歌うものもありますが、形式数ではファンダンゴ系が圧倒的に多いです。

これらのうち、今回はファンダンゴ・デ・ウエルバをとりあげます。

ファンダンゴ・デ・ウエルバ形式概要

単数形 Fandango de Huelva
複数形 Fandangos de Huelva

アンダルシアの西側に位置するウエルバ地方のファンダンゴで、軽快な三拍子が特徴です。

アンダルシア東側のファンダンゴ・アバンドラオとともに民謡としてのファンダンゴの原型を色濃く残していて、ファンダンゴ系を学ぶうえでは基本になる形式です。

現在でもウエルバではファンダンゴのコンクールやイベントが頻繁に開催されます。

ファンダンゴ・デ・ウエルバのキー

ファンダンゴ・デ・ウエルバは普通はポル・アリーバで演奏されます。

歌の本体部分はCメジャーキーが中心になることが多いですが、平行調のAマイナーや、そのさらに同主調のAメジャーで歌われることもあります。

そんなふうに途中は色んなキーに行くんですが、最後のオチはF→Eが来てミの旋法へ戻っていきます。

カポの位置はソレアよりやや低めです。
女性6カポ(実音B♭スパニッシュ)
男性3カポ(実音Gスパニッシュ)
くらいが中心です。

ファンダンゴ・デ・ウエルバのコンパス

ベースは3拍子で、テンポは速めの場合が多いですが結構幅があります。
概ね130~180BPMくらいです。

ファンダンゴ・デ・ウエルバのコンパスのカウントのしかた

コンパスの頭を1からカウントするのが普通ですが、踊りの場合、ブレリアの振りからの流用も多いため、ブレリアに当てはめてコンパスの頭を12または6としてカウントする場合もあります。

12拍で1コンパスですが、メディオコンパスもあります。

頭拍を1からカウントする場合
① 2 3 ④ 5 6 ⑦ 8 9 ⑩ ⑪ 12

頭拍を12としてカウントする場合
⑫ 1 2 ③ 4 5 ⑥ 7 8 ⑨ ⑩ 11

後ろから2拍目が締めくくりの拍です。
1カウントだと11拍目、12カウントだとブレリアと同じ10拍目です。

12カウントのほうがブレリアと互換性があるので、人によってはこのほうが分かりやすいかもしれません。

メディオコンパスでのとらえかた

実際の運用上、ファンダンゴやセビジャーナスは12拍でとらえるより6拍でとらえたほうが単純化できて楽です。

ファンダンゴ系の3拍子はブレリアほどリズムバリエーションがないため、以下の2つだけ意識できれば大丈夫です。
ここでは1から6のカウントで解説していきます。

通常コンパス
① 2 3 ④ 5 6

締めの入るコンパス
① 2 3 ④ ⑤ 6
5拍目が締めくくりです。

このメディオコンパスでのとりかたが一番シンプルで融通がきくので、以後このカウントで解説します。

ファンダンゴ・デ・ウエルバのフレージング

以上のようにコンパス自体はシンプルですが、フレージングが曲者だったりします。

ファンダンゴやセビジャーナスのフレージングは1拍目から入って5拍目に向かうものが基本ですが、2拍単位で進行するものが多いです。

コンパスは3拍×2で6拍
フレーズは2拍×3で6拍

コンパス ① 2 3 ④ 5 6
フレーズ ① 2 ③ 4 ⑤ 6

このようになっています。

コードもフレーズにあわせて3拍目で変わるパターンが多いです。
ちなみに普通の3拍子は小節の頭である4拍目でコードが変わります。

このポリリズムがファンダンゴ系コンパスのミソでしょう。
ブレリアでも似たようなとりかたがあるし、フラメンコ的リズムの基本的感覚なんだと思います。

2拍食って入るパターン

2拍で進行するフレージングということの関連になりますが、もうひとつ特徴的なのが『前のコンパスから2拍食って入るフレージング』です。

メディオの6拍カウントでいうと、前のコンパスの5から入るんですが、とくにギターのファルセータは昔からこれが多用されます。

慣用句ということで長年演奏するうちに慣れましたが、最初は『なんでここから?』みたいな違和感があったのをおぼえています。

3拍単位と2拍単位のフレージング混合

ファンダンゴ系の3拍子は2拍単位のフレージングと、普通の3拍単位のフレージングと両方使いますが、それらが混じったり、前のコンパスから2~3拍食って入ったりするので、慣れないと惑わされます。

