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フラメンコのリズム形式【フラメンコ音楽論07】

ここしばらくコード・スケールといった、音程に関わる話を掘り下げていましたが、今回からフラメンコの音楽を理解する上で最重要になる『リズム形式』に入りたいと思います。

コードやスケールなどのさらに細かい話も、今後はリズム形式ごとに解説していこうと思います。

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フラメンコにおける曲目、曲名などの扱い

第3回講座でフラメンコの音楽単位について触れていますが、フラメンコの曲目は原則的にリズム形式をあらわす『形式名』で示されます。

個別の歌や、踊りの振り付け、ギターのファルセータや基本パターン、全てこの『リズム形式』ごとに分類・管理されます。

ソレアならソレア、アレグリアスならアレグリアスの、それぞれの持ちネタを組み合わせて、フラメンコのアンサンブルは作られていきます。

歌やギターのCDには固有の『曲名』がついていたりしますが、一般ジャンルの扱いとは様相がちがいます。

これは、フラメンコの音楽単位が歌い手やギタリストのリズム形式別に持っている持ちネタに由来しているためで、一般の音楽のように曲単位でまるごと作曲、という場合はむしろ少数派で、小間切れの持ちネタを繋ぎ合わせて作られる場合が多く、個別の『曲』としての意味合いは一般の音楽よりかなり薄いのです。

フラメンコ音楽の創作やオリジナリティに関する考え方

オリジナリティということに関しても、もともと作者不詳の歌詞や定型フレーズも多い世界です。

フラメンコでは伝統的に『誰かが作ったものを共有して引き継いでいく』というような考えが強いので、そのへんも一般音楽ジャンルと発想が異なります。

もちろん、自分で一曲全部もしくはテーマとかサビを作詞・作曲して固有の曲名をつける一般的な発想もあります。

とくに商業的に自分のCDを売りたいような歌やギターのアーティストはそういう方向でやっている人が多いです。

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『リズム形式』の起源

フラメンコのリズム形式ですが、これもまたカンテから発生しています。

『ある特定のリズムと節回しの古い歌』それがフラメンコのリズム形式の原型です。

初期のカンテは主にソレア系とシギリージャ系のものでした。
この二つの系統がフラメンコを学ぶ上でもっとも難解だと思うんですが、ギターや踊りが付くずっと前から、本当に最初から、あの変態的リズムでやってたわけですね。

こうした発生学的なことからもわかるように、フラメンコリズムの個性の根元は12拍子系のコンパスです。

シギリージャやグアヒーラなどの変拍子系も、基本的には12拍子のバリエーションです。

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フラメンコのリズム形式の大分類

まずは『リズム形式』を大雑把に分類してみます。

12拍子系形式(ソレアからの派生)

12拍子系の形式はフラメンコのリズム形式の中でも、最もガラパゴス的に発展しまくっている形式群です。

『フラメンコの母』と言われるソレアから派生したものが中心になりますが、フラメンコリズムのガラパゴス的発展の頂点であるブレリアはソレアの原型をとどめないほどバリエーションが発展しています。

この系統のリズムに慣れることが、フラメンコを勉強するうえで重要な第一歩になります。

ソレア系・カンティーニャ系・ブレリア系がこれにあたります。

変拍子系形式(12拍子系の一種)

ソレアと並ぶ古い形式であるシギリージャの系統(2.2.3.3.2型)と、グヮヒーラ、ペテネーラなどのブレリアに近い系統(3.3.2.2.2型)があります。

基本的には12拍子の拍のとりかたをずらしたものですが、ソレア系とは違ったフレーズの乗せかたをします。

3拍子系形式

ファンダンゴをはじめたとしたアンダルシア民謡も古くからフラメンコに取り入れられ、カンテ・アンダルスと呼ばれていました。

多くのアンダルシア民謡は三拍子です。
なので、その系統は3拍子もしくは3拍子の感覚のリブレ(自由リズム)となります。

アンダルシア民謡とそれが元になったフラメンコの3拍子形式もかなり変態的なリズムで、3/4拍子と3/2拍子のポリリズムです。

ベースは三拍子なんですが、メロディーやコードが2拍単位で動いたり2拍食って入ったりします。

3拍子の民謡系形式には、ファンダンゴ・デ・ウエルバ、セビジャーナスなどがあります。

セビジャーナスは、振りが固定で教えやすい、覚えやすい、踊りの基本的動作が盛り込まれている、という理由で踊りの初心者向けの形式とされていますが、リズムは結構難解だと思うんですよね……