ファンダンゴ・デ・ウエルバのマルカール

1小節3拍、1段で12拍=1コンパス、○はコードチェンジ無しの拍です。
ポル・アリーバ=Eスパニッシュで書きます。

|E ○ Am|○ ○ ○|G F E|○ ○ ○|
(|Ⅰ ○ Ⅳm|○ ○ ○|♭Ⅲ ♭Ⅱ Ⅰ|○ ○ ○|)

基本パターンはこの12拍サイクルのものです。
このパターンがすでに2拍単位フレージングを内包していて、6カウントでいう3拍目でコードチェンジするのがポイントです。

ファンダンゴ・デ・ウエルバの歌

ファンダンゴ・デ・ウエルバに関しては、ほぼサイズが決まっています。
ただし、6拍単位での伸び縮みもあり、踊りが入らない場合はかなり自由に伸縮させる傾向です。

以下、もっとも一般的なCメジャーベースの歌の進行を書いておきます。
1小節3拍、1段で12拍=1コンパス、○はコードチェンジ無しの拍です。
ポル・アリーバ=Eスパニッシュで書きます。

|C(G7) ○ ○|○ ○ ○|○ ○ C|○ ○ ○|
|C ○ ○|○ ○ ○|C7 ○ F|○ ○ ○|
|○ ○ ○|G7 ○ ○|○ ○ C|○ ○ ○|
|○ ○ ○|○ ○ ○|○ ○ G7|○ ○ ○|
|○ ○ ○|○ ○ ○|○ ○ C|○ ○ ○|
|C7 ○ F|○ ○ ○|G  F  E|○ ○ ○|

ディグリー表記版

|♭Ⅵ(♭Ⅲ7) ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ♭Ⅵ|○ ○ ○|
|♭Ⅵ ○ ○|○ ○ ○|♭Ⅵ7 ○ ♭Ⅱ|○ ○ ○|
|○ ○ ○|♭Ⅲ7 ○ ○|○ ○ ♭Ⅵ|○ ○ ○|
|○ ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ♭Ⅲ7|○ ○ ○|
|○ ○ ○|○ ○ ○|○ ○ ♭Ⅵ|○ ○ ○|
|♭Ⅵ7 ○ ♭Ⅱ|○ ○ ○|♭Ⅲ ♭Ⅱ Ⅰ|○ ○ ○|

基本はこの6コンパスです。
このコード進行は全てのファンダンゴ系の歌の基礎になるものです。
これをベースに上記の通り6拍単位で伸縮します。

――次回は歌としてはファンダンゴ系から外れますが、ファンダンゴ・デ・ウエルバと共通のコンパスをもつ関連形式として、踊りの入門曲の『セビジャーナス』を解説してみたいと思います!

フラメンコ音楽論 前回

シギリージャ(Siguiriya)とその関連形式【フラメンコ音楽論18】
フラメンコ音楽論 第18回はフラメンコのリズム形式の中で最も古い歴史を持ち、また、最も難解と言われるシギリージャとその関連形式の解説です。

フラメンコ音楽論 次回

セビジャーナス(Sevillanas)【フラメンコ音楽論20】
フラメンコ音楽論 第20回は、踊りの入門形式であるセビジャーナスです。フラメンコの踊りとしては入門用ですが、音楽的にはイレギュラーで難解な面もある形式です。

コメント