ファンダンゴ系のリブレ形式

リブレ(自由リズム)形式は、主にファンダンゴ系の歌の地方や歌手個人によるバリエーションで、カフェ・カンタンテの時代を中心にカンテの技巧を競ううちにリズムを崩して歌うようになったものです。

ファンダンゴ・リブレの地方バリエーションとして、マラゲーニャ(マラガ)、グラナイーナ(グラナダ)などがあります。

またアルメリア地方の鉱山労働者を中心に発展した『カンテ・レバンテ』と呼ばれる形式群があり、独特の複雑な節回しと不協和音的な響きを多用します。

タランタ(タラントの元になった歌)、ミネーラ、カルタヘネーラなどです。

リブレは基本的にカンテのための形式群ですが、踊りの中でも演出の一つとして部分的に自由リズムのセクションがよく使われ、そういう部分を『リブレで』と表現したりします。
ギターソロでもよく弾かれます。

2拍子系形式

2拍子系は世界中でスタンダードなリズム感覚で、フラメンコにも存在します。

カンテ・ヒターノとしてアンダルシアのヒターノのコミュニティで発展してきタンゴ系統と、スペイン北部地方が起源の系統(ファルーカやガロディン、タラントもタランタにこのリズムがついたもの)の2つが主なものです。

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フラメンコリズム形式の一覧

ここで一旦まとめます。
上で解説した通り、フラメンコの曲種をリズム的な特徴で大雑把に分けると以下の5種類になります。

  • 12拍子系
  • 変拍子系(12拍子系の一種)
  • 3拍子系
  • リブレ系(3拍子系から発展)
  • 2拍子系

ここから調性やテンポ、または歌単体を指す細かい分類によってさらに細かく枝分かれします。

現在、一般的に演奏される形式を書き出してみます。

フラメンコ形式は単数形で呼ばれる場合と複数形で呼ばれる場合があり、単数形はその『曲』そのものを、複数形は『形式名』を指していると思われますが、実用上はどちらでもいいと思います。

ここでは原則単数形で書きます。
ただし複数形の呼び名ほうが一般的な形式は複数形で書いています。

大まかな特徴がわかるように、一般的によく演奏される調性とテンポを書いておきます。

演奏頻度が高い重要形式は末尾に★マークをつけてみましたが、ここではギターと踊り伴奏主体に判断しています。歌伴奏だと★のついてない形式でも重要なものもあります。

ソレア系の12拍子形式

  • ソレア
    ポル・アリーバ、テンポ遅 ★
  • ソレア・ポル・ブレリア
    ポル・メディオ、テンポ中 ★
  • ブレリア
    ポル・メディオ、テンポ速 ★

カンティーニャ系の12拍子形式

  • アレグリアス
    Eメジャーキー、テンポ中 ★
  • カンティーニャ
    メジャーキー、テンポ中
  • ロメーラ
    メジャーキー、テンポ中
  • ミラブラス
    メジャーキー、テンポ中
  • カラコレス
    Cメジャーキー、テンポ中 ★

その他の12拍子形式

  • カーニャ
    ポル・アリーバ、テンポ遅~中 ★
  • ポロ
    ポル・アリーバ、テンポ遅~中、カーニャに類似
  • バンベーラ(バンバ)
    ポル・アリーバ/Aマイナーキー、テンポ中 ★
  • ロマンセ
    ポル・アリーバ、テンポ中~速(3拍子の場合もあり)
  • ハレオス
    ポル・メディオ等、テンポ速(3拍子の場合もあり)
  • アルボレア
    ポル・アリーバ、テンポ中(三拍子の場合もあり)

3.3.2.2.2型の変拍子系形式

  • グアヒーラ
    Aメジャーキー、テンポ遅~中(逆輸入系)★
  • ペテネーラ
    ポル・アリーバ/Aマイナーキー、テンポ遅~中 ★

2.2.3.3.2型の変拍子系形式

  • シギリージャ
    ポル・メディオ ★
  • セラーナ
    ポル・アリーバ
  • リビアーナ
    ポル・メディオ
  • カバーレス(単数形 カバル)
    Aメジャーキー
  • マルティネーテ
    無伴奏 ★
  • カルセレーラス
    無伴奏
  • トナ
    無伴奏
  • デブラ
    無伴奏

ウエルバ系3拍子形式

  • セビジャーナス
    テンポ中~速 ★
  • ファンダンゴ・デ・ウエルバ
    ポル・アリーバ、テンポ中~速 ★

アバンドラオ系3拍子形式

  • ベルディアーレス
    ポル・アリーバ、テンポ中
  • ロンデーニャ
    ポル・アリーバ、テンポ中 ★
  • ハベーラス
    ポル・アリーバ、テンポ中
  • ハベゴーテス
    ポル・アリーバ、テンポ中
  • バンドラス
    ポル・アリーバ、テンポ中
  • ファンダンゴ・デ・ルセーナ
    ポル・アリーバ、テンポ中
  • ファンダンゴ・デ・グラナダ
    ポル・アリーバ、テンポ中

ファンダンゴ系のリブレ形式

  • ファンダンゴ・ナトゥラル
    ポル・アリーバ ★
  • マラゲーニャ
    ポル・アリーバ ★
  • グラナイーナ
    Bスパニッシュ/Eマイナーキー ★
  • ロンデーニャ(ギターソロ)
    Dスパニッシュ(ラモンモントージャが始めたスタイルで変則調弦)
  • タランタ
    F♯スパニッシュ ★
  • ミネーラ
    F♯スパニッシュ
  • カルタヘネーラ
    F♯スパニッシュ
  • ムルシアーナ
    F♯スパニッシュ

タンゴ系2拍子形式

  • タンゴ
    ポル・メディオ、テンポ中~速 ★
  • タンゴ・デ・マラガ
    Aマイナーキー、テンポ遅 ★
  • ティエント
    ポル・メディオ、テンポ遅 ★
  • タンギージョ
    ポル・メディオ/Aメジャーキー、テンポ速(3連符で演奏されて6/8拍子的になることもある)★

北部起源系の2拍子形式

  • ガロティン
    Gメジャーキー、テンポ遅 ★
  • ファルーカ
    Aマイナーキー、テンポ遅 ★
  • タラント
    F#スパニッシュ、テンポ遅(ファンダンゴ系のタランタを二拍子化したもの) ★

その他の2拍子系形式

  • ルンバ
    テンポ速 ★
  • コロンビアーナ
    Aメジャーキー、テンポ中~速(逆輸入系)
  • ミロンガ
    マイナーキー/メジャーキー(逆輸入系。同主調転調が入る)
  • サンブラ
    アラブ音楽風。一時期流行して形式として定着
  • サパテアード
    メジャーキー、テンポ速 タンギージョに類似したリズム。完全に6/8拍子な場合も多い。
  • マリアーナ
    民謡がもとになっているがティエントに類似した感覚で演奏される。

宗教歌・クリスマスソング系

これはオマケですがフラメンコ形式の中に宗教歌(カトリック)が題材になったものがあるので、まとめておきます。

  • サエタ
    無伴奏(シギリージャ系のリズムがベース)
  • カンパニジェーロス
    マイナーキー(クリスマスソング、3拍子)
  • ビジャンシーコ
    マイナーキー(クリスマスソング、2拍子)

この他にも、マイナー形式は多数ありますが、プロのアーティストでも全部は知らなかったりします。

マイナー形式を発掘してレパートリーに加えるアーティストも多く、有名なアーティストに取り上げられた(または創作された)形式が注目を集めて定着する、という現象もよくあります。

ソロンゴ』(演奏頻度高いです)のように、特定の歌を指していて、リズムはタンゴやソレポルを自由にあてはめて演奏される形式もあります。

そういうマイナー形式や歌単体を指すものを全部あげて行くと物凄い数になりそうですが、リズムや発生の歴史で明確に分類・系統付けできるものは、上記一覧が一般的な範囲と思います。

フラメンコ音楽論 前回

コード機能と代理コード【フラメンコ音楽論06】
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フラメンコ音楽論 次回

フラメンコギターで特徴的なコードボイシング【フラメンコ音楽論08】
フラメンコ音楽論 第8回です。今回から個別形式解説に入る予定でしたが、予定変更して、フラメンコで使う特殊なコード(和音)をまとめてやっておきます。

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